周防正行監督、“脱サラ”新人監督にエール「大切なのは強い気持ち」
2013年9月16日 13:30

[映画.com ニュース] 最新作「舞妓はレディ」の完成が待たれる周防正行監督が9月15日、東京・渋谷のユーロスペースで行われた「月の下まで」のトークショーに、同作が初メガホンとなった奥村盛人監督とともに出席した。奥村監督は8年間、高知新聞社で社会部の記者を務めた後に“脱サラ”し、映画界入り。周防監督は「作品を重ねるごとに、苦しい記憶しか残らなくなる」と自ちょうしつつ、「大切なのは『表現したい』『伝えたい』という強い気持ちを持ち続けること。技術はあとからついてくる」とエールをおくった。
映画は高知県西部の港町・黒潮町を舞台に、カツオ一本釣り漁師の父親と、重度の障害を抱える一人息子が、折からの不漁や新造船の支払いで追い詰められるなか、強い絆を育む姿を描く。奥村監督は記者時代、黒潮町を取材した経験をもち「映画作りには、ある種の切迫感があった。自分自身も30歳を超えていたので、発奮しなければと」と述懐。周防監督は「切実なものが伝わり、真摯に心に突き刺さるものがあった」と作品を絶賛していた。
自ら脚本と編集、さらに予算集めも行った奥村監督に対し、周防監督は「映画は自分のお金で作るもんじゃないって思っているから(笑)、素直にすごいなと驚いている。人に金を出させる方法を教えてほしい」。トークショー本番前には製作費が話題にあがったといい、「僕は100~200倍の製作費をかけているから、本来それに見合った面白さじゃなきゃダメですよね」(周防監督)と背筋を伸ばす場面もあった。
周防監督は現在「舞妓はレディ」の編集まっただ中だといい、「今日あたりメドが立つと思って(トークショーを)引き受けたが、実際には立っていない」と苦笑い。大好きな京都を舞台に「ちょっとファンタジーとして描いてみた。歌あり踊りあり、素直に楽しい映画。ここ最近は、素直に苦しい映画が多かったから(笑)」。さらに監督デビューした当時の心境から、「最初の幸福感がなくなって、伝えることの難しさに直面する。だから、(監督作品の)本数も少ないのかな」とキャリアを重ねることで生じる苦しみや葛藤まで語った。
また、奥村監督に対し「記者時代の経験を客観的に振り返り、映画に描くべき」とアドバイスも。「それでもボクはやってない」(2007)の製作時に行った取材では、裁判システムのみならず報道機関への疑問も生じたといい、「地方の記者クラブに取材を拒否されたことも……。こんな風に事件記者がダメになるとか、そういう映画を期待しちゃう。おれが撮っちゃおうかな(笑)」と“社会派”への回帰にも意欲を見せた。
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