落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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裁判ってめっちゃ疲れるんだね
裁判ってめっちゃ疲れるんだなってことがよくわかる映画。長きにわたり法的紛争が続くが、勝訴しても特に何か達成感があるわけでもなく、得るものがない結末がとてもリアルだった。
あとワンコの演技がすごい。
フランス、冬のリゾート地グルノーブルの町から離れた雪山中にある山荘...
フランス、冬のリゾート地グルノーブルの町から離れた雪山中にある山荘。
暮らしているのは、ベストセラー作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)と教師で作家志望の夫、それに視覚障害のある11歳の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)。
あと、スヌープと名付けられた犬が一匹。
ある日、文学専攻の女子学生がサンドラを訪問、論文執筆のためのインタビューのためだ。
山荘の屋根裏部屋では改装作業中の夫が大音量で音楽を鳴らしはじめ、「いつものこと」とサンドラは気にしないが、インタビューは続けられない。
女子学生は帰り、ダニエルも犬を連れて散歩に出た。
ほどなくして、散歩を終えたダニエルは犬のただならぬ気配に怯え、近づいてみると、果たして転落した父親の姿が・・・
大声で助けを呼ぶと、サンドラが自室の窓から顔を出した。
昼寝をしていて気づかなかったという。
慌てて救急車を呼ぶが、すでに死亡していた。
警察がやって来、事件/事故の両面から捜査を開始する・・・
といったところからはじまる物語は、言ってみれば、2時間サスペンスなどでおなじみの導入部。
物的証拠はないが、殺人の可能性あり、状況的にはかなり疑わしい、ということでサンドラは起訴される。
まぁ、疑わしい状況でこいつが犯人!と決めつけるのは、日本映画『疑惑』を思い出しました。
で、裁判の行方がどうなるのかが焦点なのだが、大体予想は付くよねって感じで観ていました。
といっても、裁判でのやりとりはかなり面白い。
米国以上に、証人への検察側の質問に対して何度も何度も弁護士が反対意見を言い、またその逆もあるが、日本の法廷ドラマのように「意義あり」なんて言わない。
で、裁判では隠されていた秘密の事柄があきらかになり・・・と展開するわけですが、映画の焦点が事件の顛末から、親子の関係、夫婦の関係へと移されていくあたりが本作の見どころ。
終わってみれば、死んだ夫があまり好ましくない人物なのだが、こういうタイプはどこにでもいるわけで、そこいらあたりがフランス的ミステリという感じがします。
かなり面白かったです。
日が経つと、面白さが増幅される類の作品かもしれません。
主役のザンドラ・ヒュラー、ドイツ出身の女優さんのようですが、フランス語と英語を使い分け、どちらの台詞にも感情を乗せての見事な演技。
個人的には、アカデミー賞主演女優賞は、このひとへ贈りたいです。
映画が伝えたかった事とは無関係なのですが、欧米人は、裁判で自分の考えをハッキリ伝えることが出来るんだなと思って感銘を受けた。
疑惑を向けられた妻のサンドラが、裁判で検察官の追求にひるまずキチンと自分の意見を主張し述べる。
11才の息子ダニエルも例外ではない。証言台で自分の意見、考えをシッカリ述べ、検察官の問いにもキチンと答える。
「さすが欧米人、小さい頃からの教育のタマモノだな」と思った。
うろ覚えだが、ヨーロッパとアメリカでは小学校の頃から、授業で自分の考えをまとめ発表したり、議論、討論を行ったりするらしい。
だからサンドラとダニエルが自分の主張を堂々と述べ、検察官にも思ったことをシッカリ反論する場面に違和感がなかった。
以上、映画の主題とは関係ないけど、「さすが欧米人、自分の考えをシッカリ言えるんだな」というのがこの映画を見て1番印象に残ったという話でした。
あと、サンドラが無罪で良かったと思った。だってサンドラが刑務所入っちゃたらダニエル坊や可哀そ過ぎね?
