「ルールを曲げろ」ベーナム・ベーザディ監督&主演女優ネダ・ジェブライーリが語る、イランの映画情勢
2013年10月21日 15:45

[映画.com ニュース] 東京・六本木ヒルズで開催中の第26回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「ルールを曲げろ」のベーナム・ベーザディ監督と主演女優のネダ・ジェブライーリが10月21日、同所で会見した。
若手のアマチュア劇団が海外公演のチャンスをつかむが、主演女優のシャフルザードが親の承認を得られずに出国できない事態となり、劇団員たちはそれぞれの思いの中で葛とうする。若者たちが旧世代への価値観に抵抗する姿を通じ、現代イランが抱える問題をあぶり出す。
脚本・編集・製作・原作・出資を兼ねるベーザディ監督は、「権力者が決めたルールに従わないといけない社会で、若者たちはシャフルザードの父親のルールを曲げる。今のイランの若い世代は父親世代のルールに従わないことも多く、それで期待外れとみなされてしまう」と現状を語り、「原題は“ルールがぶつかり合う”というような意味をもつ」とタイトルに込めた思いを語った。
また、「イランで一般的に好まれる映画は、ストーリー性の強いものやスターが出演しているもの。『別離』のアスガー・ファルハディ監督はその両方をうまく使っているのでヒットも多い。一方、ジャファル・パナヒ監督やアッバス・キアロスタミ監督のようなアート性の強い映画は、もともと一般向けに作られていない。彼らは、イラン国内で公開できなくても構わないという感じで作っている」とイランの映画情勢を説明。さらに、「この映画も14カ所を直すよう指示が入り、修正後におよそ8館の劇場で公開する許可が下りた。若い世代から人気を集め、私の期待以上にヒットした」と反響を明かした。
父親と激しく衝突するシャフルザード役を演じたジェブライーリは、「彼は特別おかしな父親ではないと思う。イランに限らず、もっと気難しいお父さんもいれば、ゆるいお父さんもいると思う。私も今こうして映画祭に参加しているけれど、2~3年前だったら父親は許可してくれなかったかもしれない」と率直に語った。役者の自然体な演技がリアリティをかもし出すが、ベーザディ監督は「アドリブもあったけれど、劇中の95%のセリフは台本どおり」とち密に計算された脚本を書き上げた。
イランでは日本映画の人気も高いそうで、ベーザディ監督は「最初に見たのは黒澤明監督の『羅生門』で、ものすごく感動した記憶がある。最も好きな日本映画は、溝口健二監督の『雨月物語』かな」と日本映画への造詣の深さをうかがわせた。ジェブライーリも、「私もその2本が大好きだけど監督に先に言われちゃった(笑)。私は黒澤明監督の『生きる』も好き」と“応戦”していた。
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