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ジョニー・トー、ハードボイルドからの一時決別を宣言

2010年5月14日 17:03

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クリシェだらけだが、 工夫されたアクション描写はさすが
クリシェだらけだが、 工夫されたアクション描写はさすが

[映画.com ニュース] 昨年のカンヌ映画祭でコンペティション部門に出品した香港映画界の巨匠ジョニー・トー監督の新作「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」が、5月15日から公開となる。「ザ・ミッション/非情の掟」「エグザイル/絆」に続く、殺し屋たちの仁義を描いたトー監督お得意のハードボイルド・アクションだが、今回はいままで主人公を演じてきたアンソニー・ウォンが脇に回り、フランスの大スター、ジョニー・アリディを主演に迎えてのフランス・香港の合作となった。

「この映画を作る3年くらい前に、私の作品をフランスで配給しているプロデューサーから『一緒に英語の映画を作ってみないか?』という話をもらった。そこで、私のヒーローである、アラン・ドロンを起用しようということになったんだ。2カ月後にはパリでドロンに会って話を進めたが、彼がシナリオを気に入ってくれず、結局流れてしまったんだ」

だが、その2カ月後、同じプロデューサーからジョニー・アリディを紹介され、すぐに意気投合。ロックスターでもあるアリディは、人生最後になるかもしれないという大規模なライブツアーを終えた直後に香港に降り立った。

「彼は万難を排して、十分に準備してやって来ました。彼から質問されたことは、ほとんどなかった。シーンに対する自分のアイデアが、私と同じかどうかを聞いてきただけで演技もしぐさも的確だった。最初は我々のやり方に適合できないんじゃないかという不安があったが、すぐになじんだ。そして、いつものやり方で進めてもいいんだと促してくれた。彼は全身全霊、すべての時間を我々に提供してくれたんだよ」

そんなアリディの協力のもとで撮影は進められたが、即興演出を得意とする香港の巨匠にとっては、海外資本が入った合作ゆえの、決められたシナリオ通りの撮影がとても辛かったようだ。

「前もって作ったシナリオ通りに撮ることのメリット、デメリットは今回両方あった。メリットはスタッフが楽になったこと。準備段階で方向性が見えてきて、より効率的な撮影ができた。デメリットは、私自身がそういう即興的演出を封じられたことで、新鮮な感じがしなくなったことだ。私は1回シナリオに書いたことをいざ撮影するという段階になると、古くさいと思ってしまうようなところがあって、今回は現場であまり興奮できなかったんだ。でも、これからも外国の映画人とのコラボレーションがあるだろうから、シナリオのまま撮っていくということは、私にとってもいい勉強になったと思うよ」

これまでに姉妹編にあたる「ザ・ミッション/非情の掟」「エグザイル/絆」のほか「PTU」「ブレイキング・ニュース」「エレクション」2部作など、多くの傑作ハードボイルド・アクションを手掛けてきたが、今後はその路線から一旦離れるという。

「明らかに、劇中に登場する拳銃の数は少なくなっていくと思う。現在製作中の監督作は1本だけだが、今後しばらくは拳銃が出てこないコメディを撮るかもしれない。それは、まるで一時期ヤクザ映画を撮らなくなった北野武監督の感覚に似ているかもしれない。今までのものを忘れようと思ったら、すべて捨てなきゃいけないと思うんだ。とはいえ、ヤクザ社会を描かなかったときの北野も、『アキレスと亀』の画家のように情熱的なロマンチストを描いている。つまり、完全に変えることはできないと思うんだ(笑)」

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