岩井俊二監督、最新作「ヴァンパイア」は太宰治「人間失格」へのオマージュ
2012年9月1日 22:00

[映画.com ニュース] 岩井俊二監督が9月1日、8年ぶりの長編劇映画となる「ヴァンパイア」の公開を記念し、東京・アップルストア銀座でトークイベントを行なった。
「Meet the Filmmaker」と題し、映画人をゲストにトークセッションを行なうイベント。海外のアップルストアではこれまでにも行われてきたが、日本でも開催されることになり、その第1回ゲストに岩井監督が選ばれた。
最新作「ヴァンパイア」は血を求める高校教師と自殺願望を持つ少女たちの姿を描き、カナダを舞台に全編英語で撮影。岩井は監督のみならず、脚本、撮影、編集、プロデュース、音楽をひとりで手掛けているが「アップルでのイベントだから言うわけじゃないけど、僕がここまでできるのはアップルのおかげ」と断言した。
技術の進歩により手元にあるわずかな機材、少ない人数と予算で映画を作ることができるという点については「低予算で100億円の予算の映画を凌駕する映画を作ることができる」と力説。「『アベンジャーズ』だって、こんなのでいいのか? ってくらいグダグダですから(笑)。日本でウルトラ兄弟を出せば同じようなもの出来るし、あのくらいなら誰でもいける」と大ヒット中のハリウッド大作をバッサリと斬り捨てた。
また、90年代に発表した自作「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」が、12歳の時に読んだ宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のオマージュであることを告白。同様に「学生時代に『人間失格』(太宰治)を読んだんですが、そのオマージュをやってみたかった」と語り、本作「ヴァンパイア」が該当すると明かした。
観客から、長編劇作品としては「花とアリス」から本作まで8年という歳月が経過した点を問われると「自分の中ではいろいろ作り上げていたという気持ちです。一番苦手なのは『次回作は何ですか?』と聞かれ『これです』という安定軌道に入ること。自主製作映画を作っていた頃の向上心やチャレンジ精神がいまも色濃く残ってる。若い頃の自分の残像に負けたくないという気持ちで、これからも神出鬼没にやっていきたい」と語った。
「ヴァンパイア」は9月15日から公開。なおこの日のトークイベントの模様はPodcastで配信される予定。
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