落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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映画的でない法廷もの
いわゆる法廷もの。映画としてどうやって面白いショットを作るのか難しいジャンルだが、この映画は成功はしていない。
映画ではなく演劇を観ている気持ちになる。俳優に頼り切りでショットの楽しさがまるでない。
とって付けたように自動車の中、運転席からの曲がりくねった道など映画的ショットが差し挟まれるが、そんなものでは貧しいショットを補間しきれない。
脚本もキャスティングもよいが、残念ながら映画としての魅力には欠ける。
結局のところ、自殺なのか事故なのか妻が殺害したのかという真相は明らかにされないが、裁判では息子の証言によって自殺だろうということで妻は無罪となる。
まず事故の可能性だが、室内に断熱材を貼り付ける作業をしていたのに誤って胸より高い位置にある窓から落ちることはありえない。事故の可能性は映画の中でも問題外とされていた。
そして自殺の可能性。何度も屋根裏部屋から地面を見たショットを繰り返すのは「あの高さで自殺は無理」だと誰にでも分かるように説明するため。普通に考えて自殺はありえない。頭を納屋にぶつけるように計算して落下することは不可能。
やはり妻による殺害しか考えられないのだが、最愛の飼い犬を危険にさらしてまでねつ造した息子の計算高いウソにより、辛うじて無罪となった。というのが真相だろう。しかし演出的には妻の殺害を匂わすショットはまったく見せない。これはなかなかよかったのでは。
フランスの裁判風景が楽しめる本格サスペンス
本格的なサスペンスを久しぶりに見ましたが、しっかりとした論理展開で飽きが来ず楽しめました。
ただ、ずっと考え続けることになるので、仕事上がりに見るにはかなり疲れる映画でした。
映画としてはまず、アルプス近くの雪山の山荘の風景が美しかったです。こんないいところ私も住んでみたい…。英語とフランス語が切り替わるので最初カナダかな、と思っていましたが、フランスと知ってからはああ、アルプスなんだ、と納得しました。
そう意識するとワインを飲んだり、雪道を散歩したり、最後の犬が寄り添ってくれたり、出てくるシーンがどれもオシャレに感じられます。
向こうだと英語が共通言語なんですね。主人公の1人であるサンドラはドイツ人ですが、弁護士が英語も良いけどなるべくフランス語で話して、と忠告していましたが、英語でなくドイツ語だったらもっと激しい非難が来るだろうなと感じました。
古い話ですが、昔旅行した際にはドイツのカフェにフランス語のメニューがなく、フランスのカフェにドイツ語のメニューがなく、どちらにも英語とトルコ語が書いてあって失笑した記憶があります。
落下の解剖学、というタイトル通り、夫サミュエルの落下から事件が始まるのですが、これは夫婦関係の悪化、人気作家としての失墜、サンドラの人間性の見え方など、色々な意味にとれますね。
映画のもう一つの核心である裁判について、事件そのものとは別に掘り下げられる背景が興味深かったです。自殺か他殺かという点が焦点となっていますが、物的証拠が無いため検察側も弁護側も印象操作で争う形となっています。
録音やサンドラの普段の様子からするとどうしても悪く見えてしまい、さらに夫を自殺へと追い込んでしまった様に感じるように見せています。しかし、それは事件そのものとは関係がないということを弁護側が必死に押し返すところが本当に面白かったです。
裁判自体ではありませんが、フランスの裁判所の風景も楽しめました。
検察と弁護士がそれぞれ赤い服と黒い服の伝統衣装で着飾るのがまず面白いですね。伝統的な部分を残しつつ、傍聴人含めて翻訳が入ったり、息子のダニエル君に裁判の内容がショックになるが、傍聴しない方がいいと裁判官が勧めるシーンなど、人権先進国だなというのが見て取れて感心しました。傍聴席もヨーロピアンからアジアン、アフリカンなど人種が入り乱れており、実際のフランスっぽさがありました。
