キリエのうたのレビュー・感想・評価
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観る人を選ぶのはマストではありますが、11月の肌寒さのような岩井俊二文学を堪能出来る作品です。
劇場での予告編を観た時から気になっていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…個人的には好きな作品。一連の岩井俊二作品が好きな人なら多分好きなのではないかと思いますが、正直好き嫌いは分かれそう。
アイナ・ジ・エンドさん演じるキリエに尽きる作品で映画初出演とは思えないぐらいの存在感。
キリエの純粋過ぎる透明さがキリキリと突き刺さる。
キリエが純粋過ぎて、周りの大人がなんか胡散臭くて、淀んで見えるくらいw
そんなキリエに周囲が食い物にしようと寄って集ってくるのではないかとハラハラしましたが、とりあえずセーフ! 松浦祐也さん演じる波田目に汚されなくて、ホント良かったと思う。でも、波田目もよくとどまったもんだと後から感心してしまうw
「スワロウテイル」のCharaさん演じるグリコもそうでしたが、岩井俊二監督は核となる女性の描き方が独特かつ存在感抜群に描くので物凄く印象に残るんですよね。
アイナ・ジ・エンドさんは在籍したBiSH時代には名前を知っている程度でしたが、役者さんとしても良い役者かと。ハスキーボイスも個性的で好きな役者に小松菜奈さんは森七菜を挙げているのもなんか分かります。
ただ、ちょっとセクシーショットが多い感じがしなくもないのは…サービスですかねw
他の役者さんも個性的かつ良い役者陣で結構贅沢な使い方。
黒木華さんの存在感は安定感かつ一服の清涼剤的な感じだし、イッコ演じる広瀬すずさんの派手なウイッグも結構似合っていて上品なコギャル感が素敵ですw
石井竜也さんの「北の国から」や「夜明けのスキャット」なんてなかなか聴けませんが、ただ、ロバート・キャンベルさんのあの起用は…ちょっと謎ですw
いろんな曲が歌われていて、主題歌の「キリエ・憐れみの讃歌」や劇中で歌われる「異邦人」や「さよなら」も良いんですが、個人的にはデュエットで歌った「マリーゴールド」が好きですね♪
ただ、ラストには1本に繋がるストーリーも場所と時間軸が行ったり来たりし過ぎていて、事前に多少の予備知識が無いと正直ややこしいと言うか、こんがらがる。
アイナ・ジ・エンドさんが姉のキリエと妹の路花(キリエ)の一人二役を演じるのもラストではその味と言うか、意味と意図を理解出来るんですが、ちょっと岩井俊二節が効き過ぎているし、178分と言う長尺の上映時間も観る前からは結構ハードルを上げている。
原作の小説を読むとその辺りのことが分かるかと思いますが、映画は原作未読でも成立してないとダメと考える主義なのと、未読であってもこれだけの時間を使って理解が追い付き難いのはちょっとどうかと。
結局岩井俊二文学が好きな人か、もしくはアイナ・ジ・エンドさんが好きな人なら付いていけるけど、この辺りが岩井俊二作品らしいと言えばらしい。
個人的に感じた難点はラストの音楽フェスが開催される辺りから、世界観に少し澱みと言うか、キナ臭い感じがしましたが、フェス開催の使用許可証を取得してないのには正直お粗末過ぎる。
行政や警察の融通の無さを描こうとして、純粋に歌の魅力を伝えたかったにしても、あそこまでのステージセットを組み、キッチンカーまでも手配して、使用許可証を実は取得してませんでしたって、共感は出来ないし、路上至上主義を大きく掲げても素人感丸出しで一気に冷めてしまう。
また、イッコの暴漢に襲われるのもなんか蛇足感を感じる。実家のスナックを継ぎたくない理由に「女を売り物にしたくない」は10代の女の子なら、十分過ぎる理由になるし、援助をしてくれる予定だった母親の再婚相手の援助打ち切りで大学進学がどうにもならなくなったのも分かるけど、それならその辺りをもう少し丁寧にとは言わないけど、ある程度描いていなければ、イッコが単にワガママで都会を満喫しているようにしか見えない…まあ、満喫はしてたと思えますがw
限りなくシンプルに描こうとしていても、何か足したくなり、何かしら混ぜようとするのがなんか岩井俊二監督らしいと言えばそうなんですがw
ですが、久々に岩井俊二節を味わえたし、アイナ・ジ・エンドさんの魅力を十二分に感じられたのは個人的にはかなりの収穫。