広報が悪いのかな…
「あの日、あの場所で、いったい何があったのか?」
これが広告としてのアオリではなく見た人間の中に残る疑問になるなんて予想していなかった…
もしかしたら色んな瞬間に意味があったのかも知れないけど、やっぱりサスペンスだと思って最後の最後まで見ていたから、正直あの素晴らしい役者犬が主人公の隣に添い寝して、クレジットが出始めた時にえっっっ……と思ってしまった。
息子が視覚障害という設定も重要だと思ったから、現場検証のシーンで記憶に間違いがあった時、誰かがあの時テープを貼り替えていた?などと考えてワクワクしたが特にそういうわけでもなかった。
帰宅して50セントのPIMPを聴いたら、「音楽が一度止まってまた鳴り始めた」というのはPIMPインストバージョン自体の構成だった。
でも現場検証の時にずっと流してるはずだし気がつかないわけないよな?とも思うし。
とにかく、出て来る設定がことごとくあんまり活かされないまま気持ち悪いまま事態は終息を迎える。
しかしそれはある意味でリアル。映画の中で誰もが知り得ないことを、観客である私たちも知ることが出来ずに終わるだけ。
考えれば考えるほど湧いて来る違和感も、これは制作上の意図?あるいは天然でこんなことに?という不快感も、重要になりそうな設定が特に意味を帯びないリアルさも、
「そういう映画」だと思って見てみたらよく出来ているのかも知れない。
でもこれはチラシ見たら「ある男の不可解な死、その真実のカギを握るのは視覚障害のある息子ただ1人ーーー」という、東野圭吾的な最終的にパーッとスッキリ全部が解明されるサスペンスドラマだと思って見てしまうのもしょうがない…
「落下の解剖学」というタイトルもあんまりピンと来ない(原題直訳ですが)。
犬の演技は本当に凄かった。
夫婦とは(2024年8作目)
フランス映画らしい。
盛り上がりはなくて、あとはご自由にお考え下さい?的な?
結局主人公が黒なのか白なのか分からない。分からないけど皆が各自、自分が真実だと思うことを真実だと思って生きてくしかないのよね……。
これ男女逆だとさー、家の中で子供の世話だけしてる奥さんが浮気する旦那さんにあなたも少しは協力してよ!!!みたいに怒ってさ、旦那さんがウジウジうるせえ!なら稼いでみろや!って言ってさ、旦那さん感じ悪くない??でもよくあるパターンだね。って。
奥さんが稼いで旦那さんがウジウジしてるからなんか奥さんが可愛げ無いな、とか奥さんが浮気してるから奔放な女性だとか、そういう言われ方するけど、いや、実際にそうなんだけど、それとこれ(殺人を犯すか)は違うんだけど、そういう部分だけで見ると彼女黒なの……?みたいな。
夫婦喧嘩は犬も食わないってか?真実は神のみぞ?
結局どっちなの………
ワンコと息子さんの演技に感動。
息子さんのどっちか。選ばなければならないならママ。と決めた葛藤。辛いな
ちょっと期待外れ…
予告を観ておもしろそうだなと思っていたのとあらゆる映画賞の評価もあるので期待値が高かっただけに少し期待外れだった。
終わり方がもう一捻りあるのかと思っていた。
フランスの裁判の仕方などは単純に面白かったけれど証人として登場する人物が1人の人生を大きく左右する問題にも関わらず客観的証拠もなくそんな軽はずみに主観で話すのかと驚いた。
また、途中で夫婦喧嘩の様子が出てくるが妻(母の身でありながら)があまりにも自己中心的で妻や母としての自分よりも1人の人間としての自分を優先しすぎているし夫はあまりにも被害者意識が強すぎてどちらの主張も納得も共感もできなかった。
唯一11歳の息子が可哀想と思っていたが終盤の犬のくだりでこのクソガキ!という気持ちになってしまい登場人物の誰も好きになれない後味のあまりよくない映画だった。
「落下の解剖学」というタイトルにもっとフィーチャーした内容かと思えばそれもあまり…
主演のザンドラヒュラーの演技は良かった。
もやもやする
仮に夫の自殺であったとしても妻が殺していたとしても、結婚を継続することそのものの大変さを描いている様に感じました。脚本が作り込まれていてパルムドールも納得。
本当のことは誰にもわからない?から、もやもやしましたが、世の中なんてこんなことの連続ですね。家族関係含めて、推理小説より身近な人間関係の方が難しいわ。
152分を感じない
人里離れた山小屋で、作家の男性が転落した。
家には、妻と視覚障害の息子の3人だけ。
殺しか?事故か?はたまた自殺?