また、検察側が情動に訴えかけているのがフランス的ですね。人間に情動があって当たり前、という雰囲気もまた面白かったです。
この映画で最も面白いのは主役がサンドラでも弁護人のヴァンサンでもなく、息子のダニエル君だというところです。
母親と弁護人中心に進んでいきますが、最後に息子が証言するシーンで裁判も物語も終結に向かう、というところが物語の構造上、本当に面白かったです。
ダニエル君のシーンがたびたび出てきて印象付けているなと思いましたが、息子と父親との絆が逆に息子へ残酷な真実を伝えることになったというところが、悲劇的でしんみりしました。
ダニエル君は裁判官が傍聴の取り下げを勧めるシーンでも「ネットやテレビで知ることになるから同じだ」と応えており、もともとかなりしっかりした子でした。
しかし、保護人のベルジェの発言を自分のものにしたり、ある出来事の検証をしたり、最後に自分の考えと自分の意見を述べるにあたって、映画の最後に向かうにつれて成長したように感じられました。
やはり本当の主役はダニエル君なのでは?と思ってしまいます。
少し長めですが、とてもいい映画でした。
鑑賞動機:あらすじ5割、カンヌ5割
殺ったのか、殺ってないのか、明言はされてないということですよね。提示されていることからは、どちらともとれるのと、過去の映像は実際にあったことではなくては、主張していること/想像できることを映像化した、だけなのはすぐわかるけど。
余白が多いというか、複数の解釈ができる行間を補いながら観る感じが強い。夫婦間のむき出しの愛憎を見せられるのは、やっぱり疲れる。
淡々としてますが、中身はかなり深い。
フランスの雪山の山荘で、暮らす家族夫サミエル、妻サンドラ、息子ダニエル、愛犬スヌープ。小説家のサンドラは学生からのインタビューを受けている。ところが、突然サミエルがインタビューの邪魔をするかのように、大音量で音楽を流します。インタビューは中止となります。ダニエルが愛犬スヌープを連れて散歩にでます。家に戻るとサミエルが3階から落下して死亡しているところを発見します。事故、事件、もしくは自殺なのか。第一発見者のダニエルは視覚障害というハンディを背負っています。解剖の結果、致命傷は頭を打ったこととなり、生前に腕に怪我をしていることがわかります。妻サンドラが容疑者となり裁判へ展開されていきます。夫婦関係、妻サンドラの素行が裁判で明らかとなります。この展開で妻サンドラは責めるべきなのか同情すべきなのか鑑賞者は困惑すると思います。演技もさることながら、従来の夫婦間のイザコザが逆転しているからです。子育てに協力せず、仕事に没頭して浮気もしている。従来であればそれは男性の設定です。しかし、本作は女性となっているからです。家族を顧みない、浮気する夫が死亡して、その妻が容疑者となっていたら同情という展開となりお涙頂戴の作品となります。これを逆転したことで、鑑賞者は何が真相なのか迷い込んでしまいます。事実の積み上げがされる中、真実をどこに見出すか。これもこの映画のテーマのような気もしました。リアリティがあり過ぎで好みの別れる作品と思います。
スヌープ
カンヌで高評価を得てアカデミー賞に殴り込んで来た期待の作品、朝イチ目をこすりながら観に行きましたがかなり混んでて前目の席での鑑賞に。でもミニシアターは前でも観やすいのが良いなと改めて思った次第です。
ミステリーがメインなのかなと思っていましたが、基本は法廷劇がメインで、そこに家族の物語が加えられているという構成で、思っていたのとは違いましたがすぐに頭を切り替えて観れましたが、それでも会話劇メインで進展があまり無いのは退屈だなと思ってしまいました。
