カンヌ映画祭コンペ選出の米映画2本に明暗 パルムドール最右翼は「キャロル」か!?
2015年5月20日 18:30

[映画.com ニュース]5月13日から開催中のカンヌ国際映画祭も中盤を過ぎ、ナンニ・モレッティ、ガス・バン・サント、トッド・ヘインズらの期待作が披露された。モレッティの「My Mother」は、病に倒れた母を看病する女性監督の物語。主人公は女性ながらモレッティ自身の体験も反映された、彼らしい作品。ジョン・タトゥーロがイタリア語のあまり話せない俳優に扮し、コミック・リリーフとして登場するのがご愛嬌だ。かつてパルムドールを受賞した監督の「息子の部屋」のような、静かに迫る悲しさではないものの、見どころのある作品となった。
アメリカ映画として明暗を分ける形になったのが、ガス・バン・サントの「ザ・シー・オブ・ツリーズ(原題)」と、トッド・ヘインズの「キャロル(原題)」だ。ガス・バン・サントは今回珍しく、コンペ作品のなかでもっとも悪い評価を被ってしまった。妻を失った主人公(マシュー・マコノヒー)が死に場所を求めて富士山の樹海を訪れ、瀕死の男性(渡辺謙)に出会う。ふたりの男の彷徨は監督の前作「Gerry ジェリー」をほうふつさせるものの、実験的な大胆さがないのが、逆にファンにとっては物足りない結果となったのかもしれない。とはいえ、大方の悪評の原因である「感傷的」「甘ったるい」という印象はまったくない。一度死を決意したものが、樹海のようなスピリチュアルな場で特別な経験をする過程をみつめた、抑制の効いた美しい作品である。
一方、ヘインズの新作は、現在のところコンペティション部門でもっとも評価が高い。パトリシア・ハイスミスの原作をもとに、50年代のレズビアンの女性(ケイト・ブランシェット)と、彼女にやみくもに惹かれていく若き女性(ルーニー・マーラ)の姿を描く。女優陣の非の打ちどころのない演技、サンディ・パウエルの特徴的な衣装や凝った映像が、完成度の高いエモーショナルな作品を生み出した。今後、映画祭の終盤に向けて好敵手が現れるかどうか、楽しみに待ちたい。(佐藤久理子)
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