奥田庸介監督「クズとブスとゲス」、東京フィルメックスコンペで上映
2015年11月18日 08:00

[映画.com ニュース] 自主制作映画「青春墓場」シリーズで注目され、「東京プレイボーイクラブ」(2011)で商業映画デビューした奥田庸介監督の最新作「クズとブスとゲス」が、クラウドファンディングのプラットフォーム「MotionGallery」によって資金調達を達成し、11月21日から開催される「第16回東京フィルメックス」のコンペティション部門で上映される。
同作は、女を騙しては強請りを働く卑劣な売人と、ヤクザ、夜の女など、日陰で生きる人間の運命が交錯する群像劇。奥田監督も出演し、ひりつくほどに痛く人間らしい“新世代のジャパニーズ・バイオレンス”として完成させた。奥田監督、「MotionGallery」の大高健志代表、「東京フィルメックス」のプログラムディレクターを務める市山尚三氏に話を聞いた。

クラウドファウンディングで資金調達を行おうと考えた経緯について、奥田監督は「『東京プレイボーイクラブ』という映画を作ったのですが、次につながらなくて映画を撮れない状況が続き、『もう終わりかな……』と思って仕方ないからアウトローになろうと思い、夜の世界に飛び込んだけど、恐くて戻ってきたりして。映画の依頼がなかったわけじゃないですけど、アイドルを起用した映画だったりして、それじゃ俺の中の映画への情熱がたぎらないなと断っていました。俺、7割くらいの情熱じゃ映画撮れないんですよ。それで、世間からも忘れ去られてグダグダ生活していたら、兄に『もうすぐ30歳なのに何やってんだ!』と言われ、『俺は映画が撮りたい!』と。脚本は書き続けていたので、クラウドファウンディングで資金調達を始めることになったのです」と説明する。
今回のプロジェクトを聞いた時、大高代表は「企画を聞いてすごく楽しそうだなと。他のプロジェクトだと、監督かプロデューサー、もしくはその2名が段取りをして進めるという事が多いのですが、『クズとブスとゲス』については、最初から3、4人のチームで動いていて熱量を感じた。クラウドファウンディングがスタートしてからも、監督やスタッフさん、まわりの方がSNSで熱心に告知していたり、プロジェクトの進捗を動画で紹介したりと、企画も多くやられていました」と振り返る。

100万円目標を大きく上回る資金調達を達成し、「一生懸命働いて稼いだお金を映画に使う、という意味の重さを感じる事になって。高校の時の美術の先生以外のお金を出した30人ほどの方のために、死ぬ気で映画を作ってやろうって奮い立ちました」と奥田監督。市山氏は、上映を決めた理由を「制作の背景やクラウドファウンディングで資金を集めた事などは知らなかったのですが、これまでの作品よりもはるかに作家性が出ていて、これはぜひもう一度東京フィルメックスで上映したいと思いました」と明かし、「こうやって資金を集めて映画を完成させるのは、インディペンデントで活動している監督には励みになるんじゃないでしょうか」と捉えている。
くすぶっていた思いを最新作にぶつけた奥田監督は「技術とかじゃなくて、ヘタクソなりに本当に撮りたいものを作りたい。毎回ゼロになって、前までの知識や経験をぶっ壊そうってやっている。映画を撮っているけど、映画からもはみ出したい。今回は本当にやりたい事、ただの比喩だけではなく死ぬ気で、血を流して作りました。」と熱く吐露。市山氏も「最終的に選ぶ際に、人がひきつけられるのは、技術的に上手いとかあまり関係ない」と同映画祭のポリシーにも触れた。
「第16回東京フィルメックス」は11月29日まで東京の有楽町朝日ホールほかにて開催。
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