落下の解剖学のレビュー・感想・評価
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謎解きではなかった
冒頭からカメラワークと音楽に引き込まれました。緊張感を持って、謎解きのつもりでずーっと観ていたから、エンドロールに「あれ?」となりました。
なんだったんだろう、真実はどこ?と疑問符のまま終了。うーん、最後にスッキリ解決すると思ってた私が違ってたのかな。
サンドラとイケオジ弁護士がどうも怪しく描かれていて、特に夜で寒い中、外で煙草を吸いながら話す二人の顔にあたる照明が不穏でした。
後半にダニエルが法廷で話すというので、解決への期待感が高まったものの、状況証拠なく肩透かしな内容。それにしても犬の扱い、大丈夫なの?演技なの?とドキドキしました。ダニエルの付き添いの女性が冷静で頼りになって良かった。
真実は解明せずのミステリー、長丁場を飽きさせずに見せてくれました。
非常にモヤる。結末に疑問?最大の弱点はカタルシス不足。
映画鑑賞を120%楽しみたいので事前情報収集はゼロ、レビューも一切確認せずに映画を見に行くのでハズレに出くわすこともよくあるワタクシ。
これは大ハズレでした。
フランス料理のフルコースを楽しみでお店に行ったら、全く口に合わず美味しくなかった、みたいな感じで期待を大きく裏切られました。
後で監督のインタビュー読んだらMeTooへの共感やらウンタラカンタラ語ってたけど、
あ、フランスのインテリの人ね、だから駄作なのかと僕は納得しましたね。
フランス人哲学者は小難しい理屈をこねるけど結局が大したことは言っていないことが多い。
これはソーカル事件で歴史が証明している事実です。
さながらフランス哲学の悪い面が映画になったかのような出来の悪さを感じました。
この映画の1番の欠点はオチがなくカタルシスに欠けることですね。
この手のサスペンス物ってどうしてもメタ的に誰が犯人だったら意外性が高く面白いかとか考えたり動機を推理したり犯人探しが楽しみじゃないですか?
しかしこの映画は早々に母親犯人説一本に絞り込みサスペンス的楽しみを否定します。
また見所である法廷劇ですが、
私に言わせればここが一番陳腐でした。
検察は母親が父親を殺害した嫌疑で烈しく追究しますが、肝心の殺害に使われた凶器が特定出来ていない時点で不首尾に終わるのは目に見えてました。フランスの司法がわかりませんが、物証無く犯人の自白待ち頼りでは、いくら状況証拠固めても犯人が鉄面皮で自白しない限り有罪にならないですよね。展開が読めてました。
私のなかで法廷劇は一切盛り上がりませんでしたね。
2番目の弱点は
個々の人物像に好感が持てない上に、ストーリに沿った適切な感情表現が見受けられず
キャラクターや゙ストーリーが非常に陳腐に見えてしまったことですね。
劇中で裁判の結果を無罪としましたけど、
これって裁判によって父親の自殺が認定されたってことでしょう。
それ即ち母親からのDVで父親側が自殺に追い込まれた事実の追認が行われたということです。
その割に息子も母親も反応が薄いんですよね。
浮気を開き直ったうえに他殺でも自殺でもどっちでもいいけど父親を殺した母親に対しての、悪感情が息子から表現されないのは本来おかしいんですよ。
また母親も余り悔恨の念を抱いているように見えないんですよね。ただ裁判長引いて疲れたわーみたいな感じしかない。
ちょっと不自然ですよね。
このアンリアルさがずっと引っ掛かって最後まで物語にのめりこめませんでしたね。
まあ、タイトルが少し謎めいているので惹かれたけどこれは裏切られたパターンでした。
結局謎なんか無かった。他殺であれ自殺であれ、どっちにしても殺したのは母親で確定、これが結論なんですよ。
たかだかその程度の結論に至るまでのウジウジしたやり取りが楽しめるかどうかですね、
私は無理でした。
真実と嘘を混濁した演出に翻弄される
父サミュエルの転落死は自殺か、母サンドラの手によるものか?緊張感が持続する法廷劇で最後まで面白く観ることが出来た。
ただ、コトの真相は観客の解釈に委ねられる部分が多く、観終わった後にモヤモヤも残った。むしろ、そうした余韻を楽しみながら、色々と考察すべき映画なのかもしれない。
そもそも決定的な物的証拠、例えば凶器などは一切見つかっていない。検察側は動機や状況証拠だけで有罪に持ち込もうとしており、流石にこれでは無理があるように感じた。結局、こういうケースは参審員個々の裁量で判断するしかないのだろう。人が人を裁くというのは非常に危険であり、また難しくもある。
