エミリー・ブラント、「ボーダーライン」で演じた役どころは「羊たちの沈黙」クラリスを連想
2016年4月8日 17:00
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[映画.com ニュース] 世界で最も危険な地域のひとつと言われるメキシコとアメリカの国境付近を舞台に、過酷な麻薬戦争の実態をえぐり出した「ボーダーライン」。死と隣合わせの世界で、紅一点のヒロイン、FBI捜査官のケイトに扮したのが「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(2009)や「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(14)など、幅広い役柄で知られるエミリー・ブラントだ。ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリンの2大演技派に囲まれ、一歩もひけを取らない演技を見せたブラントが、本作の経験を語った。(取材・文/佐藤久理子)
麻薬、バイオレンスといった側面から、荒っぽいアクション映画と見られがちだが、本作の特異性は女性のFBI捜査官ケイト・メイサーの視点から物語を描いたところにある。かたくなな信念を持って悪と立ち向かうさまは、「羊たちの沈黙」(91)のヒロイン、クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)をほうふつさせるという声もあるほど。ブラントは語る。「私も初めて脚本を読んだとき、クラリスのことを連想したわ。シチュエーションはまったく異なるから参考にしたわけではないけれど、比較されるのは光栄ね。ケイトはこの物語のなかでモラルを象徴する存在なの。彼女はとても有能で、理想にあふれ、法のもとで正義が行われることを信じている。でも彼女がスカウトされた特殊チームでは、そんな考え方は通用せずにショックを受ける。私が脚本を読んで心を動かされたのは、善悪が曖昧な世界のなかで彼女の理想が打ち砕かれ、徐々にパワーを失っていくこと。常に仕事に人生を捧げてきた彼女にとって、それはとても辛いことよ」。
離婚経験者で子どももいないケイトにとって、上司から持ちかけられた特殊チームへのスカウトは勲章のように映る。だがふたを開けてみれば、作戦の全ぼうを知らされることはなく、誰を本当に信用していいのかわからないまま危険と向き合うはめになる。ケイトの心理状態を表現するにあたって、ブラントは実在の女性捜査官たちにインタビューを行ったという。「私は彼女たちの生活ぶりや家庭環境、過酷な仕事が心理状態にどんな影響を与えているのかを知りたかった。彼女たちはタフだけど、同時に孤独で悲しみを抱えているように見えた。それはこの役に人間性をもたらす上でとても役に立ったわ」。
本作に深みを与える登場人物たちの心理描写のなかでも、特に興味深いのが、デル・トロ扮する謎めいたコロンビア人のコンサルタント、アレハンドロとケイトの関係だ。両者は立場を異にしながらも、どこかでひかれ合う存在だとブラントは分析する。「ケイトとアレハンドロの関係はとても微妙だわ。彼女は彼のことを信用できない一方で、その孤独な有様に自分と共通点を見いだしてひかれていく。アレハンドロもケイトの中に、自分が失ったものを見いだし、愛おしく感じている。でも結局、2人が生きる世界はあまりにも違いすぎるの」。
危険な地域を避けつつ、メキシコ国内で行われた撮影だが、最もハードなのは気候だったそうだ。「7、8月のロケだったから熱くて大変だったの。でもジョシュとベニチオと私はいつもわいわい盛り上がっていたから、ドゥニ(・ビルヌーブ監督)に『まるで幼稚園児のようだ』って言われたわ(笑)。ジョシュのことは以前からよく知っているけれど、とても面倒見がいい人で、私が他の俳優との格闘シーンでひどい青あざを作ったときも、『大丈夫か?』ってすごく気を遣ってくれたのよ。こんなにタフなテーマで撮影もそれなりに大変だったけれど、すごく恵まれた経験だったわ」と、充実した笑顔をのぞかせた。
「ボーダーライン」は、第88回アカデミー賞で撮影賞・作曲賞・音響編集賞の3部門にノミネートされ、続編製作も決定している。4月9日から全国公開。
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