「1回目の鑑賞ではカタルシスはなかった。2回見なくては!」キリエのうた masako_tsuchiyaさんの映画レビュー(感想・評価)
1回目の鑑賞ではカタルシスはなかった。2回見なくては!
個人的な妄想混じりの散文感想です。
頭の中を整理する意味でも書いて見たいと思います。
岩井作品はドラマも含めて全て見ていて待望の新作ということで見にきました。まだ頭の中で整理しきれてないのですか、なんですかね、この、映像からもらった感がないのは。情報量が多すぎて鑑賞中は処理しきれてなかった!
キリエ=切り絵、そしてクリスチャンということでステンドグラスを思い起こさせるのですが、キリエは人から光を当てられることで輝き魅力を発揮する存在なのだと思うと、なるほど最後は幼馴染、レコード会社の人間など誰かに光を当てられなくとも自ら輝き出す(声が大きくなる、一人でネカフェに泊まれる)ようになったっていう自立の話かと思うのですが、ただその一歩が小さすぎて分かりづらくて、、、。
「スワロウテイル」や「リリィシュシュのすべて」「マリア」「花とアリス」など各作品のテイストか合体したようなストーリーや設定が随所に見られ、特にカメラワークでは女の子二人のシーンでは故篠田昇さんを思わせる岩井美学をたくさん感じあぁ岩井さんの作品だなぁとしみじみ。
お話に関しては表題の通りで
広瀬すずさん演じるイッコは、結婚詐欺をしていたので感情移入は出来ず。ただ今思えばそれは結局、おばあちゃんから続く血は争えなかったと取るのか、自分の夢を奪い去ったかの男への復讐だったのか、、、。残念ながらそういった行動を起こすきっかけとなる悔しがるような感情を表すシーンが少なかったかな。なので結婚詐欺して恨まれて、、、。そりゃそうだしか感情が湧かなかったです。その分、夏彦が感情を露わにしていて、恋人を自分の夢を邪魔するものと思ってしまう自己嫌悪に苛まれる。この3人はある意味同じ境遇で本人達の知り得ないところで感情を共有しているのかも。
アイナさんの演技はよかったのです。ただキリエも感情が見えにくいストーリー設定なのでドライなんですよね。悲劇的なシーンにそれほど感傷的にならなかったかな。歌詞があまり入ってこなかったので(ここで感情を爆発させてた?)キリエの感情にも触れられず、、、。
そしてあの場面での武尊、要らなかったと思います。
七尾旅人は最高!
今回一人二役が二人。と言っていいと思いますが、主人公が誰かになり変わることで何かを変えて幸せの青い鳥を探して(途中に砂浜の鳥籠から飛び出した二人が描かれていましたね。)自己実現をするお話だとするとらさらにそこで、過去の名前を捨てたイッコと過去をひきづっているキリエという二人の対比で描いた狙いは素晴らしい。でも、だとしたら二人の関係値は平等であった方がより分かりやすかったような。同級生設定の「花とアリス」ではこの辺がうまくできていたと。
大人になっても姉の彼氏を慰めるシーンでは一人二役が素晴らしく生きた極めて映画的なシーンと思います。
ということで、過去に傷を受けた若者たち3人のその後の身の振り方の話しで、それぞれのどう向き合っていくのかという話というのが今の感想。
歌詞も理解しないとほんとのところお話も理解できないですね。
警察や法律、児童保護施設はほんとに人に寄り添っているの?っていうところ、岩井さんも違和感を感じていたのね。途中に出てくる人智を超えたものの恐ろしさをほんとに胸が締め付けられるくらいたっぷり描くのすごいけど怖い。