それにしても、本作は観てるこちらを惑わせるような演出が各所に施されていて実にイヤらしい。
例えば、法廷に流れるサンドラとサミュエルの口論の音声記録は、途中まで再現映像で表現されるが、肝心のヒートアップした場面では音声しか流れない。そこは観客が想像してくれということなのだろう。
あるいは、最後のダニエルの証言も然り。一つ目はともかく、二つ目の証言は極めて主観的であり、おそらく偽証でないかと思われる。ここもわざわざ再現映像よろしく、あたかも事実のように描いて見せているが、真実かどうかは定かではない。
そもそもダニエルはこれ以前にも嘘をついている。彼は転落死直前の両親の会話を屋外で聞いたと言うが、その後の現場検証で屋内で聞いたと訂正した。本人は勘違いなどと言っていたが、そうではないだろう。もし二人が口論していたとなれば母親は益々不利な立場に立たされてしまう。おそらくダニエルは母親を守るために嘘をついたのだと思う。
このように本作は各所に後に繋がるような伏線や、解釈を迷わせるような演出が施されているので中々一筋縄ではいかない作品となっている。
そして、真実の行方も気になる所であるが、それ以上に自分はこのような事態に巻き込まれてしまったダニエルに不憫さを覚えてしまった。
サンドラとサミュエルは共に小説家である。キャリアという点ではサンドラの方が恵まれていて、サミュエルはそれにコンプレックスを感じている。更に、過去の事故でダニエルに視覚障がいを負わせてしまったという責任も感じている。環境を変えて心機一転、仕切り直しを図るがそれも失敗に終わり、今や完全に夫婦仲は冷め切っている。そんな二人に挟まれてダニエルはさぞ寂しい思いをしたに違いない。唯一心を癒してくれるのは愛犬のスヌープだけである。
判決が出た夜、サンドラはかつての恋人で弁護士のヴィンセントと祝杯をあげていた。自分はこれに大変違和感を持った。本来であれば、真っ先に帰宅してダニエルと喜びを分かち合うのが母親ではないだろうか。きっとサンドラにとって一番大切なのは自分自身であり、家族は二の次なのだと思う。これではダニエルが余りにも不憫である。
本作で一番の犠牲者は亡くなったサミュエルでもなく、裁判にかけられたサンドラでもなく、実はダニエルだったのではないか…。そんな風に思えてならなかった。
総じて完成度が高い作品であるが、唯一、不自然さを覚えるカメラワークが幾つかあったのは惜しまれる。法廷シーンの一部で過剰なズーミングやパンが見られて興が削がれてしまった。
キャスト陣ではサンドラを演じたサンドラ・ヒュラーの好演が素晴らしかった。実話の悪魔憑き映画「レクイエム~ミカエラの肖像」の薄幸な少女から、「ありがとう、トニ・エルドマン」ではバリバリのキャリアウーマン、「希望の灯り」ではやさぐれたハイミス等、抜群の存在感を示してきた女優である。ここにきて一段と懐の深い演技を見せつけ改めて良い役者だと再確認できた。
弁護士ヴィンセントを演じたスワン・アルローのイケメンぶりも印象に残った。フランソワ・オゾン監督の実話の映画化「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」では神父による性的被害者の一人を演じていた。劇中で最もインパクトのある演技を見せていたことが思い起こされる。
鑑賞後、語り合いたくなる良作
まさに。
1人で観に行ったけど、誰か私と語り合いませんか〜!と鑑賞者に声をお掛けしたかったです。
即、この映画レビューを読ませていただきました。いろいろな見方があって、興奮するレビュー読み。最初のダニエルの証言で、夫婦の会話が聞こえたのは外だったという証言から、いや中だったかも、と自分の勘違いだったという証言に変えたのは母を守るためについた都合のよいウソだった?
私の考えは妻サンドラがインタビューを邪魔された腹いせに何かで殴り、旦那サミュエルが三階窓から誤って落ちたのか?とか。だから頭の血があそこについていたのか?とか。
ダニエルは母がやったのかも、と考えていたが、離れて頭を整理して一生懸命、母を守る策を考えていたのか?今度は失敗できない、もう信用されていないんだから飼い犬を使い、より説得力のある状況説明をしなければ…と1人で実行にうつしたのか?
ラスト、割と長い尺で取っていた中にサンドラの友人弁護士と2人だけで飲み交わし、見つめ合った時に旧知の弁護士の顔が疑うような冷たい表情だった気がする。サンドラの右手が震えていたし、それを隠そうとしていた。
他にいろいろ言いたい事がたくさんある映画だった。おもしろかったー!