裁判になっていき
サスペンスになっていく。
嘘をついている?事実は?
なかなか面白い作品だった。
脚本が秀逸すぎる、、
つまらなく感じた私たちは、まんまと製作陣の思惑にハマっているのだろう。
本作はスクリーンを通り越して「私たちの感情の動きも含めて一つの作品になっている。」から。
作中で主人公サンドラが見ているTVの中の人たちが言ってくれています。
「彼女が(事実を元にした作品を書く)小説家だから、今回の事件が単なる自殺だとつまんないよね」って。それに加えて、視覚障害を持つ息子に夫婦の不仲。
この事件をドラマティックにする材料なんていくらでもある。なんならわざと観客がミスリーディングしてしまう要素をふんだんに詰め込んだハッピーセットのような作品だから。
要するに、これは「事実より自分達が解釈したいように事実を捻じ曲げる「私たち」に対するアンチテーゼ」であり、そのミスリーディングを楽しむ作品。それこそがこの作品の伝えたいこと。だから脚本賞を獲ったんだと思う。もう一回観たい。
事実はどうでもいい 人からどう思われるかが重要
タイトルは映画の序盤にあった弁護士のヴィンサン(スワンアルローさん)のセリフを引用させて頂きました。
(すいません、一言一句は覚えてなかったのでこんな様な事を言っていた、という感覚で捉えてくれると幸いです)
本作は、このレビューのタイトル通り真実を映すものではなくて、ヒロインのサンドラ(ザンドラヒュラーさん)への「印象の変化」を楽しむ映画だと思いました。
一つの事件を巡って起こる法廷ミステリーものと思っていましたが、
実際は精神的に少し余裕のない(どこの家庭にもありそうな、仕事、お金、子育て、性、不運な事故、等々の生活に多少の問題を抱えた) 2人の夫婦とその息子という、単純明快にはいかない人間関係の感情の機微や認識のズレから、軋轢、衝突、を夫の死という事件と法廷を建前にして、サスペンスモノに重点を置き、それらの人間模様を個々人の証言、会話、解釈から暴き、サンドラというより、人間なら誰しもが持っている人間の奥深くにある多面的で利己的な部分をうまい具合にあぶり出し、見事に描き切っている、非常に見応えのある面白い映画でした。
上記の様に推理モノではないため、いわゆる映画的などんでん返しや犯人の確定、犯行の瞬間などの決定的で客観的な事実が判明する事は無く、それぞの発言から憶測が飛び交い、真相は誰にも分からない作りになっています。
神的、第三者的視点が入っておらず、観客は検察側も弁護側も両者の証言と状況からでしか判断できないため、見てる側はただの観客に留まらず、娯楽性を求めるコメンテーターやテレビ番組、裁判の傍聴人、陪審員さながらサンドラへの印象が翻弄され、一気に映画の世界に引き摺り込まれる作品でした。
全体的に良かったのですが特筆すべきは、母親のサンドラとその息子ダニエル(ミロマシャドグラネールさん)の圧倒される演技では無いでしょうか。
夫に見せる狂気的な表情から一転、法廷から息子を不安気に見つめる表情まで見事に演じきっていました。
ダニエルも最後の証言の意思の強さを全面的に感じる凛とした顔、母親が無罪だと下された事を知った時の安堵の表情、もう脱帽です。最高です。
パンフにあった「対立はあれど、矛盾はない」という一言が言い得て妙でした。
どちらの言い分も分かる、本当に振り回されました。
喧嘩の音声のシーンで暴力シーンを映さなかったのは憎たらしいほど上手い演出でしたね。
この映画は明らかにミステリーでは無いため、ミステリーであるかの様な宣伝やあまりに主観的な証拠の言い合いへの批判は確かに否めません。
ただ個人的にはそれらより、家族の有り様のリアリティーや会話や設定で十分楽しめたので、高評価という軍配を上げさせて頂きました。
公開から一週間以上も経過していて、恐らくこの映画を高評価している方達と同じ様な感想だと思い、今更レビューするのもどうかと思ったのですが、評価が意外にも低いので堪らずレビューをあげさせて頂きました。
最後にこの映画を表したかの様なニーチェの文言がありましたので、その言葉で締めさせていただきます。
事実というものは存在しない。
存在するのは解釈だけである。
面白いかなぁ?
