ミッシングのレビュー・感想・評価
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健全なネット文化のために、本作こそ文部省推薦の教育映像映画になってほしい
「一縷の望みを託す」といいますが、一縷とは「細糸一本のように今にも絶えそうな。かすかな。」という意味だそうです。いっぽうでインターネット関係の用語「ウェブ」とは蜘蛛の巣のこと。藁にも縋る思いは、デメリットのほうが多いと判りつつもネット情報を読み、案の定こころ搔き乱されるだけに。
ネットを悪者にするのは何かにつけ昨今の流れですが、悪い面がこれほど強調されても遠ざける向きにならないのは、原発と同じで必要悪の位置付けに収まっているからでしょう。
弟がらみのあやしい事情も結局はなんでもなく、振り返ってみればこの映画では登場人物に悪い人間はいませんでした。いたずら電話の声、石を投げた者、誹謗中傷の訴えでの逮捕者、かれらは影も写されません。
そのあたりから私は、子供の失踪に加えてもうひとつの焦点をこの映画に見出しました。捉えにくい表現しか思いつきませんが、それは「実像を現わさないでいる人間の悪意のほど」です。
wwwww と並べたり、……じゃね?という言葉遣いを選んだり、ググレカスといったネットスラングに通じることがネットを使えている人だと錯覚している人が少なくありません。かくいう私もそのひとりでしたがさすがに卒業しました。そして今思いますのは、ネット越しであってもリアルに対面している状態と同じ心境で他者と接することができてはじめてネット1年生だということです。ハンドルネームを使っていても。
しかし世の中はまだまだネットを特別視していて、特別視しないといけない限り未熟の域を脱せないジレンマから抜け出せそうにありません。
かつての2ちゃんねるが育んだ感のある、なにかにつけディスって楽しむ悪習や、邪推先行のレスポンス、それらの書き手は姿を現さないのではなく、視点を引いてみればそういう世界を容認している自分たち自身の罪でもあると受け取りたい。そして、いささか衝撃は強いですが、いや強い衝撃だからこそ伝わると期待して、こういったネット越しの倫理観を啓蒙してくれる本作のような映画作品をこそ、文部省推薦の教育映像映画として、学校をはじめとした教育機関での上映をおこなってほしいと思いました。
憑依的演技を目の当たりにし、他者の絶望的不幸が親身に重なる、その洗脳級の衝撃を受けたのですが、そのレビューは書いてみれば自分でも意外に、ネット文化の啓蒙に一石投じたい云々の、こんなところに落ち着きました。
熱演=名演ではない・・。 悲話=感動でもない・・。(途中からネタバレ)
目が潤むシーンが多いが、"悲話"="感動"とはならず。
石原さとみの熱演は認めるも、私的にはそれほど感情移入出来ず、私平均を僅かに上回るぐらいの評価に・・。
(感涙というより、もらい泣きしてる場合も多いかと・・)
まず序盤は、娘が行方不明になった親、それを取材するジャーナリスト、最後に会った弟、を状況描写ですんなり説明して、引き込みが巧いと感じる。
が、それ以後が "枝" ばかりが横に広がり、本筋は全く進展しない・・。
まあ今作はサスペンスではなく、"葛藤する夫婦"の物語なので、それ当然かもしれないが、苦悩する夫婦ばかり描写されても素晴らしいとは感じ得ない。
石原さとみの演技が素晴らしい、との事前情報は勿論、熟知していたが、"熱演で"あって"名演"ではないのでは・・と観る前から邪推していたが、鑑賞後にやはり当たってしまったと感じる。
車に乗り込んだ記者に顔を崩して訴えるシーンや、偽電話に泣き崩れるシーン等、「綺麗なお姉さん」のイメージをかなぐり捨てての熱演は誰の目にも訴える。 が、感情が直ぐに言葉になっている描写が多く、もっと目で訴えるというシーンを与えていれば、果たしてそれを巧く表現出来たか・・という気もする。
彼女は確かに"熱演"したが、エマ・ストーンは「哀れなるものたち」で"大"熱演した。 ハリウッドでも指折り絶世美女のシャーリーズ・セロンは「モンスター」では、ハンバーガーを日に20個近く食し、自らを醜く激太りさせ、凶悪犯を熱演して主演女優賞に。 そう、上には上がいる・・。
