ホウ・シャオシェン監督、台湾映画界の未来を見据えて作った初の武侠時代劇「黒衣の刺客」を語る
2015年9月11日 15:50

[映画.com ニュース] 台湾の巨匠ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督8年ぶりの新作で、第68回カンヌ映画祭コンぺティション部門監督賞を受賞した「黒衣の刺客」が、9月12日から公開される。唐の時代を舞台に、運命に翻弄された女刺客の強靭な生き方を静謐に描写し、ロケーション、美術、装飾など全編がホウ監督の徹底した美意識に貫かれた武侠時代劇だ。日本から妻夫木聡と忽那汐里が参加したことも注目されている。キャスティングや5年の歳月をかけた撮影の模様、初の武侠劇を手がけた理由をホウ監督が語った。
「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」以来8年ぶりの新作は、学生時代から愛読し、映画化を夢見てきた唐代の伝奇小説が基になっている。また、今作が中国と合作ということも時代劇を選んだきっかけとなった。「今は中国資本がとても大きくなりました。私は台湾在住ですが、中国の物語でも歴史ものだったら、どこに住んでいるのかは関係ありませんし、共通の話題だと思ったのです。映画祭に8年かかわり、現在の台湾の映画界や台湾の若い映画監督の状況を理解しています。私は台湾の監督として、中国の武侠もので市場が開けるのであれば、それはひとつの道だと、後に続く人たちが考えてくれればよいと思ったのです。そういう意味で、無事完成しただけでほっとしました」
少女時代に道姑(女性の道士)に預けられた隠娘(スー・チー)は成長し、完全な暗殺者に育て上げられていた。隠娘の標的は、かつて彼女の許嫁でもあった暴君の田委安(チャン・チェン)。暗殺の任務中に窮地に追い込まれる隠娘だったが、難破した遣唐使船の日本青年(妻夫木)に助けられる。
「ミレニアム・マンボ」「百年恋歌」そして今作と、3作続けて主演に起用したスー・チーを「気が強いだけでなく、何時間でも立っていることができる、非常にエネルギーの強い女優」と評する。アクションシーンでは練習と撮影を忍耐強く繰り返したそう。スローモーションなどは用いず、大げさな動きのないキレのある動きを披露しているが、殺陣に付きものの鮮血は一切見られない。「血は1滴も出ません。みんなが使っているから、あまり面白みがないと感じたんです」

妻夫木演じる、遣唐使船でやってきた日本人の鏡磨きの青年役は、ホウ監督オリジナルのアイデアだ。「ヒロインが鏡磨きの青年のところに嫁に行くという設定は唐の小説通りです。私が考えたのは、遣唐使の時代ですから、前年に鋳物師のお父さんが舟に乗れず、転覆した舟に乗って助けられた青年という設定を考えました」
日本人俳優の中から妻夫木を選んだ理由は「彼しか考えられなかった」ときっぱり。「彼は非常に人に好かれる人だと思うのです。陰と陽だと陽の人。ヒロインが陰の人のタイプなので、対照的な存在として他の人は考えませんでした。作った明るさがある人はいますが、彼は、燦爛(さんらん)として、輝くような地からの明るさを感じます。スタッフのみんなが妻夫木さんのファンになりました」
「鏡磨きの青年は、船が転覆して日本に帰れない。そういう場合は海路を避けて、新羅(朝鮮半島)をまわります。『珈琲時光』の時に浅野忠信さんと仕事をしましたが、彼もとてもいい役者でした。でも、彼の事を隠娘が新羅まで送っていくイメージが沸かなかったのです。浅野さんは海を自力で泳いで帰れそうな感じがしますよね(笑)。まったく違う話になりそうです。隠娘は最初から最後まで全く笑わない設定にしました。ただ、最後に妻夫木さんが『隠娘(インニャン)』と声をかけた時にだけはにかむのです」とヒロインの心をくすぐるような妻夫木の魅力を、男らしいイメージの浅野忠信と対比させて説明する。
次回作以降の企画については「唐の時代をもっと撮ってみたいけれど、アクションものかどうかはわかりません。アクションである必要もないと思うのです。また、現代が舞台の作品もいいですね」と語る。カンヌ映画祭の常連監督として知られるが、その立場に責任を感じるかと問うと「映画を一生撮り続けるだけです。映画祭や賞に対してのプレッシャーというものはありません」と巨匠の貫禄を見せた。
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