観る人を選ぶ作品ではありますが、11月の肌寒さを感じながらも上着と人の暖かさを感じる嬉しさを感じられるような岩井俊二文学を堪能出来る作品です。
再び岩井俊二の女の子達が息衝き動き始める
個人評価:4.7
まるで主役の子に当て書きしたかの様な物語。震災への鎮魂歌を下地に、少女の成長と復活を岩井俊二らしい演出で切り取っている。
この年頃でしか出せない儚い美しさ。その一瞬の宝石の様な瞬間を切り取った岩井俊二は流石だと思ったが、主役の子が28歳だとわかり、このアイナ・ジ・エンドという存在を、若く美しいまま映画の中に閉じ込めた事の意義に感嘆する。
路上ライブの音響が凄まじく、まるで目の前で歌ってる様な臨場感がある。おそらく特別な録音をしたのだろう。
鑑賞後に現実世界のアイナ・ジ・エンドのLive映像を見ると、まるで音楽で成功したその後のキリエの姿に見え、映画の物語の世界線が今も続いている錯覚を覚える。それも監督の狙いだろうか。
前作ラストレターで岩井俊二に囚われていた、私の30年の岩井狂を卒業させてくれたと思ったが、あのラストの雪の中の2人の少女の演出。まだまだあの胸の奥をツンと突き上げる甘酸っぱいこの想い。これからも引きずる事になりそうです。
ありがとう。
天下一品(アイナジエンド)こってりスープ3時間注がれっぱなし
徐々に明かされるストーリーが絶妙
歌うことでしか声を出せない路上ミュージシャン「キリエ」の13年間に渡る出逢いと別れを描いた物語。ストーリーが進むにつれて徐々に明らかになっていく4人の関係性。現在から過去に遡って少しずつ紐解いていくストーリーが絶妙で素晴らしい。
キャスト陣は目移りするような実力派が揃っていますが、その中でも主演アイナ・ジ・エンドは映画初主演とは思えない堂々たる演技で彼女の魅力に引き込まれました。広瀬すずもさすがの存在感で2人の相性も抜群に良かった。
点と点が線になる瞬間、キリエの圧巻の歌声が心に響いて胸が熱くなりました。178分の長尺ですが時間の長さを感じさせない魅力的な作品です。
2023-160
【”キリエが歌は歌えるが声が出なくなった訳。”複数男女の2011年から2023年までの関係性の変遷を、忌まわしき天災を背景に描き出した音楽作品。岩井俊二監督の脚本が冴え渡る作品でもある。】
ー 2011年当時の大阪で発見された小学生の女の子イワンと、キリエ(アイナ・ジ・エンド)の関係(姉妹)や2023年になってからのキリエとイッコ(広瀬すず)の関係や、
夏彦(松村北斗)と高校生時代のまおり(その後はイッコ)との家庭教師と教え子であった関係。
脚本が上手い為、何の苦も無く頭の中に相関関係が自然に出来て、面白く鑑賞。-
◆感想
・冒頭、二人の女の子が雪の中、大の字になって大地に仰向けで寝ている。
そして、最後半、それが夏彦が家庭教師をしていたまおりと、夏彦に頼まれて友達になった彼の妹、ルカである事が分かる。
そして、まおりはその時にルカが歌ったオフコースの”さよなら”を聞いた時から彼女のファンになった事が後半に、分かるのである。
・路上ミュージシャンのキリエの前に座り”一曲歌って。”とお願いしたイッコは直ぐに”気が付いた”のだと思った。で、”マネージャーになるよ。”
■今作は、音楽を小林武史が担当した故に、アイナ・ジ・エンドの曲も含めて素晴らしい。
特にメインテーマの「キリエ・憐れみの賛歌」は、アイナ・ジ・エンドのハスキーな声で伸び上げるように歌い上げる冒頭のサビメロからの流れは名曲である。
・大震災後、夏彦がお腹に自身の子がいるフィアンセの身を案じる姿や、その後も彼女が見つからない事に長い間、心痛める姿。
だが、その後、彼に訪れた僥倖なる事。
・震災後の石巻からたった一人、大阪にやって来た小学生の女の子イワンを気遣う小学生の先生(黒木華)の善性溢れる姿も良い。
<今作は、音楽映画としても良いし、震災で傷ついた人達の再生の物語であり、年代を跨いだ”4人”の男女の物語でもあるのである。>
■その他
・客電が上がった後に、周囲の観客から”長かった!”と複数の声が上がったが、私は長いとは思わなかった。
だが、正直に書くと昨晩あるレビュアーさんに”178Mもあるよ!大丈夫か俺の膀胱‼”と泣きを入れていたのは事実である・・。
いまいち入り込めず
一点突破
長いし、ストーリー的にも疑問点は多い。きっと賛否両論出てくるだろう。
特に、『アレ』がきっかけになった路花/キリエの数奇な運命については、良いのかな、っていうか許されるのかな…?と思いながら観てた。かなり複雑で無理のある流転劇。
