「日悪」白石和彌監督、主演・綾野剛の“おっさん化”役作りを告白
2016年6月4日 17:00
[映画.com ニュース] 綾野剛主演作「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督と音楽を手がけた安川午朗が6月4日、東京・アップルストア銀座で行われたイベント「Meet The Filmmaker」に出席。2014年の映画賞を総なめにした前作「凶悪」でもタッグを組んだ2人が、「犯罪映画の作り方」をテーマにトークを繰り広げた。
北海道出身の白石監督が、2002年に北海道警察で発覚した“稲葉事件”を題材に映画化。まじめ一徹の刑事・諸星が、正義を貫くためにやらせ逮捕、拳銃購入、覚せい剤密輸など悪事に手を染めていく姿を描いた。
白石監督は諸星の26年間を演じた綾野の役作りに言及し、「おっさんの時期を演じる際には、『加齢臭がほしい』と言っていました。撮影前日、にんにくをずっと食べて、朝歯を磨かないようにしたらしい」と説明。安川が「ある種の“汚し”だよね」と合いの手を入れると、白石監督は「映画を見ると、そこが生きていると感じるでしょう。『歯垢がほしい』とずっと言っていましたよ。すごいですよね、思いつかないですから」と明かし客席をうならせた。
タブーとも言える部分に果敢に切り込んだ物語については、「おそらく、俳優もこういう映画に飢えている」と語る。「悪いことをやるのは絶対的に楽しい。ピエール瀧さんも『凶悪』の時、『この芝居超楽しい』と語っていて、綾野くんも同じことを言っていました。逆に言えば、テレビや映画がどれだけ当たり障りない表現で終わらせているか。クリエイターは皆、振り切ったことをしたいんです」と意欲をたぎらせ、「師匠(若松孝二監督)がよく言っていたことですが、『観客にナイフを突きつける映画』をつくるらないとな、と思っています」と矜持をのぞかせた。
さらに、先月末まで刑務所に入っていたという観客から質問が寄せられた。「刑務所で“まとも”になりたいと思っている人が、変な情報を取り込み染まっている現実がある。善悪両面描いたこういう作品こそ、所内教育として放送するべきでは」。これを受け白石監督は「世の中全体が、インモラルなものにフタをして終了になっている。必要なものは見せるべきだし、不道徳を見て道徳を学んでいくものだと思う」と同調し、「今作が所内教育として適しているかは、作った自分としても非常に疑問ですが(笑)、見せないことで教育が成就しているというのは間違った考え方だと思う。(善悪)両方知ってどう判断するかを教えるのが教育だし、子どもに対してもそう思います」と見解を述べた。
また安川は、白石監督にモデルとなった稲葉圭昭氏の写真を見せてもらったことが、大きな転機になったと告白。「本当に、稲葉さんが青春を謳歌しているんです。悪いことと理解していながらのめり込んでいく人間の姿を、記念写真のように撮っていた。白石くんが『この作品は犯罪者の青春ムービーだ』とキーワードをくれて、そこから音楽を作り始めたんです」と話していた。
「日本で一番悪い奴ら」(R15+指定)は、ピエール瀧、中村獅童、YOUNG DAIS、植野行雄らが共演。6月25日から全国で公開される。
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