3人家族の父が転落死した。自殺か事故か他殺かと云う話。
映画を見たと云うより、こう云う事件の裁判を淡々と見せられている感じです。劇伴も削るだけ削って、非常に見づらい。面白いとは思えなかった。普通にお母親が殺したとしか思えなかった。息子とか母親もだけど、途中で思い出すことが多い。
きっと元々家族として成立していなかったんだと思う。
弁護士と距離すごく近いんだけど、なんで?混乱する伏線で特に意味はないので、疑問だった。
スミテリー期待しすぎたなと思いました。
あと犬が可哀想。
映画的でない法廷もの
いわゆる法廷もの。映画としてどうやって面白いショットを作るのか難しいジャンルだが、この映画は成功はしていない。
映画ではなく演劇を観ている気持ちになる。俳優に頼り切りでショットの楽しさがまるでない。
とって付けたように自動車の中、運転席からの曲がりくねった道など映画的ショットが差し挟まれるが、そんなものでは貧しいショットを補間しきれない。
脚本もキャスティングもよいが、残念ながら映画としての魅力には欠ける。
結局のところ、自殺なのか事故なのか妻が殺害したのかという真相は明らかにされないが、裁判では息子の証言によって自殺だろうということで妻は無罪となる。
まず事故の可能性だが、室内に断熱材を貼り付ける作業をしていたのに誤って胸より高い位置にある窓から落ちることはありえない。事故の可能性は映画の中でも問題外とされていた。
そして自殺の可能性。何度も屋根裏部屋から地面を見たショットを繰り返すのは「あの高さで自殺は無理」だと誰にでも分かるように説明するため。普通に考えて自殺はありえない。頭を納屋にぶつけるように計算して落下することは不可能。
やはり妻による殺害しか考えられないのだが、最愛の飼い犬を危険にさらしてまでねつ造した息子の計算高いウソにより、辛うじて無罪となった。というのが真相だろう。しかし演出的には妻の殺害を匂わすショットはまったく見せない。これはなかなかよかったのでは。
フランスの裁判風景が楽しめる本格サスペンス
本格的なサスペンスを久しぶりに見ましたが、しっかりとした論理展開で飽きが来ず楽しめました。
ただ、ずっと考え続けることになるので、仕事上がりに見るにはかなり疲れる映画でした。
映画としてはまず、アルプス近くの雪山の山荘の風景が美しかったです。こんないいところ私も住んでみたい…。英語とフランス語が切り替わるので最初カナダかな、と思っていましたが、フランスと知ってからはああ、アルプスなんだ、と納得しました。
そう意識するとワインを飲んだり、雪道を散歩したり、最後の犬が寄り添ってくれたり、出てくるシーンがどれもオシャレに感じられます。
向こうだと英語が共通言語なんですね。主人公の1人であるサンドラはドイツ人ですが、弁護士が英語も良いけどなるべくフランス語で話して、と忠告していましたが、英語でなくドイツ語だったらもっと激しい非難が来るだろうなと感じました。
古い話ですが、昔旅行した際にはドイツのカフェにフランス語のメニューがなく、フランスのカフェにドイツ語のメニューがなく、どちらにも英語とトルコ語が書いてあって失笑した記憶があります。
落下の解剖学、というタイトル通り、夫サミュエルの落下から事件が始まるのですが、これは夫婦関係の悪化、人気作家としての失墜、サンドラの人間性の見え方など、色々な意味にとれますね。
映画のもう一つの核心である裁判について、事件そのものとは別に掘り下げられる背景が興味深かったです。自殺か他殺かという点が焦点となっていますが、物的証拠が無いため検察側も弁護側も印象操作で争う形となっています。
録音やサンドラの普段の様子からするとどうしても悪く見えてしまい、さらに夫を自殺へと追い込んでしまった様に感じるように見せています。しかし、それは事件そのものとは関係がないということを弁護側が必死に押し返すところが本当に面白かったです。
裁判自体ではありませんが、フランスの裁判所の風景も楽しめました。