広瀬すずも松村北斗もそしてもちろん黒木華も好演しているが、それでも路花/キリエの運命を盛り上げるためだけに創造されたようにも思えるキャラクターたち…
そんなちょっと岩井俊二らしいとも、らしくないともいえるこの映画を、真に生きたものにしているのは、アイナ・ジ・エンドのうたの力だった…
うたの力による一点突破。それだけの力があった。それを観るためだけにでも、劇場に行く価値がある。
tcxは避けた方が。
予想してたサクセスコメディじゃなかった。
すずが出てるから、絶対楽しめると思いながら着席。
予告編で、変だなって思っていた主人公のキリエが、歌えるけど喋れないって設定。納得いかなかった。だってキリエ、本名ルカは子供の頃から喋らない。でも男の子達に呼ばれて、ザリガニ釣ったりして楽しんでるし、バレエも踊れるし、歌も歌える。そんな奴が会話をしたくないなんて不自然すぎない?何故喋らなくなったかも分からなかった。
そんな女子が東京で路上歌いやってたら、イッコに声をかけられる。ん?イッコは芸能プロダクションのやり手かと思ったら素人なのにキリエのマネージャーになる。それからなんだか変な展開。とにかくイッコは髪がバンバン変わる、なんだこりゃ?あ、時間の設定が変わってんのか。ずっと過去と現代を行ったり来たり、バンバン入れ替わる。登場人物も大量。この手の演出って大の苦手なのよ。えっ!イッコは犯罪者だったの!超金持ちじゃん。最後、生きてる?死んでる?
アイナの歌、昭和の名曲をたくさんカバーしていて、自分の歌にしているのは良かったけど、自分はこの歌声嫌いだ。何より楽しみにしていた、プロを目指すキリエの努力や失敗の積み重ねのコメディが一切無し、天才だったのね。
とても長くてとても残念でした。
監督欲張りだね、Charaの次はアイナ?
岩井俊二監督って言ったら『スワローテイル』が好きで
その他は映像の美しさへの主張が強すぎて
海外のファンの好評を博したけど、重みが欠けてて好みじゃなかった・・・
今回は割と?欲張になったか、のようにいろん要素を詰めて詰めてさらに音楽を上手いこと使ってた。
最初の30分にいろんな疑問を抱かせられたせいで、あとで伏線回収に忙しくて全くつまらなさを感じる暇がなかった。
残念なことにテーマ一つ一つがありふれたもので、多くの映画が取り上げてる社会問題ばかり。まさか途中に震災の話が出るとも予想できなかったし。いかにも「王道の日本映画」になっちゃう。それらを全てキリエの「過去」や「現在」に入れて、
彼女の歌と希望と対峙させるのは、不自然じゃないけど....やはり「欲張りだ」、との一言だ。
ただ今回は、キリエの歌が彼女自身またはそれを観る人の感情の出口になってくれて、悲しみを抱きながらも歌って生きること、そんな今が最も大事だとちゃんと伝えたと思う。時間線があんなに縦横往復するにも関わらず。
映画全編を貫く彼女を歌を聴いたら、こんな、映像だけきれいな映画でもいいじゃないか、と。
こんな、「(映画の題材としては)普通な問題」を抱いてる人たちを描く映画でもいいじゃないか、それこそ現実、揺れるカメラと地震と感情と同じく、リアリティそのものであればと。
その歌を聴いて思った。
一生懸命で綺麗な歌だから。
物語性のあるライブを見た気分になった。
ただ長いだけあって、感情が湧きすぎて疲れる...お休みの日に観ることを勧めよう。
描き切れていない部分が…
あらかじめ小説を読んでた者からすると、映画では描き切れていない部分があったような気がする。真緒里がイッコになった経緯とか…。映画を観て、違和感が残った人には小説を読むことをおすすめしたい。
あとは、テーマが「歌」なら、もう少し歌に集中させてほしかった。過去と現在を行き来するタイプの映画は好きだけど、その反面、感情移入したり、歌に感動するのが難しかったような気もする。でも、やっぱりアイナさんの歌声は良かった。演技も自然だったし、誰が演じてもアイナさん以上にはならないと思う。
驚いたのは松村北斗さん。恥ずかしながら、ちゃんと松村さんの演技を観たのは初めてだったが、惹き込まれた。夏彦がキリエに再会するシーンがこの映画の中で最も感情移入できたし、泣いた。松村さんの出演作を漁ってみたいな、と思ったり…。
小説をもう一度読んで、また映画館に足を運ぼうと思う。
憐れめよ
アイナジエンドしかかたん
アイナジエンドのうた
とにかくそれに限る
ストーリーは落とし所よくわからなくて
???
