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原恵一監督、日常描写へのこだわり明かす「日本人としてのプライドを意識して描いている」

2015年10月26日 07:10

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ティーチインで熱く語った原恵一監督
ティーチインで熱く語った原恵一監督

[映画.com ニュース] 第28回東京国際映画祭のJapan Now部門で10月25日、江戸時代の女性浮世絵師・お栄の生きざまを描いたアニメ映画「百日紅 Miss HOKUSAI」が上映され、原恵一監督が東京・新宿ピカデリーでのティーチインに出席した。

江戸風俗研究家で漫画家の故杉浦日向子氏の漫画「百日紅(さるすべり)」を原作に、「映画 クレヨンしんちゃん」シリーズ、「河童のクゥと夏休み」の原監督が映画化。葛飾北斎の娘で、史実では葛飾応為という名で活躍した浮世絵師・お栄が、仲間たちとともに自由闊達に生きる姿を江戸の美しい四季を交えて描いた。

今作に限らず、これまでもキャラクターたちの日常を活写してきた原監督。「平面上に描かれているキャラクターに命はないですが、彼らが『(現実の人でも)こういう行動とるよね』というちょっとした仕草をすると、そこに突然命みたいなものが生まれると思っています」と矜持をのぞかせる。そして、「そういうものを作ることが好きだし、見ている人に共感してもらうことが好きなんです。大きい部分も大事ですが、小さな部分を描くということも大切」といい、「日本人としてのプライドを意識して描いているところです。ほかの国の人たちはここまでやらないだろうと」と強いこだわりを明かした。

また、20代後半で杉浦さんの作品に出合ったという原監督は、「いつかは映像化したいと思いながらアニメーションの仕事をしていた」そうで、「その間も杉浦さんの作品の影響は、色濃く出ています」と告白。「単にノスタルジーだけではないところが、杉浦さんの優れたところ」とその魅力を語り、「江戸時代に愛情を持って詳しくて、ほかの誰もが描けなかった江戸を描いた人なのに、『江戸時代に生きたいとは思わない。今が好きだ』とずっと言い続けた人なんです。そういうところは同感です」と最敬礼だった。

さらに江戸時代の価値観に言及し、「“粋”というかっこいい生き方があって、その対極に“野暮”があります。杉浦さんは粋な作品を描いた」と説明する。「登場人物はほとんど涙を見せないんです。『百日紅』ではそれは守ろうと思っていました」と振り返り、「杉浦さんは悲劇を描きながらも、心では悲しく感じていますが、安易な涙という形で表現することを潔しとしなかった。そういうところは見習おうと作っていました」と熱弁した。

フランス、イギリス、ベルギーなど欧州6カ国で配給され、各国で高い評価を得た今作。フランスでは現在も上映中で、原監督が「最初に上映館数を聞いた時は30数館だったんですが、どんどん増えていって、一番多いときは120館ほどで公開されていました」と話すと、会場を祝福の拍手が包み込んでいた。第28回東京国際映画祭は、10月31日まで開催。

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