あとはnoteでもっと語ってみたいです。
ヨーロッパのガチ夫婦ケンカは怖すぎる!
ベストセラー作家の主人公と小説家志望の夫との互いの主張の応酬は、聴いててしんどかった。
日本人同士なら、ここまで相手を追い詰めないけどなー。
このシーンを観て、改めて傾聴って大事だと実感した。
しかし、ここまでもめても、浮気してもされても、それがバレても離婚しないという不思議。
この二人が夫婦という形態をとり続けていることが、この映画で一番ミステリー。
法廷シーンでは、少々間延びしたところもあったけれど、物語は総じて面白かった。
主人公がドイツ人で、フランス語が不自由なので英語を使うシーンに、ヨーロッパを感じた。
確かに、ヨーロッパの人って、2、3か国語(母国語と英語、プラス母国語と言語的に近い言語)話せる人が多い。
少なくとも、街中で英語で質問しても、問題なく会話は成立する。
日本では、駅やホテルの観光施設でも、スタッフが突然の英会話にワタワタしちゃうことありますもんね。
ラスト、主人公は裁判で無罪となる。
息子の証言は、裁判官の心証に大きな影響を与えたように感じた。
私も、主人公は、殺人罪で収監されるリスクを冒してまで、夫を殺さないと思う。
経済力もあるし、夫に本当に愛想が尽きたら、面倒でも合法的な離婚手続きを取るタイプ。
母親なら、障害の有無にかかわらず、11歳の息子と離れる可能性がある選択はしない。
夫の死因は、自殺か過失かは不明だけど、転落死だと思う。
主人公には、あと5年くらいは、息子中心でしっかり子育てして欲しい。
と言いつつ、すぐ恋人とかセフレを作りそう。
恋愛よりは、子育ての方が、私は奥が深くて面白いけどなー。
ちょっと長かった🐶
寝不足だったせいもあり、途中、ちょっと居眠りしてしまいました。
死んだお父さんが、それほどいい人に思えないから、犯人、わからなくても、もうええやん、という気になってしまいました。
ダニエル、愛犬にあんな実験するなんてよくわかりません。
お母さんも、勝訴したんならさっさと帰ってダニエルと晩ごはん食べればいいのに、弁護士と食事して、寄りかかったりしてちょっと意味不明。
結局、お母さんが殺してたんでしょうか。
冒頭、やかましい音楽をタイマーで鳴らす設定にして、すでに殺めていたのかな🤔
じゃあ、冒頭で話終わってたか。
ちょっと長かったな😅
犬の演技が光っていました🐶
荒川良々みたいな検事
いつもの映画館②で
今月で閉館と 寂しい
この間はここでコットを観て落涙寸前だったんだな
今日は陽気につられて電車で来て昼にビールでも飲るかと
期待に違わぬ濃密で重層的な満足映画だった
テイストは怪物に近い気がするが
羅生門的な手法ではなく単一の視点で物語が進む
しかし観終わった後の気持ちは近い
あぁいろんな人のレビューを読みたい
20年くらい前のオラだったら
ん 結局どっちなのよ 気持ち悪いなぁ
とか もっと単純に意味を解せずハッピーエンドでよかった
なんて思っていたかもしれない
年間100本以上の鑑賞と55年の人生経験によって
こういう作品がいいと思える境地に達したことが嬉しい
あとからいろいろ思い出しそうだ いい映画の共通項
【本筋と関係ない話】
・荒川良々みたいな検事
・元ジャニーズのアイドル顔の弁護士
・フランスでは検事がサンタみたいな服とか
弁護士も奇妙な服を着ているのか 日本は取り入れなくてよかった
裁判員は取り入れたな
・イギリスは議会でカツラみたいのを被るんだっけか
もの凄い言葉の応酬に圧倒
観終わったて数時間。
まだ「落下の解剖学」というタイトルと観てきた話とを
整理している最中。
裁判劇ゆえにもの凄い言葉が出てくる。もの凄い量の言葉!
思考の切り替えとか、物事の見方、見る方向で全く違う
見解になるし、全部納得できそうだけど、全て受け入れられないし、結局は
誰も見てないから本当のことは誰も分からない
に着地するんだけど。本当のことじゃなくて、本当のこと「っぽい」のはどれか?なんだよなー。
昔宮部みゆきさんの「誰か」に書いてあった
“人は本当はどうだったか?よりどう見えたのか?に心を寄せてしまう気まぐれなもの”という言葉を思い出した。
そして今思うのはやはり子供は偉大だな、と。
法廷で明らかにされる同業夫婦の対立と内心
う〜む、これがパルムドールですかぁ、、
その上、アカデミー脚本賞まで、、
ちょっと、レビューサイトの平均スコア含めて、評価高すぎやしませんか?
