劇場公開日 2023年11月23日

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「インパクトはあるものの・・・」首 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5インパクトはあるものの・・・

2023年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

カンヌ映画祭上映で話題になっていたし、久しぶりのタケシ作品ということ、さらにインパクトのある予告編をみて興味が高まった作品だった。

【物語】
天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)が打倒毛利、武田軍に邁進する中、家臣荒木村重(遠藤憲一)が謀反を起こす。信長軍は簡単に村重の城を攻め落すが、村重を捉え損ね、村重は姿を消す。明智光秀(西島秀俊) は村重の捜索を命じられ、捕えるが元々村重と深い仲にあった光秀は信長に差し出さずに村重を密かに匿う。

一方、天下取りを密かに狙う羽柴秀吉(ビートたけし)は、信長、光秀、家康らの動きをつぶさに探りながら、常に自分が天下を取るためにどう動くのが有利かだけを考え、弟の羽柴秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)らと策を練っていた。

【感想】
従来の戦国ものと比較して、より利己的な武将達によるより生臭い戦国の世をインパクトのある映像で描こうというのが狙いだったのだと思う。その象徴が“首”であり、いとも簡単に首をはねるシーンがこれでもかと出て来る。「敵の首を取ったもの勝ち」が強調される。

既に数えきれないほど作られた戦国時代ものをそういう「ある視点を強調して作る」のが悪いとは思わない。が、致命的に脚本が弱い。随所のシーンでリアリティーが感じられない。中でも違和感を覚えたのは信長像。信長の傲慢さは世の中のイメージどおりなのだが、それをデフォルメして、あそこまで描いてしまうと、天下統一寸前まで行く前に、家臣が離反しないのが不自然。信長が後世に名を残す武将になったのは、暴君という一面とは別に、それでも家臣が着いて行くリーダーとしての魅力・統率力があったはずだ。あるいはどんなに人間的に酷くても絶対逆らえない天才的な権力支配の仕組みを作っていたことを描かれていれば良いが、それも無い。本作を観る限りは、田舎大名時代に家臣達に殺されないわけがないと思ってしまう。

劇中でもひどい仕打ちを受けながら、光秀はすぐに怒らないのだが、信長の横暴さしか描かないから「なんで?」でしかない。寵愛を受ける信長の側近(いやペット?)の存在も全く持って不自然にしか映らない。

また別のところでは、黒田官兵衛が優秀な参謀という位置づけになっているのだが、その知略の描写が半端で「なるほど、切れ者!」とならない。

さらに俺が一番気に入らないのはこんなところまで“流行り”のLBGTを持ち込んでいる。あたかも戦国武将=all男色くらいの勢いだ。そんな設定にする必要性が全く分からない。

ということで、信長役の加瀬亮初め、随所に役者の熱演は観られるものの、それが無駄になっている。

カンヌの観客の中に一体どれだけ本当に称賛の拍手をした人がいたか・・・

泣き虫オヤジ