若尾文子が振り返る“昭和キネマ”の名監督たちと三島由紀夫
2014年4月19日 07:10

[映画.com ニュース] 昭和30年代から40年代の日本映画を中心に、全国のDVDレンタル店でコーナー展開されている「昭和キネマ横丁」が、戦後の日本映画の黄金期とともに青春を過ごしたシニア層に好評だ。大映の看板女優として数々の映画に主演し、同コーナーにも往年の主演作が選出されている若尾文子が、名監督たちとのコラボレーションを振り返った。
大映の第5期ニューフェイスとして、1952年に銀幕デビュー。53年の「十代の性典」で一躍スターの座をつかんだ若尾だが、本格派女優としての評価を高めたのは、溝口健二監督の「祇園囃子」の起用がきっかけだった。若尾は、「溝口監督の映画に出られて、やっとなにか演技らしきものを教えられたという感じでした」と当時を述懐する。そして、溝口監督の遺作となった「赤線地帯」では赤線の売春婦役。「撮影現場での溝口さんは、なにしろ怖いってイメージがありました。ほとんど何も話さないし、口をきいてくれたのはひと言、ふた言ですよ。セットの中央に座っていらして、微動だにしないんです」と名匠の仕事ぶりを伝える。
「何か聞きたいことがあったら、助監督さんに頼んで聞いてきてもらうんです」と明かすが、その助監督こそが、イタリアの映画学校留学から帰ってきたばかりの増村保造監督だ。「私の教育係を任命されていたんです。考えてみれば。私が今日あるのは、溝口さんから始まって、増村さんと組んだことでしょうね」。
増村監督とは、海外でも人気の高い「卍」「刺青」をはじめ、20本にのぼるコラボレーション。「昭和キネマ横丁」でも、オムニバス作品「女経」が選ばれている。その一方で、市川崑監督作品にも多数出演。石原慎太郎の原作を映画化した異色作「処刑の部屋」に出演した56年には、年間15作品に出演している。これには若尾も、「まあねえ……忙しかったはずよねえ(笑)」と苦笑いだ。
市川監督と増村監督、演じる側の立場での違いを聞いてみると、「市川さんには“市川崑流の型”というスタイルがきっちりあって、そこに俳優がはまらなきゃいけないって感じがありましたね。増村さんは、増村流のスタイルもあるんですが、役柄とか演じ方はわりと俳優の自由でした」という回答。「私の場合、増村さんの役柄の解釈とか、私に要求するものを抵抗なく受け入れられたんですよ。演じている間、一所懸命、増村さんの求めるものに添おうって思う自分がありました。増村さんには、溝口健二さんの影響なのかどうか、どの作品でも“人間を追及しよう”という姿勢がありましたから、それに共感して演じられたのでしょうね」と分析する。
昭和、そして若尾の映画を振り返ろうとすると、どうしても外せないのが作家・三島由紀夫の存在。「獣の戯れ」は三島原作、そして「からっ風野郎」では、三島本人の指名で共演を果たしている。「(『からっ風野郎』の際は)増村監督が“作家がちょっと道楽で映画に出るっていうのは嫌だし、出来上がったものはみっともないものにしたくない”って本格的に演出されて。最後にはクライマックスの撮影で三島さんがケガまでされてしまいました。撮影終了時にお食事に誘われて、一緒にダンスする機会があったんですが、正直、あまり運動神経がいい方ではなかったですね(笑)」
「昭和キネマ横丁」は、角川書店、松竹、東映、東宝、日活の邦画5社が持つ膨大な作品群から、往年の名作約150本の作品を選出するコーナー企画。TSUTAYA、ゲオほか全国約2000店のDVDレンタル店で展開中。
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