資金援助も話題に 「セデック・バレ」で台湾先住民演じたビビアン・スー
2013年4月10日 08:30
[映画.com ニュース]1930年日本統治下の台湾で先住民セデック族が起こした反乱「霧社事件」をテーマに描いた台湾の歴史アクション大作「セデック・バレ」。日本でも人気の高い女優ビビアン・スーがセデック族のひとりを演じている。スー自身が台湾先住民タイヤル族の血をひいているということもあり、本作への思い入れは深く、出演だけでなく資金援助も行った。日本公開を前にスーが撮影を振り返ったインタビューと、セデック族に扮した場面写真を映画.comが入手した。
「海角七号 君想う、国境の南」のウェイ・ダーション監督が構想から10年以上を経て、台湾史上最高額の7億台湾ドル(約16億円)をかけて製作した大作。4時間36分で「太陽旗」、「虹の橋」の2部構成となっている。古来より続く独自の文化をないがしろにされてきたセデック族が部族の誇りをかけ武装蜂起し、日本の警察や軍との激しい戦いが迫力ある鮮烈な映像と共に描かれる。
スーは日本式高等教育を受け、日本人として日本の警察で働いたセデック族の花岡二郎の妻、高山初子を演じた。初子は霧社事件の後生き残った数少ないセデック族のひとりで、二郎同様本来は原住民の名前を持っていたが、幼い頃から日本の教育を受け、日本名を付けられた。
「彼女の生涯はとても波乱に満ちていて、この時代の変遷を経験しています。この役を演じるにあたりとても不安だったので入念に準備しました。忘れられない辛い過去があっても民族が子々孫々繁栄するよう現実に向き合おうとする、とても偉大な役柄だと感じました。男性の勇ましさをテーマにした映画で女性の登場シーンは少ないですが、初子を演じるために歴史的背景や彼女の人生を理解するよう努めました。幼い頃から同化教育を受けた彼女はセデック語のほかに日本語も堪能です。生活習慣や礼儀作法の面でも日本の影響を深く受けています。この役を演じられて光栄です」と役柄への向き合い方を語る。
「スワロウテイル」、「キル・ビル」などを手がけ、国内外で活躍する種田陽平氏が本作の美術監督を務めた。スーは物語の舞台となる「霧社街」の壮大なセットの印象をこう語る。「とても日本っぽい!と思いました。さすが日本から美術チームを招へいしただけのことはありますね。当時にタイムスリップしたかのようです。漢人、原住民、そして日本人という異なった民族が同じ町にいる……。とてもおもしろいですよね!」
スーにとっては自らのルーツ、そして母国への思いが詰まった作品となったようで「監督の不屈の精神、勤労、心遣い、映画や台湾、そして原住民への愛にとても感動しました。こんなにも壮大なスケールで原住民の物語を映画にしようとした人はこれまでいませんでした。原住民をテーマに映画を作ってくれた監督に感謝しています。そして、映画という言語を通じて世界中の人々に台湾の文化や少数民族の存在を知らしめてくれたことに感動しています」とウェイ監督への熱い思いを述べた。
キャストには実際のセデック族の役者を起用し、安藤政信、木村祐一ら日本人キャストも出演。台湾では大ヒットを記録し、第84回アカデミー賞外国語映画賞の台湾代表に選ばれた。スーのほか、ジェイ・チョウ、ジェリー・イェン、レオン・ダイ、ニウ・チェンザー、ツァイ・ユエシュン、チョン・モンホン、チェン・フェンフェンら多くのスターや映画人が資金を提供している。
「セデック・バレ」は4月20日全国公開。