トム・ハンクスが語る渾身作「キャプテン・フィリップス」
2013年11月29日 19:00
[映画.com ニュース] 米俳優トム・ハンクスが、2009年にソマリア海域で起きた海賊による貨物船人質事件を映画化した「キャプテン・フィリップス」(ポール・グリーングラス監督)で演じた、主人公フィリップス船長について語った。
「ノンフィクションのエンタテインメントに魅力を感じるんだ」と語るハンクスは、同作の基になったフィリップスの回顧録を「いろいろな意味で、ほとんど脚本のような形で書かれた物語なんだ」と説明する。さらに、「フィリップス船長の著書には、彼が経験したことが実に率直に書かれている。また、素晴らしくビジュアルな風景もある。舞台は、コンテナ船の中であるにも関わらず、不思議なことにすごく魅力的な場所なんだ。そして個性豊かな乗組員と、非常に示唆に富んだ敵対者たちがいる」と絶賛。「映画関係者たちが、実際に起きた出来事をいかに商業娯楽として成り立たせるか、いかに魅力的に描くか」という問題に直面することを「最も大きなチャレンジ」としている。
メガホンをとったのは、ジャーナリスト出身で「ユナイテッド93」ほかの実録作はもちろん、「ボーン・アルティメイタム」ほかフィクション作品でもドキュメンタリータッチの演出が特長のポール・グリーングラス監督。監督自身も「トム・ハンクスとずっと仕事をしたいと思っていた」と語っているが、ハンクスもまた「『ブラッディ・サンデー』を見てすぐに、一緒に仕事をしたい人としてポール・グリーングラスを記憶した」と明かす。
映画は、人質としての恐怖にさらされる船長の姿と、救い出そうとする米海軍の作戦をスリリングに描くが、ソマリア人がなぜ海賊行為に手を出さざるを得ないのかという状況にもスポットを当てる。ハンクスは、「悪を許すわけではないけれど、複雑な背景を描くことに意義がある」と語り、「4人のやせ細ったソマリア人の背景には、腐敗した貧しい国があり絶望的で希望がない。悪人の背後にある複雑な状況を描くことで、“世界は平等ではない”ということも伝わると思う」と力を込める。
グリーングラス監督は、セットではなく実際の洋上で60日間にわたって撮影を行ったほか、4人の海賊役を操舵室ジャックのシーン撮影まで他の出演者と隔離し、海賊と初めて顔を付き合わせる瞬間のリアリティと緊張感にこだわったという。そして、ラストの10分間“トム・ハンクス史上過去最高”とも称されるシーンは、「監督の即座の決定で」撮ることに。「監督の信念を信じて即興で撮影したが、このような撮影が監督の真骨頂だと思う。アドリブで自由な演技ができた上にリアリティが出せるという、貴重な体験をさせてもらった」と振り返るシーンは、“オスカー確実”との呼び声も上がっている。
だが、本人にとってアカデミー賞とは「ワールドカップとパンケーキが合わさったようなもの(笑)。招かれたらパーティだと考えているね。“行く人みんながパンケーキもらえる”というような、無料で何かもらえるような嬉しさがある」のだという。
「キャプテン・フィリップス」は、11月29日から全国で公開。
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