是枝裕和監督「そして父になる」で「覚悟を持って」9年ぶりカンヌ
2013年5月17日 09:00

[映画.com ニュース] 是枝裕和監督が、「覚悟」を持って9年ぶりとなるカンヌに臨む。「そして父になる」が、第66回カンヌ映画祭のコンペティション部門に選出され、「正直に言えばうれしい。ホッとしました」と安どの表情。17日、期待感を持って現地に飛び立った。
2004年、「誰も知らない」で柳楽優弥が最優秀男優賞を受賞。以降、新作の度にカンヌにはエントリーしていた。「作品の向き不向きもあるし、その年のセレクションの方針もあるでしょうから、自分の中で納得していても選ばれないこともある。まあ、もういいかなっていう気もちょっと出始めていた」というときに届いた吉報。「だから、やったあというより、なるほどねという感じ。ただ、あの場所に彼を連れて行ける。とても晴れがましい場所ですし、彼にとってもプラスになるだろうという気持ちもある。それは作品の責任者としては良かった」と話す。
彼とは、主演の福山雅治。もともと福山が是枝監督の作品に興味を持ち、アプローチしてきたのが企画の端緒。「どう撮っても格好いいからね。だから、あまり格好良くならずに映画の中に溶け込めるかなということは会って話しながら考えていました」という。そして書き上げた脚本が「そして父になる」。撮影を通してそれまで抱いていた印象も変わったそうで、「非常にコミュニケーション能力が高い。型があったらどうやって崩そうかと思っていたんですけれど、現場ではそういうものに拘泥(こうでい)しない。子どもとの関係、奥さん役の尾野(真千子さん)との関係の中で、きちんと1人の人間をまっさらな状態で演じていただけた。相性は良かったと思います」と振り返る。
現地時間18日のソワレ(公式上映)では福山、尾野に加え真木よう子、リリー・フランキーと2人の子役とともにレッドカーペットを歩く。ただ、「あの場所をワールドプレミアに選ぶのには、覚悟がいるんですよ」と気を引き締めることも忘れない。カンヌは世界最大の映画祭であると同時に、世界3大マーケットのひとつでもあるからだ。
「他の映画祭は監督が1人でフラッと行って成立するんですけれど、カンヌはどうしても組織的な取り組みが要求される。うまくいったときには作品が大きく動くんです。映画には文化と商品の両方の側面があるとすれば、商品としての動きが速いんですよ。世界中からバイヤーが集まるので」。過去の経験から、作品の評価だけでなく海外配給なども包括的にとらえていることがうかがえる。
それでも、「コンペに入るとどうしても賞を競っているという見られ方をするのは仕方のないことですけれど、20本のコンペに選ばれてあの場所に行くと、作品もそれに関わった人たちも祝福されるんです」と素直な心情も吐露。「隅っこではあるけれど、日本映画という太い流れの豊かな歴史の中に包まれている感じですかね。だから、映画を作ること、それを見せること、今までの日本映画のこと、日本人であることなどを意識させられる場所だと思います」と“日本代表”としてのプライドものぞかせた。
コンペにはロマン・ポランスキーやスティーブン・ソダーバーグら世界の巨匠が名を連ね、「身の引き締まる思いっていうほうが殊勝かもしれないですけれど、なんか笑っちゃう感じ。だから、楽しみでもあります」と謙そんした是枝監督。子どもの取り違えをテーマにし、「自問自答というか、かなり自分の足下に向けて作った」という「そして父になる」が、カンヌの大舞台でいかなる反響を巻き起こすかこちらも楽しみだ。
「そして父になる」は10月5日に日本で公開される。
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