ウェルカム トゥ ダリ

劇場公開日:

ウェルカム トゥ ダリ

解説

名優ベン・キングズレーが20世紀を代表する天才芸術家サルバドール・ダリを演じ、その奇想天外な人生を描いた伝記映画。

1985年、サルバドール・ダリが火事で重傷を負ったというニュースが世界に衝撃を与える。それをテレビで知ったジェームス・リントンは、ダリと過ごした奇想天外な日々を思い出す。1974年、ニューヨーク。画廊で働きはじめたジェームスは、憧れの芸術家ダリと出会う。圧倒的なカリスマ性を持つダリと、彼に負けないオーラを放つ妻ガラに気に入られたジェームスは、ダリのアシスタントを務めることになり、ダリが生み出す不思議で危うい世界へと足を踏み入れていく。

「ハンナ・アーレント」のバルバラ・スコバがダリの妻ガラ、「ザ・フラッシュ」のエズラ・ミラーが若き日のダリを演じた。監督は「アメリカン・サイコ」のメアリー・ハロン。

2022年製作/97分/PG12/アメリカ・フランス・イギリス合作
原題または英題:Daliland
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2023年9月1日

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(C)2022 SIR REEL LIMITED

映画レビュー

3.5作品見せずに画家描く。空虚な宴にいざなう騙し絵

2023年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ダリ役のベン・キングズレーとダリの妻ガラ役のバルバラ・スコヴァが好演するも虚しい。1974年、ニューヨークでの個展を控えながらも、拠点のホテルでパーティー三昧の日々を送るダリとその取り巻きたち。原題はDaliland、つまり“ダリの世界”に招かれた画廊勤めの青年が映画の案内役になり、著名芸術家の一時期の創作活動、夫婦の関係、交友関係を描いていくのだが、何だろうこのもどかしさは。

もどかしさの最大の要因は、ダリの作品を劇中で見せてもらえないこと。美術業界誌The Art Newspaperの記事によると、金銭的な事情により作品を劇中で使用するライセンスを得られなかったとか。溶けていくカマンベールチーズを見てインスピレーションを得たという、ぐにゃりと柔らかく曲がった時計が印象的な代表作『記憶の固執』をはじめ、アートの制作過程は描かれても、完成品を正面から映すことはない。作品が紹介されない画家の伝記映画の企画がよく実現したものだ。音楽家の伝記映画で完成した楽曲が劇中で流れないとか、作家の伝記映画で小説の文章が引用されないようなもの。ダリの人となりを添えて作品の魅力を伝えてもらえると思ったのに騙された、というのは言いすぎか。

ダリの主要作品は頭に入っていますという美術愛好家なら楽しめるかもしれないが、邦題に反して誰でもウェルカムというわけではなかった。

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高森 郁哉

3.5キングスレーならではのダリの人物像が愛らしい

2023年8月30日
PCから投稿

ピンとはねた髭とカッと見開いた瞳。名優ベン・キングスレーと20世紀芸術を代表する巨匠ダリとの異様なまでのこの親和性は一体何なのだろうか。本編の素っ頓狂かつエネルギッシュな立ち居振る舞いからは、これが『ガンジー』のタイトルロールと同一人物だと想像がつかないほどだ。本作はダリとその妻ガラの特殊な夫婦生活に焦点を当てた物語であり、それを若きアシスタントの目線で見つめた目撃型のヒューマンドラマとなっている。70年代、ニューヨーク滞在中のダリは展覧会のための作品制作もそっちのけでパーティー三昧。そこに集う人々の目の眩むような豪華さを印象付けながら、宴のあとの芸術家の素顔にも興味をそそられっぱなし。泣きわめいたかと思えば真剣に作画に打ち込んでみせたり、また妻の浮気が気になって、あれこれ画策しだしたり・・・キングスレー演じるダリは子供のような一面を持ちつつ、妙に観る者の胸に棲みついて離れない魅力がある。

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牛津厚信

2.5The Great Masturbator

2023年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

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いぱねま

1.5「紋切り型の筋書き」は伝記として最も恥ずべき結果ではないのか

2023年9月19日
PCから投稿

絵画の世界に生きる青年ジェームス・リントン、彼がある火災のニュースと共に回顧するのは天才芸術家サルバドール・ダリとその強烈なる妻ガラと過ごした日々……

筆者は決して伝記映画に明るいとは言えないが、この既視感と予定調和は何なのだろうか。
未だ何物でもない青年の眼から見る、狂奔する老芸術家とその取り巻き、無二の盟友でありながら関係に隙間風の吹く妻、二人を苛むスター気取りの間男、そして己は正気だと主張しながら後ろ暗い金稼ぎに勤しむマネージャー……
皆が皆登場して数分でキャラの底が出てしまうお定まりの造形、何の驚きもなく淡々と予想通りの展開が続く脚本。そこに「サルバドール・ダリとはこうだったのか!」という意外性はどこにも存在しない。伝記映画とはそこに個性をもたらすことで偉人の生涯を描き出すものだと思うのだが……

既に別レビューでも指摘されているが、
本作は諸事情によりダリの実際の作品は一切登場しない。
必然工夫の限りを凝らしてダリという個性を描き出す必要がある筈にも関わらず本作は明らかにそれに失敗しており、残るのは「食卓のチーズと鳴り響く秒針の音」から代表作『記憶の固執』―――或いは”とろけた時計が描かれたあの作品”―――の登場に期待した心を肩透かしされた脱力感のみである。
……まさかとは思うが、チュッパチャプスを彷彿とさせる”棒付き飴、但し包み紙未登場”は伝記映画として異常と言える不備への抗議なのだろうか……

「一度見たら二度と忘れず心に焼き付く」と名作のもたらす感動を表現した本作だが、
ならば思い出す取っ掛かりすら難儀する程に凡庸な本作の存在意義とは何なのか。
深い失望を感じざるを得ない。

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Elvis_Invul