<映画のことば>
すべてを手にした方なら、きっと幸せでしょうね。
私も演劇をやっていました。
ジム・キャリーの名言です
「皆が富と名声を手にすれば、それが正解でないと悟るはず。」
<映画のことば>
みんなで手入れしながら今の家に住んできた思い出を全部忘れたの?
やっぱり、まだ目が覚めていなかったのね。
「富と貴とは、是れ人の欲する所なり。其の道を以て之を得ざれば、処らざるなり。貧と賤とは、是れ人の悪(にく)む所なり。其の道を以て之を得れば、去(さ)らざるなり。」
(富貴は誰でも手に入れたがるものだか、道理に従って手に入れたものでなければ、本当の意味では自分のものにはならない。貧乏と賎しい身の上は、誰でも忌み嫌うものだが、道理に従ってそうなったのであれば、甘んじて受け入れなければならない)と喝破したのは孔子でしたけれども。
売れっ子俳優としてはチヤホヤされるうちに、富と貴とに溺(おほ)れ、「本当の意味での幸せ」を見失っていたということなのでしょう。本作のパク・ガンは。
しかし、自分がスヒョンに別れを切り出した時のことを、パクは、心の底では忘れてはいなかったのですね。
トップスターに登り詰め、俳優としては成功して、同僚女優と浮き名を流すようなことをするようになってしまってはいても。
そこに、パクが「本当の意味での幸せ」というものに気づくことのできた素地が、いわば「首の皮一枚」で、残っていたということでしょう。
「子供としっかりとは向き合おうとはしなかった」と、パクは彼の父親を非難するのですけれども。
しかし(おそらくは、あの世から)タクシー運転手の姿を借りて彼の前に現れて、パクに自戒を促す箴言を贈ったのは、やはり、子の本当の幸せを願う父としての親心に、他ならなかったのだと思います。
評論子は。
そして、その子を思う父親の心情の温かさに、評論子は胸がいっぱいになりそうです。
心の奥底に潜んでいたスヒョンと別れたことへの迷い・後悔(そして、それはとりも直さずスヒョンへの思慕)が、父の箴言(父の化身そのもの?)を契機として顕在化したということも、間違いのないことだったと思います。
本作は、充二分に、佳作としての評価に値する一本だったというべきでしょう。
(追記)
本作では、クリスマスツリー型のあんどんを付けたタクシーが、キーになっていました。
本作をご覧になったレビュアーの皆さんは、もう気づかれているとは思いますが、これからは、手を挙げて、止まったタクシーのあんどんがクリスマスツリー型だったら、さりげなくスルーした方が、よさそうです。
ふだんは、あまりに利用していませんけれども。
しかし、タクシーを拾うのが、ちょっとだけ怖くなった評論子でもありました。
(追記)
それにしても、いいお父さんですよね。
息子が途を踏み外しているのを見るに見かね、呑気に成仏なんぞしている場合なんかじゃあないとでも、いうことでしょうか。
評論子が密かに探し求めている「良いお父さんが出てくる映画 ザ・ベスト」に、久々にノミネート作品が加わったようにも思います。
(追記)
素敵な女優さんでしたね。
スヒョンを演じたイ・ミンジョンは。
クリッとした大きな眼が印象的で、評論子の好みのタイプかもしれません。
「追っかけ」をして、彼女の出演作品を観ていっても良いのですけれども。
あまり(まだ?)映画には出ていないようです(涙)。