ボーはおそれているのレビュー・感想・評価
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とにかく長い、長い、長い悪趣味な不条理コメディ
2024.2.16 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ映画(179分、R15+)
怪死した母親の元に戻ろうとする息子を描いた不条理コメディ
監督&脚本はアリ・アスター
原題は『Beau Is Afraid』、タイトルは「ボー」だが、劇中の字幕は「ボウ」となっている
物語の舞台はアメリカのとある治安の悪い町
そこで暮らすボー(ホアキン・フェニックス、幼少期:James Cvetkovski、10代:Armen Nahapetian)は、裕福な母親モナ(パティ・ルポーン、若年期:ゾーイ・リスター=ジョーンズ)と離れて暮らしていた
ボーはセラピーを受けていて、その日はセラピスト(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)から新しい薬を処方されていた
セラピストは「必ず水と一緒に飲むこと」と念を押して処方箋を渡した
父の命日に母の元に帰る予定だったボーは、チケットの手配を済ませて眠りについた
だが、隣人から幾度となく「静かにしろ」と叩き起こされてしまい、それによって寝坊してしまう
慌てて用意をするものの、忘れ物をしかけて、ドアに鍵をかけて荷物をそこに置いたまま、取りに戻ってしまう
そして、玄関に戻ると、鍵も荷物も誰かに盗まれてしまっていた
ボーは取り急いで母に電話をかけると、母は落胆した声で「正しいと思うことをしなさい」と言って電話を切った
どうしたら良いか悩むボーは落ち着きを取り戻すためにセラピストから処方された新薬を飲む
だが、水道が止まっていて、水の備蓄もなく焦り始めてしまう
向かいのショップに水があることを確認したボーは、マンションのドアに物を挟んで戻れるようにしてショップに向かうものの、カードが切れずに戻るのに時間を要してしまう
ボーはなけなしの小銭をかき集めて払おうつするも足りず、募金箱の小銭をぶちまけて部屋へと戻ろうと走った
だが、ホームレスたちはドアが開いていることに気づいて侵入し、ボーは部屋の外に放り出されてしまうのである
物語は約3時間の長尺で、「ボーの自宅周辺」「事故後の医師一家との顛末」「森の劇団」「母の自宅」という感じの4幕構成になっている
自宅周辺にてパニクったボーは車に轢かれ、実業家のグレース(エイミー・ライアン)と医師のロジャー(ネイサン・レイン)に助けられるパートでは、その家の娘トニ(カイリー・ロジャーズ)とその家で匿われている退役軍人のジーヴス(デニス・メノチェット)との絡みが激しい
トニとその友人ペネロペ(Heyley Squires)に母の元に送ってもらうはずが、訳のわからないタバコを吸わされてラリったりするし、森の劇団では訳のわからない妄想を見たりする
全体的にどこまでが現実で、どこからが妄想なのかが曖昧になっていて、新薬を飲んだあと、外で眠った時点など、どのシーンも妄想の入り口のように見えてくる
それぞれのシーンで妄想っぽい演出がなされていて、個人的には「ほぼ全編が妄想」という感じに捉えている
妄想の入り口は「遅刻して母に電話をかけたあと」で、「正しいことをしなさい」という母の言葉が起点のように思えてくる
そこからは、常に悪い想像を絡ませながら、「母と会いたい」という気持ちと、「会いたくない」という気持ちがせめぎ合って、様々な物を見せている、という感じになっているのではないだろうか
いずれにせよ、かなりヘンテコりんな映画で、長さが長さゆえに、誰かにオススメできるような映画ではないと思う
『ミッドサマー』で取り込んだ若年層がトライするかはわからないが、かなりマニア向けのコメディなので、観る人を選ぶ映画なのだと思う
パパモンスターで笑える人なら良いと思うが、かなり悪趣味な3時間なので、脱落者が出ないか心配になってしまう
個人的には嫌いではないが、何度も観たくなる映画でもないので、覚えているシーンだけを反芻して楽しむのが健全なのかなあと思ってしまった
最速上映イベントにて鑑賞、すごく面白かった。 悪夢につぐ悪夢をみて...
最速上映イベントにて鑑賞、すごく面白かった。
悪夢につぐ悪夢をみてるようで最高!
イベント始まる前に流れていた不穏な音楽もとても好きでした。
上映時間は長めだけど、次々と色んなことが起こるのであっという間だった。
悪夢を見た3時間
ハピネットファントム・スタジオ様から試写会にご招待いただきました!
