「フランス組曲」監督、特別映像で信念語る!アウシュビッツで死去した原作者の遺志を継承
2015年12月15日 17:00
[映画.com ニュース] アウシュビッツで命を落としたユダヤ人女性作家の未完の小説を、「マリリン 7日間の恋」(11)のミシェル・ウィリアムズ主演で映画化した「フランス組曲」の特別映像が公開された。ソウル・ディブ監督ら関係者が本作にかける思いを語っている。
1940年、ドイツ占領下にあるフランスの田舎町。厳格な義母と共に戦地に赴いた夫の帰りを待つリュシル(ウィリアムズ)のもとに、ドイツ軍のブルーノ中尉(マティアス・スーナールツ)が滞在することに。最初はブルーノを避けていたリュシルだったが、音楽への愛をきっかけに打ち解け、許されない恋と知りながらも仲を深めていく。
原作小説は、小説家のイレーヌ・ネミロフスキーがアウシュビッツに送られる前に愛娘に託し、約60年のときを経て出版されたというドラマチックな来歴を持つ。ディブ監督は「この本は単なる小説ではありません。ファシズムに対する芸術の勝利を象徴しています。事実に即してリアルタイムに書かれた原作が、60年間埋もれていたタイムカプセルに思えました」と感慨深げに語る。
ディブ監督は、原作の中で忘れられない場面の1つに「避難する人々が空襲にあうシーン」を挙げる。「なんとかあの残酷さや恐怖感を出したい。市民の目で見た戦争の物語を表現したかった」と考え、パリから避難してきた人々を爆撃機が容赦なく襲い、列車を攻撃するさまをリアリスティックに描写。「誰かの作品をベースに映画を製作する場合は、常にある種の責任が伴う。まして原作者は、アウシュビッツで命を落としました。だからこそ一層、原作の精神を伝える責任があると感じました」と言葉を強める。
義母を演じたクリスティン・スコット・トーマスも「パリから脱出する人々を描いた序盤の場面は秀逸よ。ストレスや恐怖の中ではいい顔ばかりしていられないの」と語る。劇中では爆撃に巻き込まれた義母が周囲にかまわず車で現場を離れようとする様子なども描かれ、戦争の悲惨さをまざまざと伝えると同時に、戦時下で浮き彫りになる人間の本性をも鋭くとらえている。
さらに、映像には原作者の孫も登場。「占領の時期が特につらかったと祖母が言っていました。敵が急に身近な存在になったからでしょう。ドイツ兵の名を知り、言葉を交わし、共に生活をするのです。敵がどんな人間かも知らずに撃ち合うのとはわけが違います」と神妙な面持ちで語っている。
「フランス組曲」は、「マレフィセント」(14)のサム・ライリー、DCコミックスの悪役が勢ぞろいする「スーサイド・スクワッド」の公開が控えるマーゴット・ロビーらが脇を固める。2016年1月8日から全国公開。
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