カンヌ映画祭前半は伝記ものがズラリ 高評価はトルコ作品「Winter Sleep」
2014年5月20日 16:35

[映画.com ニュース]第67回カンヌ映画祭は、最初の週末を終えて今年の傾向が見えてきた印象だ。前半は伝記ものがそろった。マイク・リーが19世紀のイギリスの画家、ターナーを取り上げた「Mr. Turner」、ベルトラン・ボネロがデザイナー、イブ・サン=ローランを描いた「Saint Laurent」、またオフィシャル部門とは関係ないものの、マーケットで上映されると同時に17日からフランスではVODでリリースされ話題を呼んだ、アベル・フェラーラがDSK(ドミニク・ストロス=カーン)事件を元にした「Welcome to New York」などが挙げられる。
リー作品は彼らしく、クラシックな手法でターナーのミステリアスな人柄とその創作源に迫った。精神的な病を抱えた母親との確執、ふたりのタイプの異なる愛人との二重生活、イギリスのブルジョワ階級との距離などを通して、アーティストとしての姿を浮き彫りにした。評価は大方良かったものの、ふだんから伝記ものが評価されにくいフランスの批評家の受けはいまひとつの印象だ。

もっとも、「Saint Laurent」の方がより厳しいリアクションとなった。本作はサン=ローランがプレタポルテのラインを発表した翌年の1967年から76年にわたる、キャリア的にも私生活でも華やかな変化のあった時期に焦点を当てたもの。ドラッグ、アルコール、ナイトクラブでの夜の生活、公私にわたるパートナー、ピエール・ベルジェの存在の一方で、デカダンな恋人にのめり込む様子が描かれる。そうした派手な生活の裏のクリエイターとしての苦難がいまひとつ伝わりにくいとともに、時代が行きつ戻りつする複雑な構造の意図も見えにくく、エモーションをあまり喚起しないのが批評された所以のようだ。サン=ローランを演じたギャスパー・ウリエルは十分に説得力があっただけに惜しい。
DSK(ドミニク・ストロス=カーン)のニューヨークのセクハラ逮捕事件からインスパイアされたフェラーラ作品(役名などは異なる)は、傑作とまではいかないまでも見応えがある。とくに風貌やその尊大さがDSKを彷佛(ほうふつ)させるドパルデューの怪演が見もの。コンペティションでいまのところもっとも評価が高いのは、トルコのヌリ・ビルジュ・セイランの「Winter Sleep」。3時間16分という長尺のなかで、主人公の人柄が少しずつ明らかにされていく、映画術的にも興味深い作品である。今年はどうやら長めの映画というのもトレンドなのか、2時間以上の作品がコンペの過半数となり、ジャーナリスト泣かせと言われている。(佐藤久理子)
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