1970年4月、彼らの初めてのヨーロッパ・ツアーの最後を飾りロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール(クラシック音楽の殿堂)で行われた伝説的なライブを中心に、チーム結成以来の歩みを当時のインタヴュー映像と共にまとめたドキュメンター映画。
なんと言っても素晴らしいのがライブ映像。彼らはステージでも、ほぼスタジオと同じレベルで演奏できる稀有な存在。構成は、ギター2本、ベースにドラムスとボーカルのみ。ブラス、追加のパーカッションやバックコーラス、キーボードすらない。丹念に自身で準備したアンプとスピーカーの前で、楽譜や指示も全くない状態で、13曲をほぼ休みなく歌い、演奏した。ラストを除き、せいぜい2分半から3分の曲ばかりで、ロックンロールの基本に戻った感じ。圧巻は、最後の「キープ・オン・チューグリン」か。途中で、インストゥルメンタルだけで演奏する場面が出てくる。映画冒頭の紹介で、彼らが中学の同級生3人で学校ただ一つのバンドとしてスタートした時、インストゥルメンタル・グループだったと知った。特に、ジョン・フォガティのハーモニカ演奏が素晴らしかった!その後のジョンの重い声も心に沁みる。観ているうち、中学生の時、学校の体育館で、初めてエレキギターの音を生で聞いたことを想い出した。
この映画を観て、初めてわかったことが他にも幾つもある。最大の驚きは、彼らの音楽は、ロックンロールを出発として黒人色の強いR&Bの影響が顕著で南部を思わせる曲も多く、てっきり南部出身と思っていたら、なんと全員が、当時のフラワー・ムーブメントの中心である西海岸の北部、それもサンフランシスコ出身とわかったこと。周囲からは、さぞ浮いていたことだろう。教育も受けていたよう(上から目線で、すまん)。
彼らの音楽はしばしば、その頃のアメリカにとっての最大の問題、ベトナム戦争を反映していると言われてきた。このライブの後に発表された日本でも有名な「雨をみたかい」やこのライブでも出てくる「フォーチュネット・サン」「バッド・ムーン・ライジング」など、戦争に行かざるを得なかった当時の若者たちの気分を反映した歌詞がたくさんある。しかし、ジョンがインタヴューに答えていたように、彼らは、別にそれをメッセージとして伝えたかった訳ではなかった。彼らは、音楽を通して何かを言いたかったのではなく、演奏することそのものの中に喜びを見出していたのだ。
それにしても、真面目で、当時は普通だった薬物もやらず、若い時から、時間のある限り集まって練習ばかりしていたところが出てくる。演奏は磨き上げられていて、その代わり、興に乗ってアンコールの声に応えることもなかった。まるで、クラシックの定期演奏会みたい。
途中から加わったジョンの兄、トム・フォガティは、最初は別のバンドのボーカル。ただ、このライブをやる頃には、ほぼ全ての曲が、ジョンのオリジナルで、リード・ボーカル、リードギターだけでなく、演奏のプロデューサーも彼だったとしたら、バンドが長続きしないのは、誰にでもわかる。このライブこそは、彼らにとっても、たどり着いた頂点だったに違いない。
確かに、アメリカのヒット・チャートの2位ばかりでトップに上り詰めたシングルがなく(アルバムはあったが)、「プラウド・メアリー」みたいにオリジナルよりも、他のシンガーのカバーの方が売れたりしたこともあって、揶揄されることもあった。だけど今日にいたるまで、こんなに曲が流されているロック・バンドがあるだろうか。YouTube上でも、試聴が1.2億回を越えている曲すらある。唯一の例外があのビートルズだが、ポールの脱退が流れた直後に、ビートルズの本拠と言えるロンドンで開かれたこのコンサートで、CCRはビートルズに挑んでいたのだと思う。
素晴らしい演奏だった!