(あまりに石原さんが絶賛されているので、つい冷めた内容を書いてしまう事に・・)
私は記者役の"中村倫也" の方が目に留まった。 "動"の演技をしている石原とは真逆で、"静"の演技。 彼には無言で見つめるという(僅かな時間だが)シーンが何度もあったが、常にその"目"で演技していた。
台詞がなくとも、「ちゃんと見守っていますよ・・」「間違いないんですか!」などの胸中の言葉が聞こえる様な目をしていた。
全般的に辛いシーンが多く、チラシを余分に印刷してくれた業者のおじさんなど、じわっとくる物が伝わるが、あの様な演出がもっと随所にほしかったとも感じる。
ラストネタバレ ↓
★平均も高い今作だが、今作の最大の欠点は行方不明事件が、一歩も進展しないでラストを迎えてしまう点。
SNSバッシング、弟の賭博など横道に広がるばかりで、
誘拐とも事故ともなんの情報も無く、ずっと益なき労働をしている両親の辛さを訴えてのエンディング・・。
上映終了後、映画館通路で見終わった70代ぐらいの夫婦の奥さんが「弟が子供見つけた時、やっと解決かと思たのにな~・・。 結局不明なままなんやろ・・。」とポツンと夫に。 まあ作品に満足してないのは確かな言葉・・。
今作の様に曖昧エンディングが最近多く、私的には好きでないが、日本人は欧米人よりサッドストーリーが好きと言われるのが、今作平均★の高さがそれを物語っているかと。
諦めろという何らかの圧力が課せられて、それに反する両親の努力後、解決になんらかの光が見えてのエンディング・・ という様な作品なら
私の★ももっと上がったかと
評価高いけど、、良さがわからなかった
家族との幸せなシーンは最初の流れる映像だけ。
あとはひたすら、娘が行方不明になったことに憔悴して、マスコミに叩かれながらも必死に1%の手がかりに縋り付こうとする沙織里と、それを少し冷静に見守る豊の夫婦を描いている。
豊は最初冷たいなーとは思った。同じ娘を失ったのに熱が違いすぎて、沙織里がイライラするのもわかる。
でも確かに2人して取り乱していてはダメなんだろうな。
沙織里の弟がまたひどい、なんでこんなに無責任なんだろうとか、非協力的なんだろうとか思う。でもこれもあとから理由はわかる。姪の命より自分の身の方が大切だという、残酷さも感じる。
行方不明になっている子の捜索ニュースはたまにあるが、どこかそれを見ているような気分になって、どちらかというと映画というよりドキュメンタリーを見ている感じがした。これをあえて映画にする意味がわからなかった。
なりふり構わず演じている石原さとみはすごいが、どこか作りものっぽくて冷めて見てしまった。
最後の最後で、豊がほろっと堪えきれずに泣くシーンは良かった。
最後、解決することもなく、そのまま終わってしまったので、え?終わりなの?このまま続くの?と特に感動もなく不完全燃焼だった。
なぜにこれだけ…
生きるための道標
吉田恵輔監督の映画は初めてでしたが、実に身動きも出来ない位衝撃的な感銘を受けました。
事件そのものは背景であり、ほとんど展開することもありませんが、その状況の中で人間が何を考え行動し、どうやって歩んで行けるのか、大変深いテーマを描いています。
石原さとみは おそらくは命を削りながら臨んでいるような演技で、見ているこちらの心まで壊れてしまいそうな凄まじさでした。
警察署の場面、沙織里の目の光が失われ、眼前が真っ暗な闇になったのがはっきりと分かり心が抉られるようでした。
さくらちゃんの無事を知った時の、喜びと絶望が相反していながらどちらも嘘の無い真実の思いに震えました。
(確かに撮影後日常に戻るのも大変だったかも知れません。)
しかも石原さとみだけでなく他の俳優達もとんでもない。
中村倫也はあまり表情を表さないのに心の葛藤や内面の矛盾などの複雑な感情を表現して見事でした。
また大変難しい役であったろう森勇作の完璧な演技。
序盤の知的障害を疑わせる不審さから姉に胸の内をはきだす終盤まで実に濃いキャラでした。
そして終盤の青木崇高の、まるで暗闇の中に一筋の光を見たかのような嗚咽には魂が揺さぶられ、胸に突き刺さり涙が抑えられませんでした。