いや、駄作とか、失敗作とかまでは思わないです。
ですが、いちばんのテーマは、法廷シーンの後半になって、夫婦喧嘩の録音と回想シーンによって明らかにされる、作家同士のカップルの複雑な心理的対立ですよね。
日本で夫婦ともに作家ってぇと、文化庁長官もつとめた三浦朱門(1926-2017)と曽野綾子(1931- )が一番有名ですかねぇ、少なくとも片方が存命の方だと。
学者、研究者だと多いですけどね、夫婦で教授とか。でも、その場合、微妙に専門分野を変えたりして、直接ぶつかり合わないように配慮(?)している場合がほとんどでさぁね。
大変ですよ、日常起居をともにするパートナーが同業、それもクリエイター稼業の場合。
書けたら書けたで、お互い能力ぐるみで比較されるライバルになってしまうのだし、いざ書けなくなったら(それが本作の不幸の原因)本業に関するジェラシーや焦燥感や苛立ちは全部相方に向かってしまうんですからね。
まぁ喧嘩の一部始終を聴いてて、観てて、明らかに妻のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)の言ってることの方がまともで、夫サミュエル(役名もキャストも公式に表示がないってどうよ?)の方は夏休みの自由研究の課題が休み明けになっても決まらない小学生が、必死に駄々をこねてる感じの混乱ぶり。
どう見ても、妻の方に正義がありましたよね。
視覚障がいのある息子ダニエル(ミロ・マジャド・グラネール)が、トラウマで爆発するとか、法廷で思いもよらぬ爆弾発言でもするのかと思いきや、上記の判断に基づく、まぁよく言って最も冷静な一証言者ってだけで、それ以上の役割は果たしていなかったですよね。
法廷で、サンドラが勝訴したあと、なにかドンデン返しがあるのかと、冷や冷やしながら見守りましたが、結局何事もなく母子が抱き合って、車でどっかお出かけして終わりなんで拍子抜け。
法廷も、年長の女性裁判長はちょっと怖くて威厳があったけど、それにサンドラ側の弁護士ヴィンセント(スワン・アルロー)の被告女性への接近ぶりもどうかとは思うけど、アントワーヌ・レナルツ演ずる検察官、相手側の証言を主観だと糾弾するくせに、自分こそ主観による決めつけ丸出しで実証能力あかん感じでレベル低かったですしね。
これだけ双方の言い分聴いて、勝ち負け明々白々なんだから、これを羅生門スタイルとか言うのは、モノのたとえとして間違ってますしね。
要は、ダニエルくんの知性に、あなた負けちゃってますよ、ってジュスティーヌ・トリエ監督に言われちゃってるよ、っていう‥‥
*裁判で親の嫌なところを聴かされたダニエルくんの今後を心配するレビューがやたら多くて、あれれ、と首を捻りました。あれだけ冷静な証言ができた彼です。むしろこの裁判を経験することで成長した。そして父親よりも男性として尊敬できる大人になるに違いない、というのが監督の伝えたかったメッセージだったはずなので。
何だか、クライムミステリーなのか、わくわく法廷劇なのか(まぁ比重的にはこっちですが)、視角障がい者の少年がキーなのか、何やら不気味なワンちゃんスヌープ(メッシ)が鍵を握っているのか、etc.‥いささか焦点を絞りきれず、とっ散らかってしまっている印象を受けました。
それら引っくるめて、「作品世界の作り込みでして」ってんなら、是枝さんの『怪物』の方がよっぽど作り込んでるし、スマートだし、ロマンチックだし、エモいですからね。
ところどころ間延びしてたから、40分短くして2時間に納めても同じプロットで、充分できるでしょうに、って感じ。
久々に、無駄に長い映画だなって思いましたもん。
あと、時々カメラ移動とかズームとかが手ブレしたりピンぼけになったりとか、あれ最近流行りの何とかですか?
