山崎貴&八木竜一、妥協なき共闘作業を経て“盟友”に対して思うこと
2014年8月9日 08:50
[映画.com ニュース]こういう2人の関係を“盟友”と呼ぶのだろう。3D&フルCGによるドラえもん映画「STAND BY ME ドラえもん」を作り上げた山崎貴と八木竜一のことだ。映画完成に至るまでの様々なエピソードを聞きながら、盟友以外の言葉が思いつかなくなった。(取材・文・写真/黒豆直樹)
数々の名作を世に送り出し、VFXの面でも日本映画に多大な貢献をしてきた「白組」に所属する2人。同年の2人が共同監督という形で作ったフルCGによる3Dアニメーション「friends もののけ島のナキ」(11)は興行収入15億円に迫るヒットを記録すると共に、そのクオリティに関しても高い評価を得た。
登場人物の髪の毛1本1本の動きや洋服のしわなど、細部に至るまでのアニメーション表現の“進化”を感じるが、何より驚かされたのが、3D表現とドラえもんの「ひみつ道具」の意外なほどの親和性の高さ。「なぜ『ドラえもん』を3Dで?」という問いに対する、納得の答えを示している。山崎は、シュルレアリズムを代表する画家・マグリットの絵を引き合いに、ひみつ道具を3Dアニメで表現する面白さを力説する。
「『どこでもドア』は何の変哲もないドアに見えるけど、開けてみると別の空間が広がっている。『タケコプター』で飛ぶときの視点を自由に移動できるというのも3Dの強みでした。実は、誰もが知ってるベーシックな道具が、“体感”してみると、実は相当に面白いものなんだと分かってもらえると思います」。
八木も「この話をもらった時から、ひみつ道具の表現は絶対に面白くなると確信していた」と目を輝かせる。「引き出しの中が空間になっていて、そこからドラえもんが飛び出してくるなんて、本当に面白い。前作の『ナキ』の時に『スター・ウォーズ』とピクサーアニメの“中間”を狙ったと言いましたが、今回はややピクサー寄りになったのかもしれない。でもそれだけじゃない。原作のコミックやこれまでのアニメにも出てくるポーズやドラえもんたちの表情といった“漫画表現”を立体化しているんです。そうすることで、いまの子どもたちだけでなく、多くの世代の人に3Dの『ドラえもん』として理解してもらえるものになったと思います」。
劇的な大冒険ではなく、タイムマシンにどこでもドア、タケコプターといった誰もが知るベーシックな道具と共に日常を描き出すことが過去作品と異なる、3DCGによる「ドラえもん」の魅力を引き出している。
「僕は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』が大好きなんです」と、山崎が我が意を得たりとばかりに語る。「あの作品でも未来が出てきますが、何がビックリしたって日常生活で未来を描いているところ。この『ドラえもん』もそうですが、未来を描くとなると普通、どうだ! って感じで未来都市が出てくるものだけど『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、ちょっとだけ道具が進歩しているだけ。でもそっちの方が、現在の自分と繋がっていて楽しめるんですよね。想像力が膨らむ。どこでもドアもタケコプターも、いまでは“当たり前”の存在のように思えるけど、実はすごい。いや、そもそもネコ型ロボットが未来から来るってこと自体がとんでもないことなんだよって。それを今回、もう『ドラえもん』を卒業しちゃった大人たちに見せたかったんです。日常の中から『そうそう、このワクワク!』というのを思い出してもらえたら嬉しいです」。
これが“盟友”というものか。山崎の言葉を受け、八木が最後に嬉しそうに劇中の未来のシーンに関して明かしてくれた。
「『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で、未来の街の立体看板からジョーズが飛び出してきて、食べられそうになっちゃうシーンがあるでしょ? ああいうのをやりたいなって思ったの、のび太で。版権の問題もあるからできなかったけど、その名残として、のび太が看板に突っ込んじゃうシーンがあります。というか、そもそも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と似ているよね(笑)。『ドラえもん』の原作にも両親をうまく結婚させようとするエピソードがあるけど、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』よりもずっと前に藤子先生が漫画で描いていたんですよね(笑)」。
盟友2人が妥協なき共闘の末に完成させた、古くて新しい「ドラえもん」を“体感”してほしい。