検察と弁護士がそれぞれ赤い服と黒い服の伝統衣装で着飾るのがまず面白いですね。伝統的な部分を残しつつ、傍聴人含めて翻訳が入ったり、息子のダニエル君に裁判の内容がショックになるが、傍聴しない方がいいと裁判官が勧めるシーンなど、人権先進国だなというのが見て取れて感心しました。傍聴席もヨーロピアンからアジアン、アフリカンなど人種が入り乱れており、実際のフランスっぽさがありました。
また、検察側が情動に訴えかけているのがフランス的ですね。人間に情動があって当たり前、という雰囲気もまた面白かったです。
この映画で最も面白いのは主役がサンドラでも弁護人のヴァンサンでもなく、息子のダニエル君だというところです。
母親と弁護人中心に進んでいきますが、最後に息子が証言するシーンで裁判も物語も終結に向かう、というところが物語の構造上、本当に面白かったです。
ダニエル君のシーンがたびたび出てきて印象付けているなと思いましたが、息子と父親との絆が逆に息子へ残酷な真実を伝えることになったというところが、悲劇的でしんみりしました。
ダニエル君は裁判官が傍聴の取り下げを勧めるシーンでも「ネットやテレビで知ることになるから同じだ」と応えており、もともとかなりしっかりした子でした。
しかし、保護人のベルジェの発言を自分のものにしたり、ある出来事の検証をしたり、最後に自分の考えと自分の意見を述べるにあたって、映画の最後に向かうにつれて成長したように感じられました。
やはり本当の主役はダニエル君なのでは?と思ってしまいます。
少し長めですが、とてもいい映画でした。
鑑賞動機:あらすじ5割、カンヌ5割
殺ったのか、殺ってないのか、明言はされてないということですよね。提示されていることからは、どちらともとれるのと、過去の映像は実際にあったことではなくては、主張していること/想像できることを映像化した、だけなのはすぐわかるけど。
余白が多いというか、複数の解釈ができる行間を補いながら観る感じが強い。夫婦間のむき出しの愛憎を見せられるのは、やっぱり疲れる。
淡々としてますが、中身はかなり深い。
フランスの雪山の山荘で、暮らす家族夫サミエル、妻サンドラ、息子ダニエル、愛犬スヌープ。小説家のサンドラは学生からのインタビューを受けている。ところが、突然サミエルがインタビューの邪魔をするかのように、大音量で音楽を流します。インタビューは中止となります。ダニエルが愛犬スヌープを連れて散歩にでます。家に戻るとサミエルが3階から落下して死亡しているところを発見します。事故、事件、もしくは自殺なのか。第一発見者のダニエルは視覚障害というハンディを背負っています。解剖の結果、致命傷は頭を打ったこととなり、生前に腕に怪我をしていることがわかります。妻サンドラが容疑者となり裁判へ展開されていきます。夫婦関係、妻サンドラの素行が裁判で明らかとなります。この展開で妻サンドラは責めるべきなのか同情すべきなのか鑑賞者は困惑すると思います。演技もさることながら、従来の夫婦間のイザコザが逆転しているからです。子育てに協力せず、仕事に没頭して浮気もしている。従来であればそれは男性の設定です。しかし、本作は女性となっているからです。家族を顧みない、浮気する夫が死亡して、その妻が容疑者となっていたら同情という展開となりお涙頂戴の作品となります。これを逆転したことで、鑑賞者は何が真相なのか迷い込んでしまいます。事実の積み上げがされる中、真実をどこに見出すか。これもこの映画のテーマのような気もしました。リアリティがあり過ぎで好みの別れる作品と思います。
スヌープ
カンヌで高評価を得てアカデミー賞に殴り込んで来た期待の作品、朝イチ目をこすりながら観に行きましたがかなり混んでて前目の席での鑑賞に。でもミニシアターは前でも観やすいのが良いなと改めて思った次第です。
ミステリーがメインなのかなと思っていましたが、基本は法廷劇がメインで、そこに家族の物語が加えられているという構成で、思っていたのとは違いましたがすぐに頭を切り替えて観れましたが、それでも会話劇メインで進展があまり無いのは退屈だなと思ってしまいました。
