「糸」ミッシング なつさんの映画レビュー(感想・評価)
糸
藁でも糸にでも縋る
子供が行方不明になら母親なら発狂ものなのは当たり前だろう。それもたった一晩、ライブで跳ねていた時に。
しかし、ライブに行こうが行くのまいが、攫われる時は攫われる。近距離でもなんでも理由はさまざまで誘拐事件というのは起きる。
それでも、自分を責めつづけるサオリ。
きっと一生分を叫んだのではないか。
ビラを配り、テレビの取材を積極的に受け、ネットに沈む少しの情報を探りつつ狂った日々を送る。
常にヒステリーを起こし、叫び、悲劇の母親、ネットの毒親にしたれ上げられる。
支える事で必死に妻を守る夫、職場、印刷会社の手厚い優しさが沁みた。
イタズラに踊らされ、チラシ配りで寂しそうな顔の演技を指示され、ミウの誕生日会をずらしてでも人々の心に訴えかけようとするサオリはもうなりふり構ってられないのだ。縋れるものにはなんでも縋る。
ミウがどの様な子か聞かれて、はた、と止まる瞬間に息を飲んだ。
虎舞龍と笑うカメラマン、ヤクルト1000が無いおばちゃん、商店街でながらスマホでケンカする人、ピアノ教室で一緒になったママ友のバンティー。
彼らにとっても、それは何でもないような事。
サオリにもあったのだ。
弟も実姉からなじられ、プライベートも晒され、職場も辞め、カジノもバレて…でも彼もミウに会いたいのだ、と。
その心を吐露した時にようやく姉と和解する。
ミウにも背中を攻撃されてたね。
3年が経ちテレビ局にも頼れなくなった頃、同様の事件を見てそれに便乗する計画を立てる。
まだまだ縋れるものならなんでも良い。
一見協力だが、本音はミウ。
とにかくミウミウミウミウミウ…
そして、便乗した家族の娘が保護される。
心から涙するサオリ。
嫉妬するでもなく羨むまでもなく心から良かったと。
なにも決着をしない。
救出されるわけでもない。
死体が上がる事もない。
何もわからないという事はとても辛い事だ。
そしてサオリの心はゆっくりと穏やかになっていくように見える。
子供を守るため、交通係になりたくさんの子供達の行方を見守り、もうヒスは起こさない。
その代わりミウの唇を鳴らす真似をしてみる。
3ヶ月、半年とサオリの取材をしてきたスナダは世の中の波に乗らず、自身のポリシーを貫き出世もできずアザラシの画像を再び撮り続けるのも印象的でした。
マスコミはやはり、嘘、大袈裟、紛らわしいが前提なんだな。JAROに連絡だ。