塚本晋也監督、故市川崑監督の「野火」演出に敬服「勉強になりました」
2016年1月30日 15:45

[映画.com ニュース] 故市川崑監督の生誕100年特別企画「市川崑映画祭 光と影の仕草」で、大岡昇平氏の小説を原作にした「野火(1959)」が上映され1月29日、昨年同作を再映画化した塚本晋也監督が、東京・角川シネマ新宿でトークイベントを行った。
塚本監督は、自らがメガホンをとった「野火」と市川監督の「野火(1959)」を比較し、「意外だったのは、自分の『野火』は原作通りのつもりで、市川崑監督のほうが脚色をしている。作り手の意思や主人公の葛藤を映画的に置き換えていて、脚色しているのに(市川監督の方が)原作の精神に近い。映画ってそういう風に作るんだと、いい年こいて勉強になりました」と、巨匠の卓越した演出に敬服した。
さらに、市川監督の「野火(1959)」が戦後約20年で上映されたことについて、「(戦争が)生々しく記憶としてある方もいる。暴力の表現は必要以上に見たくないというのもあるかもしれない」と神妙な面持ち。「(今は)実際に兵隊さんとして戦争に行っていた人がお客さんとして見ることはほとんどないので、戦争をイメージできないと思う。白黒の時よりはあざとく、恐ろしく見せないと伝わらない」と解説した。
また、高校生の頃に読んだという原作については、「完全に語り部の田村一等兵と自分が一体化して、戦場体験をしているような感じになった」「文字を通してフィリピンの原野も全部出てきた。主観の描写も、切実な打ち明け話のようにすごくリアルに迫ってきて、戦争というのはつくづく嫌だなと思った」と語った。
終始緊張の面持ちで話した塚本監督は、市川監督から多大な影響を受けたと明かし、「大好きで大尊敬しているので、今日はビビりながら、言葉に粗相があったらどうしようと緊張して来ました」と最敬礼。高校生の頃には、友人と「犬神家の一族(1976)」の話題で盛り上がったといい、「逆さまの足がポツンとあるのが嬉しかったんですよね」「怖かったです。ひとりじゃ見られないですよ」と青春を彩った市川作品に思いを馳せていた。
「市川崑映画祭 光と影の仕草」は、「野火(1959)」のほか、ヒット作「ビルマの竪琴(1985)」や、総監督を務めた記録映画「東京オリンピック」、金田一耕助シリーズ「犬神家の一族(1976)」などがラインアップされている。角川シネマ新宿では、2月11日まで開催。
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