きれいごとでも絶望でもないあのエンディングもこれ以外無いと思います。
こうでなかったら物語はずっと薄いものになっていたでしょう。
この世界には理不尽で残酷な事もあるけれど、それでも生きてゆく道標(みちしるべ)を示す終結は深い余韻をいつまでも残してくれました。
本当に重くつらい、でも最高に素晴らしい大傑作だと思います。
号泣を越えて嗚咽です
号泣を越えて嗚咽です。
人のために何かをする…それがすぐには結果に現れなくてもそれは人間らしく生きた証として自分史に残ると思いました。
ハッピーエンドではないけれど未来に希望が持てる映画でした。
ほんとに途中は苦しくて切なくて目をそむけたくなる描写が続きましたが人間の汚さも美しさも清濁併せ呑む事が人として生きることなんだなあ…と思いました。
匿名で誹謗中傷する人達へ、この映画が猛省のきっかけになればと思います。
喪失の物語
最高の映画
吉田監督作品を初めて観ました。衝撃が走りました。監督は決して人を決めつけたりせず、白か黒、善か悪かで判断しない、実に人を良く見ている方だと思いました。今ネットの誹謗中傷で苦しんでいる人、マスコミの偏った報道で傷ついている人がたくさんいると思います。人は人によって傷つけられ、人によって助けられる。傷は癒えないかもしれないけどそうやって生きていくんだと思いました。
私には息子がいます。正直沙織里のような経験はしたことがありません。だから気持ちを想像することしかできません。だからこそ相手の思いをわかろうとする努力が大切なのかなと感じました。
石原さとみさん、青木さん、中村さん、森さん、全ての方の演技が素晴らしかったです。この作品に脇役は一人もいないと思いました。見終わったあと、どうしてもパンフレットで答え合わせがしたくなりました。ワークショップのお一人お一人のコメントに感動しました。貴重な脚本を読ませていただき、映画を2回観た気持ちになりました。
ひたすらに
辛すぎた。途中何度も何度も胸が締め付けられた。
映画を観てて感情移入することは普段、殆どないが今回は辛すぎた。
自分自身子供はいないが、同じ立場に立ったらこの母親のように手当たり次第に周りに当たり散らすだろうと思った。母親はだいたいこういう風になるのではないか。
夫との温度差に悲しみ、怒り、自分と価値観が違うと頭が狂いそうになるだろう。
父親は父親でもちろん子供のことは母親と同じくらい心配だが、今ある家族を守らなくてはと、それでも自我を保たなくてはと。それが、妻からすると冷静に見えてしまうのだろう。
事件を追う記者も自分の取材のせいで家族が壊れていくのを側でみるのはひたすらにキツかったと思う。
部下の方が手柄を上げて昇進していく中、それでも自分の信念を貫くことを辞めなかった姿勢は本当に賞賛したい。
出てくる人全員にストーリーがあって、どの立場からみても今回の失踪事件は辛い出来事でしかない。
乗り越えられない悲しみを背負ってでも人は何年も何年もずっと生きていかなければならない。
精神状態が不安な時は観ないことをお勧めします。
ドキュメンタリー
涙は出なかった。
絶対泣くとハンカチを握りしめて鑑賞したが、そうじゃなかった。
テレビドラマだと、展開や結末が求められるが、映画とはこういうもんだと。
子供が失踪し、その裏側を淡々と描いている。家族、マスコミ、ネット社会。期待するようなことは何も起こらない。それが現実。現実とは良くも悪くもただ時間だけが過ぎ去り、時間が何かを癒してくれる。
それでも救いは、夫婦仲が壊れなかったこと。
映画の世界に没頭するというより、もし自分の身に降りかかったらどうだろうと、映画を見ながら客観視しているとこがあった。
きっとうちの夫婦は崩壊してただろうな。夫婦が同じ気持ちだからビラ配り続けられるんだろうな。一人だったら、ビラ配り続けられないな。
そして、現実に起きた過去のニュースも思い出していた。あのお母さん頑張ったな。何十年たってもビラ配りを続けてる家族すごいな。毎年必ず報道される短いニュースの裏側には、寄り添う記者がいるのかな。
最後に思うのは、うちの子は無事に成長してくれて、今日も毎日家に帰ってきてくれることに感謝。
真実を面白がっているのは、誰?