ウェルメイドを避けるつもりかも知れないけど、今やありきたりの手法で、かえって「またか」と思うだけでした。
まぁ、妻の側が女性と不倫していたとかのところは『TAR』を思わせなくもなかったけれど、ともに自らのキャリアで生きている男女の夫婦の話としてはレナード・バーンスタインと妻のフェリシアの関係を描いた『マエストロ』に案外近いと思いました。
『マエストロ』のレビューは、私パングロスのFilmarks初投稿(2023.12.24)。
再見もして、バイの夫との夫婦関係を詳しく分析もしましたので、ご関心の向きは是非ご覧くださいませ(一部省略版を映画.comにも2024.2.11投稿)。
おっと、自己宣伝で終わるのも何ですんで、もいっかい『TAR』との比較だけ片付けときましょうか。
『TAR』の場合、クラシック界に取材して、本当は、バイだけど家族愛も強くてオシドリ夫婦をまっとうした、アメリカ出身にして世界の指揮界のトップに初めて躍り出たレナード・バーンスタイン(LB)だとか、全米クラシック界の頂点たるメトロポリタン歌劇場音楽監督の座で長期政権を維持しながら任期満了直前に昔の少年加害(ジャニー喜多川と同じ。ちなみにLBにはそうした噂は聞かないので味噌とクソを一緒にしないように)を訴えられて業界から追放されたジェームズ・レヴァインとかをモデルに作劇しようと、はじめ考えたらしいんですね。
ところが、それだと、そもそもクラシック界に少ない女性を排除する結果になって女性蔑視の批判を浴びるだろうから、指揮者をレズビアンの女性に替えて、ケイト・ブランシェットに演じさせたところ、キャンセル・カルチャーを見事に風刺した上に、ある種のフェミニズム批判にもなっているとか、大方の好評を博したわけですね。
要は、トッド・フィールド監督は、頭いいってか、まぁズルいやっちゃ、なんですが。
それに対して、本作のジュスティーヌ・トリエ監督、自身が女性じゃないですか。
だから、夫婦のうち、女性作家の方が仕事ができて、夫婦喧嘩しても言うことがいちいち正しくて、おまけに裁判でも勝ってしまうって、どうよ、男性蔑視なんちゃうのん、って批判は当然あり得ると思いますね。
だって、夫の方は、仕事が手につかなくて、うつ病になって医者にはかかるわ、夫婦喧嘩すれば正論でやり込められるわ、自殺して死んだら死んだで、法廷で恥ずかしい録音流されて、裁判でも女房には勝ち誇られるわ、‥これじゃ文字通り、踏んだり蹴ったりですよね。
なんか、「弱者男性は死んで良し」みたいな感じで。
まぁ、これは、小ずるいフィールド監督に対して、トリエ監督が、
「頑張ろうとする女に対して、男ってやつは、これだけ無理解で理不尽なんですぅ。
みんなぁ、わかってぇ!」
って、悪気なく、純粋に思っているだけなんだと思いますけれど。
だけど、自殺しても、妻からは一向に謝ってもらえない、ってのも、死んでも死に切れない、ってやつかも知れませんな。
本作、ありていに言えば、女性側の言い分が認められれば良し、弱者男性のことは(死んだって)知ったこっちゃない、ってゆう、割と原始的なフェミニズムに立脚した作品だと思いますね。
ちょっと乱暴に要約すると、自殺した死人(それも夫)に鞭打ってみましたって話だし、ね。
そうゆうとこ含めて、よくカンヌが賞を与えたな、という感想に戻ります。
《参考》
【前編】宇多丸『落下の解剖学』を語る!【映画評書き起こし 2024.3.7放送】
アフター6ジャンクション2 2024.3.6
※後編へのリンク、文中にあり
町山智浩の映画特電『落下の解剖学』を解剖する。ミステリと言うなかれ。
2024.3.2 ※YouTubeで検索してください
※以上、Filmarks 投稿を一部修正して投稿
父も母も大好きなダニエル
心安らぐ大自然の中での暮らしなのにざわつく。
犬の演技は素晴らしい。ここまでできるのか。
父は自殺なのか、事故なのか、母が殺したのか。
あまりにも辛い選択をしなければなかったダニエル。
母が殺したと思っているからこそあの選択だったのだろう。
これからのダニエルの人生について考えると辛すぎる。
20世紀は
米国が世界の中心だった
その米国の背後には英国がいた。
その彼らが世界に提唱し普及システムは
ビジネスとコンプライアンスの徹底だったかと思う。
本作はその中でも特に
コンプライアンスが幅を効かせる法廷での裁判を軸に
描かれている。
しかも扱う判例は人の死
そこにはその死を取り巻く様々要素、人心が紛れ込む
一筋縄ではない
絡みに絡みまくった要素
それを不確かで時には創作の可能性もある要素で
断じて行こうとする
そこに真実はあるのか?