岩井俊二監督作品はよくみてるほうだが
今回何を伝えたかったのだろうか?
キリエとルカは別人が演じた方が良かったかなぁ
なんか夏彦と一緒にいると夏彦が変な人にみえてしまう。
キリエに対する罪悪感とかではなく
キリエと昔から好き通しでフィアンセとかそういう
綺麗な設定にしてくれたほうが
今回の夏彦の行動とか納得出来る
岩井監督のストーリーはいつも少しこういうとこあるが
多分映画での描写不足からくるものかな?
原作では補われて納得できるんだろうな
とはいえ、私は好きな作品でした
最後のイッカさんのオチの展開は予想出来たし
またこのパターンかよってなった
もう少し違う方向とかでお願いしたかったな
ディレクターズカット版とかきたら
すごくみたい
期待。
だって、迷惑だから
「だって、迷惑だから…」夏彦に向けたキリエ(路花)の言葉に号泣する夏彦。唯一登場人物に共感出来たシーンであり自分も涙が止まらなかった。
それにしてもキリエを演じたアイナ・ジ・エンドさんの初めてとは思えない映画主演を見事に演じていたし歌は心に染みた上にめちゃめちゃ可愛かった!すずちゃん目当てだったが一気にアイナさんのファンになった。
もちろん、JKの真緒里やすっぴんのイッコさん、カラーウィッグとサングラスで変装したイッコさんのどれをとってもすずちゃん(広瀬すず)の魅力が溢れていた。
この様な展開になるとは思っていなかったが…
3時間は長いなぁと思ったが名曲を数多く聴けただけでも儲けものだったし以外と長くは感じなかった。
タイトルなし(ネタバレ)
松村北斗を見つけた時に岩井俊二の世界にハマりそうだなと思っていたので、夏彦には期待していました。
繊細な演技がとても良かった。
切なくて苦しくて自分を責めて赦せなくて赦せなくて…
夏彦を誰かが、Kyrieが生きる歓びや赦す存在になってくれれば…と思いました。
あなたはそんなに大きい十字架を背負わなくていいよ。
広瀬すずはもう日本映画には欠かせない存在ですね。
ただの若手可愛い枠では絶対にない。
彼女の演技好きです。
コロコロ変わる姿が可愛くて、自由奔放に生きる振りをしているイッコが切なくて…
真緒里と路加があそこで出会えて良かった。
真緒里生きててほしい。
Kyrieのアイナジエンドもすごく良かったんですが、他の方も書いてた通り一人二役がちょっとしんどかったかな…
最後の夏彦が「もう1回顔を見せて」っていって泣いたの所のために両方やらせたのかな?って思ったんですがどうなんだろう?