たたかう君の唄を
たたかわない奴らが嗤うだろう
ファイト!
冷たい水の中を 震えながら遡ってゆけ
中島みゆき「ファイト!」
私達は、報道から何を求めようとしているのかな。有難いことに、このクニの憲法は、知る権利を保証しています。一方で、何が、起きたかを知るのに忙しくて、何故、起きたのかを知ろうとしない。報道機関も、消費者に合わせないと数字にならない。結果、深層も、真相も、藪の中。後は、時が忘却を暮れるのを待つだけ…。ヒトに寄り添う報道がしたければ、数字に寄り添うことが、大前提の世界と、私達はどう付き合う?。
私が映画を観ている間に、家族が行方不明になったら、世間はどんなコメントするのかしら。
私にとって一番大切なものは、世間にとって何番目に、大切なものなのかしら。
大切な人を、喪うかも知れない焦りと恐怖の前に、私達ができることって、何?。どうやって、たたかえば、いい?。自分にとって大切な思い出の品。捜査の役にも立たないと思っても、提供したくなる衝動を、嗤うことは簡単です。でも、それって…。
この映画は、あくまでもエンタメコンテンツです。ただ、このお話が、完全な作り話ではないことは、ニュースを見ていれば分かること。しかも、世界中、私の関心領域の外で、このような苦しみとたたかう方の数は、計り知れない。本作を通じて、世界中の痛みの、たった1つにでも、関心を持つことができるなら…。
例えそれが、指からこぼれ落ちる、儚い虹のような幻であっても、それを希望と思わせてほしい…。
少なくとも、たたかうヒトを嗤うヒトにだけは、ならないでほしい…。
全ての人が観るべき映画。
すぐに不適切だ、不謹慎だ、誰が悪い彼が悪いとネットで誹謗中傷、非難、炎上する今の時代に、全ての人が観るべき映画。
その炎上コメントを書き込む前に、この映画を観てほしい。
世の中いつからこんなに狂ってしまったの?という石原さとみの台詞が重たい。
そして石原さとみの演技が本当に本当に素晴らしい。
とにかく辛くて引きずる
ずっと苦しい
ドキュメンタリー映画のよう
タイトルなし
そこまで良いかなあ。駄作ではないけど、踏み込みが足りないような。石原さとみも通して芝居内容が変わらないので、彼女が悪いわけではないけど難しかったか。テーマに踏み込めなかった(テーマ自体浅い?)ので言うことが途中でなくなってしまい、中村倫也も合わせて消えていった、という印象。新たに誘拐された女児の母親とすぐに会って支え励まさなかった(協力はしたけど)事が「あ、石原さとみは変わらなかった」という心象に繋がってしまった。
付け加えると、キャメラマンと音楽担当とは離れたほうがいい。こんなんがベストです、という担当者とやっていくのは……。画も音も作品を蔑んでいた。
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