その時限りの陪審員やその時代の価値観が
正確に裁くなんてできようがない。
そう言いたげな内容だな。と僕は思った。
が、最後のオチは、これからの時代のシステムの変化を
示唆しているようで面白くもあり恐ろしくもあり◎
pimpな気分だわw
家族・夫婦の人間と愛の解剖学
言葉もカルチャーも生き方(自己主張強めな妻と夢はありつつも実現できない夫)も違う2人が結婚して、事故により弱視になった子供がいる夫婦。
自宅で妻が昼寝中に起きた夫の転落死をきっかけに、裁判で第三者に詳らかにされていく夫婦の人間性。
妻のバイセクシャルな性癖や不倫、夫の鬱病や自殺未遂など、子供の教育方針の違いや押し付け合いなど、解剖すればするほど、子供からしたらショッキングな事実が見えてくる。
解剖学って、答えを探す学問じゃなくて事実を明らかにする学問なんだよね。
だから、この作品も答えはないし、あったとしてもそれぞれの答え≠正解がある。
ただ、誰も見ていないものは、なにかの事実を軸として「決定」するしかないのだ。
とんでもなく示唆に富んだ作品だなー。生きる指標はちゃんとしてるかね?と問われる感じ。
夫の窓からの物理的な落下、かと思ったら、妻の小説家として失落なども含んでの落下、なのね。
最後、裁判を1日延期させて子供の報告を受けて、結局妻は無罪になるけど、どう考えてもあの爆音の中昼寝はできないでしょ?!いやいや、妻よ…!って思ったけど、パンフレットにヒントが書いてあった。
エンディングシーンの犬が寄り添ってきたこと、元ネタのタイトルから考察すると、あれ?やっぱりやったんじゃね??と。
地下鉄で泣くより、車で泣く方が良い
こないだ鑑賞してきました🎬
ここ数年で客入りが一番で、8割方埋まってましたね🙂
私は前から2番目しか取れなかったですが😅
雪山の山荘で、そこに住む家族の1人であるサミュエルが謎の転落死を遂げます。
ミロ・マシャド・グラネール演じる視覚障害の息子ダニエルが第1発見者となり、次第に被害者の妻であり作家でもあるサンドラ・ヒュラー演じるサンドラに殺人の疑惑が…。
アカデミー脚本賞を受賞しただけあって、ストーリーはよく練られています。
ダニエルが終盤にお守役のマルジュに感情をあらわにするシーンや、死の前日に交わされたサンドラとサミュエルの激しい口論、そして無罪となったサンドラが帰ってきた時のダニエルとのやり取り…どれも良い演技でした。
犬のスヌープもかなりの好演🐶
結局事故の真相は語られませんが、状況証拠を考えると…。
あえて真実を伏せる、というのも時にはありですね。
色んな考察が生まれるでしょう。
考えさせられる映画でした。
名犬スヌープ
結局、夫の死の理由はわからない。彼は自殺だった、事故だった、殺された、どれでもありえる。サンドラは罪に問われなかったが、夫を追い詰めたのは確かである。でも、彼女も自分を犠牲にして、異国での不便な暮らしに耐えていた。どちらが一方的に悪いわけではない。死ぬことで夫婦関係は終息したが、もし夫が生きていたとしても、この夫婦は近いうちに破綻していたに違いない。
裁判は精神的にも肉体的にもキツい。こどもに知らせたくないこと、他人に隠しておきたいことも、明るみに出されてしまう。息子のダニエルは、初めは証言がグラつくが、やはり母を庇っていたのかな。ということは、父の死の原因を知っていた可能性がある。母と息子の間には、2人にしか通じない何かがあった。そして、ダニエルは裁判を終わらせる重要な証言をする。
自分が裁く立場だったら、どう結論つけるだろうか。サンドラがいくら耳栓したとしても、あの大音量で寝るのも信じがたい。ボリューム下げろって言いに行くと思うし、そこでまたケンカになるかも。つかみ合ってアザができた? サンドラが殴ろうとして、よけた夫がバランス崩して頭を打った? でも、やはり殺したとは思えないかなー。そこまで憎んでいないだろうし、彼を殺してサンドラに利益があるわけではないし、事故が妥当な気がする。
俳優みんな演技が上手かったが、一番は犬だね。スヌープすごい! 前足そろえて伏せした姿、超かわいかった! アカデミー受賞式にも呼ばれてたって。粋な計らいですこと。
追記(2024.3.27)
夫と弁護士の名前を勘違いしてた。
最後まで夫の名前がなかったことに気が付いた。
なんか、かわいそうだな、夫。
ヒューマンドラマ
ミステリーかな?と思ったら、ヒューマンドラマだった。