突然自殺してしまった父親を見つけた息子と母親、母親に殺人の容疑がかけられ、裁判に向かう…といった感じの作品です。
法廷劇は思っていたよりも弁護・検事共に自由に動き回っていたので、フランスだとこういう感じなのかなと思いましたが、なんだか高度なレスバトルだなぁとSNS社会に生きる人間な感想がポロッと出てきました。
主題には添いつつも、お前は同性愛だーとか小説はこういう暗示をしているんだーとか結構めちゃくちゃ言い合ってて、でもそれが下品には見えなかったので、頭の良い人たちは言葉の選び方も上手いんやろなーと思いました(小並感)。
観客の視点は完全に傍聴員みたいな感じで、現場で一緒に裁判を聞いてるみたいな感覚になる体験型になっていたのはちょっと面白かったです。カメラワークがぎゅっと一人の人物に寄るのとかまさにそれだなと思いました。
父親の視点の方に寄って観ていたので、どうしても奥さんの行動にも身勝手なところがあるし、被害者ヅラしすぎじゃないか?とかなり疑いながら観ていました。
奥さん全く自分に非がないとアピールしているのもかなり嫌で、なんとかして奥さん有罪になってくれと思ってしまうくらいにはUSBの音声で印象がガラッと変わってしまいました。
それもあって裁判の決着は奥さんの勝利という形になってしまったのもなんだかなぁとモヤモヤしてしまいました。
息子がかなり怖い行動をしているのが一番印象に残っており、父親が苦しんでる理由は薬なんじゃと思ってワンコに飲ませるシーンはゾゾっとしました。子供ながらの探究心が故にやってしまった事とはいえ、実際に死ぬ間際までワンコがなっていたのを見ると、この子も判断力に相当問題があるのでは…と育てる環境で考えも色々変わるんだなと思いました。
今作の中で手放しに褒めちぎりたいのはスヌープを演じたワンコで、表情が豊かで苦しそうにしてるところなんかリアルすぎて胸が痛みました。今まで観てきた俳優ワンコの中でもピカイチのワンコでした。この子に助演賞をあげてやってください。
ワンコ以外はよくあるフランス映画に法廷劇を加えた感じなので、すごい映画なんだろうなとは思いつつ自分には合わなかったなぁという感じの作品でした。俳優陣がアカデミー賞を取るのは理解できるんですが、作品がそういう賞を取れるポテンシャルがあるかどうか…これはアカデミーの審査員たちに委ねるしかありません。
鑑賞日 2/29
鑑賞時間 9:35〜12:15
座席 B-2
子供には
裁判の現場は辛いですよね。しかも、自分の親同士が原告と被告だと、何も良い面は無いですからね。でも、最後に自分の意思を自分の言葉で発言したのは偉いですね。大人でも中々できないでしょう。
2時間半緊張感が絶えない優れた法廷劇。母は父を殺したのか、それと...
2時間半緊張感が絶えない優れた法廷劇。母は父を殺したのか、それとも父は自殺したのか…「誰を信じるか」というよりは、「どちらの現実を受け入れるか」という選択の問題であるように思える。それは被告とされたヒロインの息子だけでなく、裁判自体にも、そして最後まで「真相」が明示されることないこの映画を見る我々にも当てはまる。犬の使い方がとても上手い…というか犬の演技が上手い。主演犬優賞があれば与えてあげたいほど。
サスペンスではない
犯人は誰か?を追求するサスペンスではなく、あくまでヒューマンドラマでした。
夫殺しの嫌疑をかけられた妻の裁判が進むにつれて、破綻していた夫婦関係がじわじわと明るみに。
どちらが善か悪か、ではなく、夫も妻もそれぞれ言い分があるよね、というのがリアルでした。
グレーな人間模様をぐじぐじ掘り返していくこの感じ、是枝裕和監督の作風に通じるものがあり。
いかにも、カンヌが好みそう。
(わたしも好き)
主人公は訛りのある英語と仏語を話しますが、後半その設定の理由がわかり、なるほどと思いました。
こういう設定はヨーロッパ映画ならではで、面白い。
殺された理由
50CENT
真実は見えていたのか?
