ディズニーが「ベイマックス」のために画期的CGソフトを開発!その実力は?
2014年12月23日 11:00
[映画.com ニュース] 全米に続き、日本でも大ヒットスタートを切ったディズニー・アニメーション最新作「ベイマックス」は、兄を亡くした孤独な少年とケア・ロボットの交流を描くハートウォーミングな物語であるとともに、亡兄の死に隠された陰謀を暴く冒険アクションとしても存分に楽しめる。手に汗握るスリリングな展開を支えるのが、本作のために新たに開発されたレンダリング用ソフト「ハイペリオン」だ。その実力を、ロサンゼルスにあるウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオで取材した。(取材・文/内田涼)
レンダリングとは3次元物体の形状や質感といった情報データを、コンピュータ上で処理し、画像(映像)化すること。米映画業界ではピクサー・アニメーション・スタジオが開発した「レンダーマン」が広く知られており、同スタジオの作品はもちろん、数多くの実写大作、また「アナと雪の女王」にも使用されている。
一方、ディズニー・スタジオが約2年をかけて開発したハイペリオンの画期的な点は「反射する素材によって異なる光の反射を正確にシミュレーションできるようになったこと」と語るのはビジュアル・エフェクト・スーパーバイザーのカイル・オダーマット。より現実世界に近い映像処理を行うことで、まるで実写のカメラのレンズを通したようなCG映像をスクリーンに広げることが可能になった。
「ベイマックス」で最もその効果が表れたのが、物語の鍵を握るマイクロボット。主人公の天才少年ヒロが開発した指ほどのサイズの小型ロボットで、神経トランスミッターを通して集合体となり、瞬時に思いのままの形状に変化する画期的な発明だ。兄が巻き込まれた爆発事故で消滅したかに思えたが、何者かの手に渡り、悪用されてしまう。
シーンによって、ひとつのショットに1000万から最大3500万ものマイクロボットが登場するという。電磁気力によって、付いたり離れたりしながら、あらゆる物に変身する“彼ら”の姿は機械的な正確さと生き物のようなキャラクター性を兼ね備え、作品に色合いを加えている。当然、金属製なので光の反射も重要な要素であり、ハイペリオンの本領が発揮される。
ハイペリオンの開発にかかわり、マイクロボットを生み出したマイケル・カショーク(ヘッド・オブ・エフェクツ)とネイサン・カーティス(エフェクツ・プロダクション・スーパーバイザー)は、「マイクロボットの誕生こそ、これまで我々がディズニー作品でかかわった最も困難でエキサイティングな仕事だった」と口をそろえた。
「参考にしたのはアリの集団行動。アリは橋を作って、ほかの仲間たちを前に進めたりするんだ。マイクロボットにも相互に協調性をもって見えるような演出を施した。動きはあくまで機械的にね」(カショーク)、「ハイペリオンの利点? 言葉で説明するのは難しいけど、しいて言えば『無限に幾何学的なイメージを処理できる』ということ。言葉ではピンとこないかもしれないけど、映像を見れば一目瞭然だからぜひ劇場に足を運んで、その目で確かめてほしいね」(カーティス)。
本作の製作を通して、ハイペリオンの改善すべき点も明らかになったそうで、今後もバージョンアップを続けていく。そんなディズニー・アニメーションの技術革新は、ピクサー・アニメーション・スタジオ、さらに2012年に傘下となったルーカスフィルムという巨大スタジオ間での相互共有も進んでおり、今後も新たな傑作を生み出す強力な原動力となるはずだ。
「ベイマックス」は公開中。
フォトギャラリー
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。