井上真央に1年間密着 本サイトに明かす25歳の素顔
2012年11月23日 07:00

[映画.com ニュース] 女優・井上真央にとって、2011年は大いなる飛躍の年となった。NHK連続テレビ小説「おひさま」でヒロイン・須藤陽子を演じ切った井上が初仕事に選んだのは、主演映画「綱引いちゃった!」。大分市役所広報課勤務・西川千晶という新たな役どころを得た井上は、撮影現場で全身から演じる喜びを放っていた。映画.comでは1年間にわたりその姿を追いかけ、25歳の井上に密着した。
井上にとっては、銀幕デビューから10本目となった「綱引いちゃった!」だが「自分のことなのに知りませんでした(笑)。記念すべき10本目だったんですね!」と満面の笑みを浮かべる。「舞妓 Haaaan!!!」の水田伸生監督の最新作となる今作は、実在した綱引きチームを題材にした人情喜劇。大ベテランから銀幕デビューを飾る女優までが顔をそろえるなか、誰もが綱引きを「運動会でするもの」という認識でオファーを受けたため、撮影に際してのトレーニングは過酷をきわめた。
「純粋に綱引きに向き合って四苦八苦したり、成長している姿を水田監督がひとりひとりを見ながら面白さを引き出してくださった感じです。ある意味では、ドキュメンタリーのような感じでしたね」。そう話す井上の表情はどこか誇らしげであり、女優陣が撮影中も自主練習に明け暮れ満身創痍の状態で無事にクランクアップを迎えられた喜びをかみ締めている様子だ。
また、子どもの頃からあこがれてきた松坂慶子との共演が実現したことにも感慨を抱いているようで、「小さい頃から憧れて見ていた慶子さんと共演できてうれしかったのですが、まさか一緒に綱引きをするとは思っていませんでしたね(笑)」と述懐。さらに、「(松坂が出演した)『蒲田行進曲』が大好きなんですよ。今回の作品のあるシーンで風間杜夫さんと慶子さんが共演しているのですが、『おお、すごい!』と思っちゃいました。慶子さんも『あれ以来なのよ、一緒に演じるのは』とおっしゃっていました」と目を輝かせる。
映画やドラマで主演という名の“座長”を経験し、積み上げてきたことで井上の胸中にも変化が生じてくる。映画での主演は今作で5本目となるが、「主演をやらせていただいたことで、責任感や現場での振舞い方についても考えるようになりましたね。昔は自分のことで精いっぱいで、他のことを考える余裕もありませんでしたから。まだまだかもしれませんが、自分なりに周囲に気を配ることも含めて責任感は生まれてきているんじゃないかなと感じています」と、揺るぎない口調で話す。
撮影中だけでなく、公開に向けたプロモーションの場でも、井上の周囲には絶えず笑顔があった。それは、主演として井上が周囲への気遣いを忘れなかったことも一因といえる。共演陣からも、「年下なのに頼りがいがある。安心できてしまう」(玉山鉄二)、「とにかく軸がぶれない」(浅茅)、「ふだんの真央ちゃんは世の中の方々が抱いている印象とまったく変わらない」(犬山)と賛辞の声が届いている。
この賛辞を裏付ける出来事が、第25回東京国際映画祭で起こった。特別招待作品として上映された同作は10月25日、井上をはじめとするキャストが登壇したが、舞台挨拶中に熱狂的なファンが井上に握手を求め壇上に乱入。ファンはスタッフに取り押さえられ、井上にもケガはなかったが、この場で誰よりも落ち着いていたのが他でもない、井上だった。連行するスタッフに「お手柔らかに」と笑顔で声をかけ、凍りついた会場の空気を和ませた立ち居振る舞いは多くのファンを感激させた。
本サイトでは、舞台挨拶前に近隣のホテルでキャストのために行われた進行説明の場に居合わせる機会を得たが、関係者を含む全員の表情は真剣そのもの。東宝の宣伝プロデューサーの言葉に、力強くうなずく井上の表情も然り。経験を重ねることで舞台挨拶に立つ機会は増えても、人前で話すことに慣れることはない。それでも入念な準備を怠らないからこそ、プロフェッショナルとしての臨機応変な対応も取れる。それは、撮影でも同じことがいえる。現場のスタッフを無条件で信頼する井上の姿からは、「滅私」という言葉が浮上する。
「滅私」。私心をなくし、私利私欲を捨て去ること。井上の胸中の根底には、「まず現場の人たちに認められなければならない」という思いがある。作品をより良いものにするため、なじみのスタッフ、初見のスタッフに対し「この役に対して、こういう気持ちでぶつかります!というような意思、気持ちを見せないと認めてもらえないじゃないですか。だから、いまだにクランクイン前日や初日には胃が痛くなりますね」。だからこそ、献身的とすら思える現場での溶け込み具合からは私利私欲を感じさせず、今後もその姿勢は変わることがないだろう。
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