前情報なしで「ちょっと席埋まってるぞ」ってことで
観ました。
150分の裁判劇。
事件→え起訴される→裁判→証拠は?→待って息子→判決
観客は決定的証拠も見えない。
私は殺していないはず。
母は殺していないはず。
夫は死にたかったはず。
あえて見せない映画。
後半から少しずつ、見えてくる証拠。
イライラする自称デキる検事。
私たちは完全に傍聴者でした。
マリッジストーリー
最後まで緊張感のある映画。
脚本の構成力、物事を多角的に
捉える細かな演技とセリフが何重にも
重なりあう。
目の見えないダニエルが傍聴席
で聞く姿。切ないが子供ながら大人であった。
彼が主人公に感じた。
法廷内での想像の世界のブーメランの
投げ合いは長いが、異様な説得力
のある演出。
スヌープ役のメッシ君。
2ケ月の訓練で体得。賢いし可愛い。
スワン・アルローも格好良い。
所々で出てくる写真が昔はこうだった
気持ちの変化の見せ方も上手。
夫婦の話し合いと言い争いはマリッジストーリーを思い出した。あの時も息子さんだったなぁ。
時間が経つと色々変化するよね。
巧妙な人間心理をつく法廷劇の映画でした。
余韻が残るが主人公に共感できない点もあり
物理学を駆使したミステリー映画だと思い込んで観賞しましたが、会話劇が中心でドキュメンタリータッチの映画でした。
序盤から眠気が襲い、字幕を追うのに精一杯でした。
ダニエルの父親が自殺なのか、サンドラによる他殺なのかが焦点になってきますが、決定的な証拠がないため、母と子の絆の強さを訴える物語になっていると感じました。
ただ、サンドラもダニエルも裁判で虚偽の証言をしたりと、のらりくらりとしていて裁判に真摯に向きあっているのか疑問に残るところもありました。
サンドラについては、過去に何人かと浮気をしていて、父親は精神科に通い苦悩の日々を送っていたことを考えるとサンドラに共感しにくい点もありました。
個人的には父親の自殺と推測します。
実際観賞してみてエンタメ性はないので、上映館が少ないのが何となく分かります。
作家の細胞膜
思っていたよりかなりシンプルで、意外と分かり易かった。
基本的には裁判を追うかたちで話は進み、そこで明かされる真実や論理によって真相を想像してゆく。
登場人物主観での回想やモノローグなどはほぼない。
時折カメラが左右に振れたり、あからさまなズームがかかったりする。
このあたりから、観客を傍聴人や参審員の立場に置かせようという意図が汲み取れる。
粗筋から、真実は明らかにならないだろうと予測していたので、そこは構わない。
しかし、出てくる情報に意外性はなく、ありがちな夫婦像に終始しているのは残念だった。
(そこがリアルと受け取れないこともないけど)
確たる証拠は出ないため、結論は「疑わしきは罰せず」というところか。
サンドラは本当に無実であると感じたが、受け止め方は人それぞれ。
虚実入り混じったサンドラの小説のように、見てきた中にハッキリとした膜はない。
個人的にはダニエルの賢さや強さ、その中に確かに残る子供らしさは印象に残った。
一つでも驚きの展開や意外な真実があればまったく違ったと思う。
後半は事件そっちのけで心象面の話しかしてなかったし、尺の割に内容が薄かったかな。
裁判で追い詰められたい人向け
嫁に殺されたかのように自殺したんだよ。
もう間違いねえよ。
ファイナルアンサー。
普段から喧嘩ふっかけてこいつ俺のこと殺したそうやろ?って証拠撮っといて、当日は取材邪魔してやれば激おこでくるだろうと踏んだのに意外や寝ちまって自殺直前の喧嘩音声撮れなかったけど、息子が戻ってくる前に死なんと「家に嫁しかいなかった」状況作れんから「いいわ今死んだれ!」つって死んだんよ。
間違いねえわ。
何で裁判で誰もその説上がらんねん想像力も投身したんかって思ったけどいやまさか答え合わせないとはビックリだ。色んな人の考察読みたくなるじゃねえの。おもしれー映画。
最後にお話ししたいって息子が言い出したところとか胃が痛いやら心臓がぎゅうぎゅうするやら、一緒に追い詰められました。素晴らしい脚本、構成だと思います。
ところでアスピリン8~10錠は飲ませ過ぎィ!よく朝吐けたな!よく蘇生したな!
顔見てスタッフホントに殺したのか?と疑ったがな。犬が優秀すぎる。オスカーに動物部門作ったげて。
夫婦のことは2人だけにしか理解できないことがたくさんあるし、どちら...
