劇場公開日 2013年11月29日

キャプテン・フィリップス : 映画評論・批評

2013年11月26日更新

2013年11月29日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

凄まじい緊迫感で描く、ソマリア海賊との知と勇気を駆使した攻防

2009年、ソマリア沖で事件は起きた。レーダーが捉えた2つの明滅点は徐々にフィリップスが指揮するコンテナ船へと迫り、やがて確たる脅威となって襲い来る。その正体は周辺海域を縄張りとする海賊だった――。

本作は世界を震撼させたソマリア海賊による米船舶襲撃事件を「ボーン・スプレマシー」や「ユナイテッド93」の名匠ポール・グリーングラスが迫真のキャメラワークで紡いだサバイバル・サスペンスである。

そう、サバイバル。これは本作を貫くキーワードとなる。冒頭、フィリップスは妻との会話の中で息子らの世代を憂い「サバイバルの時代」と口にする。まさかこの直後、自身が生死を賭けた岐路に立つとは想像もしないままに。

一方、シージャックに打って出るのは、こちらも生きていくために決死の覚悟で海賊となった漁村出身の若者たちだ。かくも世界は細部に至るまで無数のサバイバルに満ちている。そして文化や価値観、世代も全く異なるその両極は、運命の海域にて激しく魂を衝突させることになる。

もちろんグリーングラスのことだ。本作の緊迫感は凄まじい。神経をすり減らすほどの駆け引きをつるべ打ちに展開させ、ひとり人質となったフィリップスの救出劇では駆逐艦やネイビーシールズをも投入し破格のスケールを構築してみせる。

同時に本作は、知略を尽くし勇気を振り絞るフィリップスを英雄として讃えるのではなく、あくまで等身大の人間として冷静に提示する。そうすることで彼の姿はかえって現代を生き抜く我々の魂とも同調し、深い余韻をもたらすのだ。ここにもグリーングラスの巧さがある。

時代の爪痕を語り継ぐ彼の実話ベースの傑作群に、また新たな力作が加わったと言えよう。

牛津厚信

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