突然自殺してしまった父親を見つけた息子と母親、母親に殺人の容疑がかけられ、裁判に向かう…といった感じの作品です。
法廷劇は思っていたよりも弁護・検事共に自由に動き回っていたので、フランスだとこういう感じなのかなと思いましたが、なんだか高度なレスバトルだなぁとSNS社会に生きる人間な感想がポロッと出てきました。
主題には添いつつも、お前は同性愛だーとか小説はこういう暗示をしているんだーとか結構めちゃくちゃ言い合ってて、でもそれが下品には見えなかったので、頭の良い人たちは言葉の選び方も上手いんやろなーと思いました(小並感)。
観客の視点は完全に傍聴員みたいな感じで、現場で一緒に裁判を聞いてるみたいな感覚になる体験型になっていたのはちょっと面白かったです。カメラワークがぎゅっと一人の人物に寄るのとかまさにそれだなと思いました。
父親の視点の方に寄って観ていたので、どうしても奥さんの行動にも身勝手なところがあるし、被害者ヅラしすぎじゃないか?とかなり疑いながら観ていました。
奥さん全く自分に非がないとアピールしているのもかなり嫌で、なんとかして奥さん有罪になってくれと思ってしまうくらいにはUSBの音声で印象がガラッと変わってしまいました。
それもあって裁判の決着は奥さんの勝利という形になってしまったのもなんだかなぁとモヤモヤしてしまいました。
息子がかなり怖い行動をしているのが一番印象に残っており、父親が苦しんでる理由は薬なんじゃと思ってワンコに飲ませるシーンはゾゾっとしました。子供ながらの探究心が故にやってしまった事とはいえ、実際に死ぬ間際までワンコがなっていたのを見ると、この子も判断力に相当問題があるのでは…と育てる環境で考えも色々変わるんだなと思いました。
今作の中で手放しに褒めちぎりたいのはスヌープを演じたワンコで、表情が豊かで苦しそうにしてるところなんかリアルすぎて胸が痛みました。今まで観てきた俳優ワンコの中でもピカイチのワンコでした。この子に助演賞をあげてやってください。
ワンコ以外はよくあるフランス映画に法廷劇を加えた感じなので、すごい映画なんだろうなとは思いつつ自分には合わなかったなぁという感じの作品でした。俳優陣がアカデミー賞を取るのは理解できるんですが、作品がそういう賞を取れるポテンシャルがあるかどうか…これはアカデミーの審査員たちに委ねるしかありません。
鑑賞日 2/29
鑑賞時間 9:35〜12:15
座席 B-2
子供には
裁判の現場は辛いですよね。しかも、自分の親同士が原告と被告だと、何も良い面は無いですからね。でも、最後に自分の意思を自分の言葉で発言したのは偉いですね。大人でも中々できないでしょう。
2時間半緊張感が絶えない優れた法廷劇。母は父を殺したのか、それと...
2時間半緊張感が絶えない優れた法廷劇。母は父を殺したのか、それとも父は自殺したのか…「誰を信じるか」というよりは、「どちらの現実を受け入れるか」という選択の問題であるように思える。それは被告とされたヒロインの息子だけでなく、裁判自体にも、そして最後まで「真相」が明示されることないこの映画を見る我々にも当てはまる。犬の使い方がとても上手い…というか犬の演技が上手い。主演犬優賞があれば与えてあげたいほど。
サスペンスではない
犯人は誰か?を追求するサスペンスではなく、あくまでヒューマンドラマでした。
夫殺しの嫌疑をかけられた妻の裁判が進むにつれて、破綻していた夫婦関係がじわじわと明るみに。
どちらが善か悪か、ではなく、夫も妻もそれぞれ言い分があるよね、というのがリアルでした。
グレーな人間模様をぐじぐじ掘り返していくこの感じ、是枝裕和監督の作風に通じるものがあり。
いかにも、カンヌが好みそう。
(わたしも好き)
主人公は訛りのある英語と仏語を話しますが、後半その設定の理由がわかり、なるほどと思いました。
こういう設定はヨーロッパ映画ならではで、面白い。
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