鳥越俊太郎氏「『アメリカン・スナイパー』は戦争の本質に肉迫した極めてリアルな映画」
2015年2月11日 14:50
[映画.com ニュース] クリント・イーストウッド監督最新作「アメリカン・スナイパー」の特別試写会が2月10日、都内で行われ、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が登壇した。イーストウッドが若かった頃から大ファンだという鳥越氏は、本作やイーストウッドについて熱いトークを展開した。
米軍史上最強とうたわれた狙撃手クリス・カイルのベストセラー自伝を映画化。2003年にイラク戦争が始まってから4度にわたって遠征し、160人を射殺したカイルの半生を描く。第87回アカデミー賞では作品賞・主演男優賞(ブラッドリー・クーパー)など6部門でノミネートされている。
11年前に取材でイラクを訪れた経験を持つ鳥越氏は、「これは戦争を賛美する映画ではない。ある意味では反戦映画だ」というイーストウッドのコメントを紹介。「戦争の本質にギリギリのところまで迫った極めてリアルな映画。伝説の狙撃手をヒーローとして持ち上げるだけの作品ではなく、主人公と家族との関係も交えながら、戦争の持っている悲劇や残酷な面を余すところなく描いている」と称えた。さらに、「『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』でもそうだったが、イーストウッドが戦争映画を作ると単純な善悪二元論にならないのは、常にヒューマニズムが底流に流れているからだと感じる」と語った。
「ヒア アフター」が公開された11年にはイーストウッドと対談した鳥越氏は、その時の印象について「イーストウッドはとても優しく、会った人は誰でも好きになるような方だった。当時私がガンを患っていたことを知ると、肩を抱き寄せるようにして“体は大丈夫か? よく来てくれたな”といたわってくれた」と感慨深げな面持ちで述懐。さらに「その時の私は『無敵』と書かれた安物のバッジを身につけていた。イーストウッドがそのバッジを興味深そうに見ていたので、胸につけてあげた。そしたら、2~3カ月後に発売されたいろいろな雑誌で、そのバッジをつけているイーストウッドの姿を目にしました(笑)」と意外なエピソードを明かし、会場を沸かせた。
「アメリカン・スナイパー」は2月21日から、新宿ピカデリー・丸の内ピカデリーほか全国公開。