バフマン・ゴバディ監督、亡命後トルコで撮影の「サイの季節」と今後の展望を語る
2015年7月10日 14:30
[映画.com ニュース] 「ペルシャ猫を誰も知らない」撮影後にイランから亡命したバフマン・ゴバディ監督が、実在のクルド人詩人をモデルに描き、イタリアの人気女優モニカ・ベルッチを起用した新作「サイの季節」が7月11日から公開される。来日したゴバディ監督が、移住先のトルコで撮影した本作と、今後の映画製作について語った。
イスラム革命のさなか、ある男の企みで投獄された詩人サヘル。妻ミナは夫の帰りを待ち続けるが、夫が死亡したという話を信じ込む。30年後に釈放された詩人サヘルは、ミナの行方を突き止めるが、未だにサヘルを監獄に送った男の影がちらついていた。混沌の時代に、悲劇に巻き込まれたサヘルの心情を、イマジネーションあふれる詩的な映像で描き出す。
「主演俳優ベヘローズ・ボスギーと一緒に映画を作る企画があり、いくつかあったアイデアのひとつでした。25年間投獄されていたという詩人の人生にひかれたのです。ベヘローズがとても乗り気になってくれたので、彼のために映画をつくろうと思いました。ただ、今語るには古い話かもしれないと考え、新しい映像表現を追求しました」
ベルッチ起用については「イランの女優も考えましたが、ヌードシーンもあるので、イラン人女優には依頼できませんでした。知っている女優の中で、一番イラン的な顔立ちをしていたのがモニカ・ベルッチでした。撮影に入る10日前にパリで依頼して、すぐに出演を決めてくれました」
イラン政府に無許可で撮影を敢行した前作「ペルシャ猫を誰も知らない」で、母国を去ることを余儀なくされた。今作ではイラン革命の悲劇を扱ったが、表現の上で気をつけた点などあるか問うと、「検閲のためではなく、芸術的な映画ですので、直接的に政治問題に触れたくありませんでした。詩人は政治が嫌いなものですし、主役のベヘローズ・ボスギーも政治のことには触れたくなかったのです。ですから、今回の映画の中で3ショットくらいしか革命は見せていません。単に人物のバックグラウンドを説明するためのものです」と語る。
悲劇的なドラマの中に、幻想的な映像が満ちあふれ、人間ではない生き物の姿が思わぬ形で突如現れ、見るものを幻惑する。「実際に詩人の残した詩の中に、馬やサイが出てきます。詩人が刑務所に入っていたとき、飛び込んできたカエルと過ごしていたという話があったのですが、カエルが降ってくる作品は既にあるので、私が亀に変更しました」
前作発表時のインタビューでは、いつかイランに戻って映画をつくりたいと話したが、中東の情勢がますます悪化する今、どのような考えを持っているのだろうか。「私が生まれてからかつて平和だったことがないので、今の状況はそれほど驚くべきことではありません。母国を出て7年くらいになりますが、それまで頭の中にあったものを国に置いてきたので、私自身が変化したのかもしれない」と話す。
そして、今後の展望をこう語る。「今、自分が見知らぬ土地に住み、同じような境遇の人たちの気持ちが良くわかるのです。自分の経験からそういった人々の人生が書けそうです。今、状況がどうであれ、私自身かつて作っていたような映画は作れなくなっています。これから違うスタイルで、違う物語をつむいでいきます。ニューヨークで作品を撮る企画があるので、近く、ニューヨークに住む予定です」
「サイの季節」は7月11日からシネマート新宿ほか全国で順次公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
芸能生活50年で“初”体験!
【無料】映画の面白さが何倍にもなる特別番組…貴重な瞬間を見逃すな!(提供:BS10 スターチャンネル)
ショウタイムセブン
【阿部寛がヤバすぎる】異常な主人公 VS イカれた爆弾テロ犯…衝撃のラスト6分、狂気の向こう側へ
提供:アスミック・エース
この新作は観るべきか、否か?
【独自調査を実施、結果は…】新「アベンジャーズ」と関係? 期待高まる“6つの大事件”が判明
提供:ディズニー
セプテンバー5
【“史上最悪”の事件を、全世界に生放送】こんな映像、観ていいのか?ショッキングな実話
提供:東和ピクチャーズ
次に観るべき“珠玉の衝撃作”
【余命わずかの親友から奇妙なお願い】「私が死ぬとき隣の部屋にいて」――魂に効く“最高傑作”更新
提供:ワーナー・ブラザース映画
激しく、心を揺さぶる超良作
【涙腺が危ない】切なすぎる物語…さらに脳がバグる映像美×極限の臨場感にド肝を抜かれる!
提供:ディズニー