夫婦のことは2人だけにしか理解できないことがたくさんあるし、どちらが悪いと一方的に決めつけられない。だが事件となると、白黒ハッキリさせる必要があって、争いに巻き込まれた子供が決断を迫られるという状況は、大変酷だ。息を呑む夫婦喧嘩のシーンは『マリッジ・ストーリー』のそれを彷彿とさせ、胸が熱くなった。
我々「羅生門」の千秋実
間もなく始まる、世間注目、あの裁判の予告編の様な。あの法廷でも、主観的だの客観的だのが飛び回るんでは。それと、あの、原作と脚本の問題もありましたね。めっちゃタイムリーな作品でした。夫婦喧嘩のシーン、圧巻でした。鳥肌立ちました。しかし、ラストの、「ママが帰ってくるのは怖い」
このセリフ気になります。
けっこう面白い
旦那さんがかわいそうで見ていられない。小説家になりたくて相当な苦しみようで、しかし彼には何が何でも完成させると言う気概がない。それで奥さんに当たり散らしてもどうしようもないし、奥さんも困る。家事の分担で文句を言うがそれはあきらめるしかなく、それができなかったら別れるべきだ。内装工事をしている余裕があるなら小説を書けばいい。奥さんの稼ぎで食わせてもらって書くべきだ。それができないから死んでしまったのだろう。『シャイニング』のジャック・ニコルソンは書けなくて殺人鬼になったと解釈しているのだけど、彼は自殺した。
子どもの失明は本当に考えられないほどつらい。結局のところ、意味もなく殺人の容疑を掛けられた奥さんもつらい。判決が出た後、不穏な場面がだらだらと続いてやっぱり奥さんが犯人だった、みたいなオチがあるのかとハラハラした。
誰かが言ってたよ相手より幸せになっちゃいけないって
20時過ぎの上映が近場になかったので錦糸町まで遠征したのだが、後ろの外国人カップルが終始喋ってるわ椅子蹴るわで上映前注意理解できてないんだなってなりましたね。うしろ見てシー🤫ってしてもずっと喋ってやがるし…マジでこいつら国に帰ればいいのにと思いましたとさ。
さて本題。売れっ子小説家と小説家志望の旦那、彼が目を話した隙に事故に遭い弱視になってしまった息子、そして愛犬(重要)。山荘の窓から落ちて無くなった旦那に対して夫婦間に問題を抱えていた売れっ子作家に嫌疑がかかり、マスコミが騒ぎ、イケメンの弁護士がサポートするわけなんですが、お互いがお互いに不満が溜まって旦那が亡くなる前夜の夫婦喧嘩の録音が法廷で再現されるくらいからめちゃくちゃ面白くなるからそれまでなんとか我慢して欲しいです。
表題に書いたことが全てで、夫婦間って相手より幸せになっちゃダメなんですよね。これって結婚ってシステムが抱えてる最大のジレンマで結婚しない人が増えてる原因のひとつだと思ってて…お互いが好きなことやってどっちも幸せなら良いんだけど、どちらかが我慢してると最悪の場合は人の生き死にに関わる事件が起こるよ、という警告がこの映画なのかなと。
ご結婚してる方、長い間付き合ってる方、思い出して!写真って恋愛が盛り上がってる時しか撮らないですよね?トップカットにその頃の写真を使ってるのがこの映画の謎解きのポイントです。時々インサートされながら弱視の息子さんが証言前に見ているのもその写真です。
実質画面に映ってる時間は短いけど、父の名誉を守り、母を法廷から救い出し、自分と愛犬の人生の安定を掴み取った息子くんの心の葛藤を描きたかったのかなと思ってしまいました。母親の息子への愛がわりと上っ面に見えたのはカメラワークと脚本に対する深読みかもしれないですけど。自分もわりと毒親に育てられたので…。
なんかこれって結局芥川龍之介の藪の中的展開なんですけど、会話劇だけでここまで面白くできる「映画」って本当にすごいなって思わされた1本でしたね。なくならないで欲しい人類の文化です。
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