手塚真生24歳、飛躍のとき 主演映画3本が公開
2015年3月15日 08:00
[映画.com ニュース] 新進女優の手塚真生が、飛躍の時を迎えようとしている。中島哲也監督作「渇き。」で銀幕デビューを果たしたほか、13年に秦基博の「初恋」のPVに出演したことも記憶に新しい。今年は、「甲斐バンド」の楽曲をモチーフにした短編映画作品集「破れたハートを売り物に」の一編で、長澤雅彦監督がメガホンをとった「この柔らかい世界」に松田美由紀とメインの母娘役を演じたほか、「たゆたう」「W&M ウーマンアンドマン」でも“座長”として新人監督と対峙している。進境著しい手塚に、話を聞いた。
力強い眼差(まなざ)しを放つ手塚が「この柔らかい世界」で演じるのは、松田美由紀扮する母親からネグレクトを受けた娘・珠里。甲斐バンドの「そばかすの天使」をモチーフにしており、幼児虐待が生み出す連鎖を描いている。撮影は1月29、30日に敢行。手塚は自分なりの解釈で脚本を読み込み、「誰よりも愛しているんだけど、世間でいうところの愛情表現ができなかったということで、実は愛があふれている関係だと思うんです。親子だからつながりは終わらない、生きている限り続いていく関係。虐待という言葉でまとめてしまうのとは違う家族像がこの母娘にはあり、そこを表現したい」という思いを肉付けし、役作りに入ったという。
長澤監督とは撮入前に何度か顔を合わせており、「監督からは“毒娘”ってニックネームを付けてもらいました。私は常にデトックスをして生きているから、毒はないと思っているんですけどね」とニヤリ。「監督にはとても温かく見守られている感じがします。興味を持ってくださっているのとは別の、なんというか『動物園の檻の中の動物』を眺めているような視線を感じるときもありますが(笑)。この作品は、そんな私と面白い企みをしたいという監督の思いから生み出していただきました」と話すなど、全幅の信頼を寄せている様子だ。
ほか2作品でも、女優魂を見せ付けるひと幕があった。「W&M」は香川・男木島でロケが行われたが、「海に落ちて溺れるシーンがあったのですが、台風のあとでクラゲが大量発生したんです。スタッフさんが『アロエがあるから大丈夫』って冗談みたいなことを言っていたのですが、溺れるのはもちろん、クラゲも怖いので、コンタクトレンズを外して何も見えない状態で飛び込みました」と快活に笑う。
山本文月監督のデビュー作「たゆたう」では、性同一性障害の主人公・片岡純子に息吹を注ぎ込んだ。同作でも並々ならぬ意欲で撮影に臨んだが、胸に秘めた思いは「大事なのは、どうやって生きていくかという心の問題」だという。「性同一性障害について知らない人がとても多い。私も認識していたものとは少し違うこともありました。そもそも、差別が好きではないんです。肌の色が違う、見た目が違うということだけで人を判断する思想が私には理解できない。この映画を見ることで、少しでも相互理解につながるきっかけになれば」。
今年の目標についても、実に明快。「映画をやりたいです! “壁ドン”みたいな恋愛ものもやってみたいし、コメディや社会派作品も興味があります。いろいろな枠の中で『また手塚かよ』という存在になりたいんです」と笑顔を満開にさせて明かした。