正直キリエ(姉)は重すぎるしちょっと怖かった。
クリスチャンのキリエ家族もきっと夏彦に不気味に映ってしまったのではないかな。
地震の場面が結構長くてしんどくなる人は多いと思うので観れない人もいるかもしれないけれど、
歌声が素晴らしくて心が震える場面が多く、多くの人に共有したい映画だと思いました。
歌
による人との結びつきによる波乱の13年間。父親を早くに亡くしたけど、幸せな家庭に育っていたのに、震災が人生を大幅に変えてしまうが、歌が色んな人を呼び、生き方に大きな影響を与えてくれます。岩井監督の悪い場面でも何故か透明感を感じる映像が凄くらしさがある感がありました。
悲しい苦しいけれど音楽が包み込む
こんなにも残酷なほど悲しくて、けど温かさもあって色々な種類の涙が溢れて、心に響きすぎて体温が上がるような映画は初めてです。それぞれの時代やシーンを行ったり来たりして感情がかなり忙しいけれど、重たい場面のあとに音楽の描写があることで上手く調和されていてなんとか心が保てるような感じでした。むしろ感情が忙しく揺さぶられる続けることこそ一つの映像体験として心に刻まれるようで、編集の絶妙さに感服します。
生きていると色々な種類の苦しみや悲しみが人の数だけあって、けれどその重さは誰にもはかれなくて、真実は本人の中にしかなくて、どこまで行っても悲しくて辛くて苦しくて希望はないのかもしれない。登場人物に思い巡らせながら、それでもその絶望の先にあるものを見つめていくこと、生きていくということを考えさせられました。決してスッキリ腑に落ちるような映画ではないのだけど、観終わった後には、余白と余韻で整理がつかない混沌とした気持ちさえも心地よくて、簡単に言葉にしてしまうのも勿体無いような大事で大切なものが心にじんわりと残ってる、そんな映画です。
この映画、音楽とアイナさんの歌声がとにかく素晴らしい。
個人的には広瀬すずさん演じるイッコ(真緒里)が不思議な魅力のある人物でハマり役。キリエ(路花)とイッコ(真緒里)2人のシーンは、どのシーンもどこか儚くて、でも可愛らしくて魅力的で、音楽と同様にこの映画の醍醐味かなと思います。
夏彦を演じた松村北斗さんは、希と出会った頃の精神的な幼さや危うさ弱さも、罪悪感や後悔などを背負い続け葛藤し続けるさまも、彼の表情セリフ回し一つ一つに夏彦という人物が透けて見えてくるようで、人の弱い部分生々しい部分を繊細に演じられていて素晴らしかったです。特に異邦人のシーンは、あの表情だけで夏彦という人物が見えてきて、ある意味ものすごい衝撃が走りました。
それから路花を演じた矢山花さん、なんだかすごい子を発見してしまったような感覚。自然に溶け込むように物語の中に存在していて、歌も上手で、とてもナチュラルなお芝居。彼女演じる路花が、教会で目に涙を浮かべたシーンは忘れられません。
震災の描写は想像以上で被災者ではない自分でも相当なダメージで、思った以上にリアルできつい描写がずっしりと体に心に響いて残ります。それだけではなく色々な意味で1度観てしまったからこそ、2回目以降の方が観る覚悟がいる作品だと思います。けれどそのきつさ重たさなくしてはきっとこの物語は成立しなくて、それでも映画の余韻の中で「キリエ憐れみの讃歌」が全てを包み込んでくれるような気がしています。
岩井俊二の『青の時代』
Kyrieの歌声をずっと聴いていたい。
Kyrieの青いステージ衣装、イッコの淡い青のウィッグ、岩井俊二が青の時代に突入したのでは、と思うくらい青に彩られたショットはとにかく美しい。
パワフルなハスキーヴォイスに圧倒される北村有起哉の顔には笑ったな。演技じゃないよね、あの表情は。向かい合わせに座った席から、振動が伝わる声量で、魂から湧き上がってくる言葉をぶつけられたら、真剣に聞き入ってしまう。
アカペラのKyrieの歌声に聴き入った後は場面が変わり、村上虹郎が扮するギタリストが加わる。ギターを弾く村上虹郎が、また決まっている。キャップを後ろかぶりで、Kyrieをサポートする姿は、ビリー・アイリッシュの兄貴を彷彿とさせる。
ギターで音の厚みが増したところへ、ストリングスの深みのある音が加わり、トランペットの高音が重なる。そこにKyrieのハスキーヴォイスがオーバラップ。その過程をさりげなくシナリオを組み込むあたりが心にくい。
ほぼ3時間の長さなので、途中で眠くなってしまうのでは、なんてことは全くの杞憂でした。
オフコースの『さよなら』、久保田早紀の『異邦人』をKyrieがアカペラで何度も歌うんだけど、歌うたびに歌詞の内容にハッとさせられる。今まで、気がつかなかったのが不思議。
アイナ・ジ・エンドは、歌も演技もダンスもただものではない。全くの初見ですが、トリコになりました。
心の影を破天荒ない行動で覆い隠そうとするイッコ。破滅型の人間の心情をありありと見せてくれる広瀬すずも最高でございました。
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