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W・ベンダース監督「東京画」から四半世紀「小津さんでさえ今の日本、東京はわからない」

2012年2月23日 18:30

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昨年10月に来日したビム・ベンダース監督
昨年10月に来日したビム・ベンダース監督
撮影/本城典子

[映画.com ニュース] ドイツを代表する映画作家ビム・ベンダースが、2009年に急逝した天才舞踊家ピナ・バウシュの世界を3Dで映し出し、世界中の注目を集めたドキュメンタリー「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」が公開される。昨年10月に来日し、東日本大震災に心を痛め、福島で本作上映会を開催したベンダース監督が新作について語った。

親友でもあったピナ・バウシュとは同世代で、生まれ育った街もほど近いという共通点があった。「戦後のドイツは独特の雰囲気がありましたし、彼女は舞踊で僕は映画というそれぞれの分野でそれまでの価値観を継続できる時代ではなく、新しいことを作り直さなければならなかったのです。お互いそういった経験をしています」と、アーティストとして共鳴し、意気投合したという。

ピナ・バウシュが残したブッパタール舞踊団とともにつくり上げた本作への思い入れは深く、既存の3D映画とは一線を画す圧巻の仕上がりだ。五感で体感する舞踊作品を映像で再現する方法は「3Dしかなかった」と断言するが、本作を企画した2008年には、反対意見もあったという。「企画を進めた時に『バカか!とんでもない話だ』というのが周りの多くの意見だったのです。これは『アバター』が公開される1年半くらい前です。いくつかのシーンはアバター公開前から既に撮影していました。そういう意味では3Dという認識も違いましたし、3Dでダンスの映画を作るなんて……というのが当時の一般的な考えでした」。

亡き親友ピナ・バウシュの舞台の美しさを「彼女は本当に言葉では言いつくせない美しさを作りだしました。極端にいえば今までの舞踊の常識をすべてひっくり返してしまった」と評し、その人となりを「彼女がかつて言ったことの中で彼女が何を成し遂げたかを一言でまとめている言葉があります。それは、『私は私のダンサーたちがどう思うかということにはまったく興味がない。彼らが何によって動かされているか、それに興味がある』と言ったんです。まさにこの言葉の通りだと思います」と紹介する。

パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などドキュメンタリー以外の作品でもその独自の世界観で、日本でも長年多くのファンから支持され、若手映画監督たちに影響を与えている。一方、ベンダース監督自身も小津安二郎に傾倒し、1985年に「東京画」を発表するなど日本への思い入れは深い。「東京画」製作からおよそ四半世紀たった東京を訪れて、新たに作品を撮るとしたら、どのようなものになるか尋ねてみた。

「1977年に初めて来日してから、83年にあの映画を撮るまでに3~4回しか日本に来たことがなかったのです。でも、83年以来は100回近く来ているんじゃないでしょうか(笑)。『東京画』の当時は今よりもはるかに東京に対する知識が少なかったのですが、今は来れば来るほど、自分は東京を知らないと実感しています。それは多分、速すぎる街の変貌に追いつかないということがあると思います。今もし『東京画』を撮り直すとすれば、僕にとってはまったく新しいディスカバリーだと思います。それと同時に、『東京画』で描かれる東京はもう存在しない東京だと思っています。『東京画』はご存じのように小津安二郎さんへのオマージュでもありますし、小津さんの描かれた東京をちょっと彷彿とさせるようなものだったわけですが、それは亡くなってまだ20年の時点で撮影できたからなのです。あれからもう50年近くたってしまいました。そうすると、あの小津さんでさえ今の日本、東京はわからない、認識されないと思います」

Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」は2月25日公開。

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