確かな証拠はなく、憶測が多い。
夫については誰かを介して知る。録音くらい、本人を直接感じるのは。
人の印象は、人によって様々なので、なんとも釈然としない。
妻も妻で、自分のことはなかなか語らないのでもやもやする。
夫婦喧嘩については、どうしても夫よりになったなぁ…。
「こちらはこれだけやって(あげて)るのに」と相手を比べた時点で、夫婦仲が良かったとは思えない。
その後の乱暴については、自分からグラスを叩き割って暴れておきながら、「乱暴しないで!」はないだろう…と思った。あと夫の呻き声と、柔らかいものに暴行するような音がしたけど、あれは倒れた夫の腹辺りを妻が蹴ってるのか…?と思ってた。
妻の発言も二転三転するから、心象が悪いのは当然。
ダニエルの発言も、あやふやなので、打算で発言した…?と思ってしまった。あれもダニエル視点の父の発言だしなぁ。
凶器はありません、殺意も憶測です。と言われたらそら推定無罪よなぁ。疑わしきは罰せず、ですもんね。
結局ハッキリしないので、モヤモヤは残った。
見ることの出来ない真相
ある雪の積もる人里離れた山荘で、作家のサミュエルが死体となって発見される。
第一発見者は目の見えない彼の息子ダニエル。
これは事故なのか、自殺なのか、それとも殺人なのか。
やがて状況証拠から彼の妻で同じ作家でもあるサンドラが容疑者として起訴される。
ほとんどのシーンが裁判での供述なのだが、この映画は真相を突き止めるためのミステリー要素に重きを置いているわけではない。
サンドラは夫を殺していないと主張するが、それを証明するための物的証拠がない。
逆を言えば彼女が殺したという決定的証拠もないのだが。
法廷で彼女は徹底的に攻撃されるが、裁判の印象を良くするために彼女は言いたいことを抑制されてしまう。
真実はどこにあるのか、あくまでもこの映画では登場人物の主観しか語られないために最後まで曖昧なままだ。
中盤までは観ているこちら側もサンドラに感情移入させられるが、サミュエルが録音していた彼女との喧嘩の内容が明らかになってから見方が一変する。
自分の時間が奪われたと主張するサミュエル。
一方、サンドラは自分は何も強制していない、小説を書けないのは自分のせいだとやり返す。
お互いに自分の正義を譲らないために、話し合いは激しい口論へと発展し、やがて泥沼状態になってしまう。
正直、このやり取りを聴くとサンドラの無慈悲さを思い知らされる。
ただ、だからといって彼女がサミュエルを殺した証拠にはならない。
物語はダニエルが証言台に上がるところでクライマックスを迎える。
彼は目が見えないため、実際に何が起こったのかは分からない。
彼は過去にサミュエルが自殺未遂したことにも気づいていなかった。
彼は母親の無実を主張するが、それも彼の主観でしかない。
結局、大きなカタルシスを得ることもなく物語は幕を閉じる。
サンドラ自身、もっと裁判が終われば何か見返りがあると思っていたと語るように、何もなく映画は終わる。
最後に彼女はダニエルと共にすべてを見てきた犬のスヌープを抱き寄せる。
言葉を喋れないことから、スヌープもまたすべてを見ていたとしても真相を明らかにすることは出来ない。
重厚な作品ではあるものの、展開が一辺倒なので時間が長く感じられてしまった。
無意味だった仮説s。
作家夫妻と視覚障害のある一人息子とワンコの家に起こる話。
雪の積もる山奥に住むその一家、犬の散歩から自宅に戻る息子ダニエル、そこで目にしたのは自宅前で血を流し倒れる父親だった…、自宅三階からの転落死と思われたが、転落死とは別の外傷が見つかり…。
スルーするつもりでしたが話題性と予告の「背筋が凍りつく、息もできない、最高傑作」という文字を目にし鑑賞。
結果から書いてしまうと私には合わない作品だった。長尺約150分使って何かうやむやな感じでスッキリしない、本作が100分位の作品なら納得出来るかもだけど。
死因にあたって数人の人間から色々な仮説が出るけど、その会話シーンも正直引き込まれず、旦那が録音してた音声とその時の映像シーンには、「おっ、ここからか!」何て思ったけど…。
この本作のテーマ、メッセージって予告にもあったけど「仲睦まじい夫婦でも…、調べれば色々ありますよ」的な?長尺使ってこのスッキリしないのは嫌だな!(笑)
でっ、無罪だった奥さんが実は犯人でOK?
あの録音の音からすると。
あと、ダニエル役は上白石萌歌!?
