河瀬直美監督「あん」カンヌ映画祭・ある視点部門オープニング作品に決定
2015年4月25日 07:00
[映画.com ニュース] 河瀬直美監督の最新作「あん」が、5月13日に開幕する第68回カンヌ映画祭ある視点部門オープニング作品に決定した。昨年コンペティション部門に出品された「2つ目の窓」に続き2年連続、日本人としては史上最多の7本目の正式出品となる。
河瀬監督は、「今回の2年連続カンヌの公式招待を、しかも、オープニングという特別枠でいただけたことに誇りを感じます」とコメントを発表。ドリアン助川氏の原作小説を読んだ時に「この時代に生まれるべくして生まれ、人に伝わり、歴史に名を遺すのだ」と感じたことを明かし、「そんな思いを映画にのせて、世界の人々に見ていただけることに、今、喜びを隠せません。素晴らしいスタッフとともに、こういった作品の監督であれた幸せをかみしめています」と喜びを語った。
出演者たちも吉報を喜んでおり、主演を務めた女優の樹木希林は「日本人でこういう監督が出てくることがたくましくて頼もしい。多くの人に見てもらいたい作品です」、永瀬正敏は「河瀬監督や樹木さん、すでに天国にいらっしゃる元ハンセン病患者さん方やたくさんの皆さんの思いが海を渡る……本当にうれしいです」と話している。原作者のドリアン氏も、「私はこの物語を書く際、起点となる話をして下さった元ハンセン病患者の御夫婦とともに、映画『あん』の船出を客席から見守りたい」という。
さらに、カンヌ映画祭の名誉会長ジル・ジャコブ氏も本作を絶賛。「日常の営みの細部に触れ、3世代を扱い描いていること」や「映画を通して多くの人が知らないある田舎町の特有の風習や習慣に魅了されること」を挙げ、「本作は、非常に心に触れる謙虚さがあり、また物語の語りとしてはパーフェクトの高みへと洗練されていました」と評する。「この作品に集った才能、特に河瀬監督のそれは素晴らしく、世界に伝わるユニバーサルな作品であり、ほぼ完ぺきな作品」と惜しみない賛辞を送った。
河瀬監督とカンヌ映画祭の縁は深く、1997年の監督週間に出品された「萌の朱雀」でカメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞したことに始まり、「沙羅双樹」(03)に続きコンペ部門に出品された「殯の森」(07)でグランプリを受賞。09年、同映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞」を受賞した際には、「火垂(2000)」が監督週間で上映され、11年の「朱花(はねづ)の月」が再びコンペ部門入りした。13年にはコンペ部門の審査員を日本人監督として初めて務めている。
「あん」は、縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々を送っていた千太郎(永瀬)と、ハンセン病だったといううわさが流れたため店を辞めざるをえなくなった老女・徳江(樹木)の物語。樹木の孫娘である内田伽羅が、徳江と心を通わせる女子中学生ワカナ役で共演する。5月30日から全国で公開。
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