要所要所のブラックユーモアなネタに笑って楽しみながら、もう2度と観たくないと思ってしまう怖さがある😂
何がすごいって、グロ描写を抑えているのに人を“不快”もしくは“不安”にさせる演出。
前作の直接的な描写が多かった「ミッド・サマー」とは打って変わって、また別の怖さを出してきた。
この物語をざっくりご説明すると、
ボーは善人だけど恐ろしいほど優柔不断な性格(理由はある)により、物事を悪い方向へと進めていく人物。
そんな彼が、故郷の母親に会いにいくのがストーリーの本筋。
もっと言うと、“怪死した母親に会いにいくこと”が目的。
だが、周りのヤバい人たちの言動、そして自分自身の妄想?でなかなか前に進めない。彼の恐怖の故郷帰り(旅)が始まる。
監督がインタビューで“家族…義務感…煩わしいかも…”的なことを言ってて、まさにその悪いところを体現した恐怖。ヘレディタリーもそうだけど、家族に恨みがあるのかしら。笑
この作品にハマったか?というとそれは微妙なんだけど。笑
改めて監督の作家性に度肝抜かれた。
これからも、アリアスター監督の作品は毎回楽しみにします✨
アリ・アスターの2時間59分の挑戦状
『ミッドサマー』のアリ・アスターが観る者に叩きつけた2時間59分の挑戦状。どう生きてきたらこんなトンデモ展開満載のお話を考えられるのか、彼の脳の構造を観てみたい…ってそれを具現化したのがこの映画か。
とにかく冒頭シーンだけで本作が一筋縄ではいかぬ内容だということが察せるが、アスターにとって“母親”は重要なモチーフ。『へレディタリー 継承』、『ミッドサマー』のいずれも、姿こそ現さないものの、母親の存在は主人公に大きなトラウマを与えていた。単なる帰省のつもりだったはずが一転し、母の死の真偽を確かめることとなった主人公ボーだったが、その帰路は想像を絶するものだった。家族について「煩わしくて、終わりのない義務感」と語ったアスター監督。この言葉が、本作のなんたるかを物語っている。
アスターはこうも言っている「これはスリラーじゃなくコメディだからね」。ボーに降りかかる数々の受難は、本人にとっては悲劇でも、他人からすれば喜劇。そういう点で本作は、トラジコメディ(悲喜劇)。
これほどまでに、ホアキン・フェニックスの生来の困り顔が激ハマリした映画もそうないかも。
出口のない暗闇を3時間歩く感覚になる
ハピネスファントム・スタジオさんからの招待で先行試写会お邪魔致しました!
「ヘレデタリー/継承」「ミッドサマー」に引き続き日本公開待望の3作目。
まさかの上映時間2時間59分で期待値が上がるとともに、『どん底気分になればいいな』というアスターの言葉にビビりながら挑んだ当日。
今回の作品、良く言えば”遊び心がある”、悪く言えば”作品の私物化”かなと思います。
(映画なんて監督の私物化でしかないのは分かってるけどね…笑)
ネタバレはできないので所感にはなりますが、3時間出口のない暗闇を歩くぐらい不安になりました(笑)
日常の些細な嫌なこと、強迫観念が言語化・映像化されていく爽快さがあると共に、
一切幸せな展開に落ち着かず、終着点が見えないまま進む放棄っぷりに愕然としました。
監督の言う「不安な気持ちになって欲しい」という目的は大いに達成されます。
ただ落としどころは自分で見つける必要があるので、一つの映画として読解が難しく能動的に見ざる負えないところは注意です。
監督がちりばめたメッセージを回収しパズルを完成させた先に、意味の分からない絵が完成するだけの可能性もあるのであまり深く考えないで手放しにするのもあり。
初老の男が実家に帰る家路で、右往左往している、ただそれだけのストーリーではあるのですが、えらく回り道して3時間が過ぎていきます(笑)
アリ・アスター独特の死体表現や突拍子のない演出には最初から痺れるところはあれど、
今作はかなり控え目
その人物の人生や頭の中を追体験すると考えれば、色々辻褄はあってくるのかなと思います。
最近見た作品で似た感情になったのは「君たちはどう生きるか」です。
散りばめられた導線やメッセージを汲み取って自分で完成させていく所が同じです。
個人的には「人の振り見て我が振り直せ」そんなメッセージを受け取り、自分の行動を見直し自己都合で物事を進めていないか振り返るきっかけになりました。
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