世の中に片付くものなど
それは想像です。主観です。作中で繰り返される言葉。これがこの作品の要なのだと思います。
探偵(推理)小説とは、探偵役が事件を解決して終わるのではなく、バラバラに存在する「証拠」(物的証拠に限らずいろんな意味で)を繋ぎ合わせて一つのストーリーに仕立てて語り切った時に終わるという言葉があります。これには、すべての「解決」は偽りを含んでいるという含意があります。
この映画は事件を一つのストーリーに仕立てて「解決」することなどできないさまを描いてます。その意味でたしかに「羅生門」的とは思いますが、もう少し複雑です。
証言の一人称性(非客観性)だけでなく、テレビの報道(真実より面白い方がいい)、創作物と現実の境目(検察官が被害者の小説を事実を書いていると強弁して法廷で読みあげるという滑稽ともいえる暴挙)、などの複数の異なる層の問題が重ねられ、我々が「真実」だとうっかり思ってしまったり、思いたがったりしてしまうさまが取り出されて晒されていきます。
録音されていた夫婦の諍いも、警察は妻が夫を殺害した証拠として出してきますが、聞きようによってはむしろ夫がヤバい奴だと思う人もいるでしょう。
しかもここには、妻が仕事で夫が家事という、古い家父長主義的な夫婦が逆転した関係が見えてきて、また別のレイヤーも重なっています。
そもそも、フランスにおいて解剖学は、いわゆる文学の自然主義の方法論でもありました。(日本の自然主義はそれを受け継がなかった)
物語でありながら、現実の姿が浮かび上がることを望む。その時、きれいに片付いた結末などあり得なくなる。
漱石も「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない。」と書いてますが、それを思い出しました。
しかしラストの犬の様子は……ここからもまた片付かない想像が始まります。
推定無罪
「落下」と「解剖学」とをくっつけるとは、うまい名付けと思ったよ。
これだけで見る気満々。アカデミーの候補にもなってるらしかったけど、当地では発表後の公開になってしまった。
お客さんは日曜にもかかわらず白い頭のベテラン勢が多く、地に足のついたサスペンスを楽しんでいた。
話は、家の3階から落ちて死んだ夫を巡る家族の話。だから密室とかトリックとか犯人とかが話の中心ではなく、なぜそうなったのかを暴く話になる。したがって法廷ミステリー。
結局、夫を殺したのか、夫は自殺したのかが焦点となり⋯妻は無罪となる。
釈然としない。
こんな話を前にも見たなあと思ったら、「ザリガニの鳴くところ」がこんな感じだった。
主人公は殺人を犯したのかどうか曖昧なまま幕を閉じる。
今作の名演は禿げの検察官だ。舌鋒鋭く家族の闇を暴く。私たちは妻の非を感じ旦那可哀想となっちゃうね。
しかも、妻は弁護士のイケメンといい仲になるようだし、過去に女性相手の不倫もしている。あかんやろ。
法廷劇が終わり無罪を勝ち取ったけど、どういう訳か作画に晴れやかさはない。
妻はスタッフと乾杯しあって遅めの帰宅、子供は寝てしまうけど、ベットに連れて行ってからのーひとことに愕然
⋯とはならなかった(笑)ベッドに入って犬が来て添い寝して襲撃おっと終劇。
結局なんなん?ハリウッド映画なら「何も起きないなら切る」でしょ。
そこそこ長いんだから。
英語、フランス語、ドイツ語の入り交じるところがセンスのいい面白い脚本だが私には冗長と感じたね。
何度か意識を失いそうになった。
すごい映画
犯罪モノでアクションも無さそうだしヨーロッパ映画だし難解で退屈しちゃうかもな…と思ってたら全然そんなことなかった!
3時間があっという間に過ぎたと思うくらい、飽きさせない作品だった。美しい景色の中、事件が起こる家は平穏に見えるけど、実は冒頭からじわじわと怪しさが伝わってくる。日常とか「普通」に見えることが、殺意にまでおよぶ凶悪さを内包しているとしたら…死んでかわいそうなのは夫だけど、夫婦関係に困惑させられて傷つく子どももかわいそうだし、犬なんかもっとかわいそう。殺人の嫌疑をかけられた妻もかわいそう?
真実よりも、「可能性」があること自体が怖い。想像できることは何でも実現できる、という考え方があるけれど、誰かの不幸を想像したことのない人なんているんだろうか。誰もが不規則発言しまくりの裁判で、回想なのか仮想(嘘か仮説)なのかわからないフラッシュバックのようなシーンが混ざり合うところは圧巻だった。
なお、残念なことに、映画館に赤ちゃんを連れてきた人がいたようで、上映中に何回も赤ちゃんの声が劇場に響いていた。赤ちゃんを3時間も暗闇に閉じ込める人の気がしれない。
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