碁盤斬りのレビュー・感想・評価
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草彅剛さんの新境地ですね。
柳田格之進の役は草彅剛さん以外には考えられませんね。
真面目で実直。清廉潔白な人柄だからこそ四角四面で融通が利かない。
そんな不器用な武士を見事に演じきったと思います。そこは賞賛したい。
作品のテーマにも共感できますね。
正義はそれぞれの立ち位置で変わる。正しい行いでも立場が変われば恨みを買う。
相手には相手の言い分もある。そこに気づいてしまったために迷いが生まれる。
さらに自分は武士である。誇りも面目もある。仇を討たねば武士として生きていけない。
さらに窃盗の嫌疑までかけられてしまう。苦悩は深まるばかり。どう決着をつけるのか。
最後まで目が離せない。
星5つでもいいけれど、ちょっと残念。
まず碁のシーンが多い。碁に詳しい人ならいいけれど素人が見ても「姑息な打ち方」の何たるかも解らない。
あとは監督さんの好みなのかもしれないが、重要な話をしている「背景」でお祭りをやっていたり縁日だったり。踊りを踊っていたりとか。それ要ります?ってシーンが結構あります。
注意がそちらに行ってしまって緊張感がそがれます。そこは少し残念。
星4つとさせていただきます。
良かったけど不思議なところもあり
とても良かったと思います。十分楽しめました。主人公を前面肯定するのではなく、見方を変えるととても嫌なヤツに見えると、敵役を通して語られるところが作品に深みを与えていました。
ただ、どうしても引っかかったのは、草彅剛演じる柳田格之進が盗難事件の疑いを向けてきた弥吉に約束させるシーンが人間心理に反しているとしか思えないところ。あらぬ疑いをかけられ、身の潔白を証明したいはずの主人公が「もし間違いだったら首を差し出す」と相手に約束させるが、あれはどう考えても不自然。普通あんな風な言い方をすれば、
「もし五十両が見つかっても俺には言うな」と釘を刺しているようなもの。
「怒らないから、五十両がみつかったらすぐに知らせてくれ」というのが、一刻も早く濡れ衣を晴らしたいと願う者の本音ではないでしょうか。
「五十両が見つかったら殺すぞ」と脅して、「はい見つかりました」と言ってくる馬鹿はいるでしょうか?まして、あの形相で本気度をみせつけてしまっては、間違いが判明しても本人にはとても言えないでしょう。
実際、見つかって知らん顔されても仕方のないところ、正直にそのことを告げに来た者に怒りをぶつけるのは理不尽にもほどがあり、とても共感を得られるとは思えません。
古典落語の筋書きだからしょうがないと言えばそれまでですが、もう少し説得力のある脚本にしてほしかったと思います。
しかし、その点を差し引いても十分楽しめる作品でした。それは無駄のない監督の演出と出演者の演技力のたまものだと評価できます。
ガチ過ぎ
キャスティングが全部いい
失念
清廉潔白を貫く生き様を感じる話
感想
武士が己の正義を生き様として清廉潔白を貫く事は時に周りにいる人々を窮地に陥れる時もある。人と約束するという事が生命を賭した如何に大切なものであるのかを痛感する話。囲碁を通して其々の自己が持つ正義の在り方と生き様が交差し衝突しまた共鳴する。
人の世は不得貧勝を以って動いている事をを知るべきである。囲碁の手である石の下「詰碁の死活」と登場人物の人生模様を物語に掛け合わせ据え置き、人生もまた己の利だけを貪れば必ずその裏を罹れて身を滅ぼしてしまう。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれという江戸期の市井の人情とはどのようなものであったか、さらに貧困の中であっても力強く生きる武士の姿を描くことにより究極の意識である武士の本懐とは何かが克明に描き出されていた。
配役・演出・脚本◎
草彅、市村、國村、小泉、斎藤、清原、中川、各氏の演技について其々の配役の持つ己の正義観とその道の筋というものを理解した上での演技が大変素晴らしく、江戸時代に生きる人の行動や性格表現が明確になされていた。他の出演者の方々の演技も気合いが入っており感動し時代劇の秀作であると感じる。
演出に関しては個人的には本編内、大晦日の吉原の門限に走り逢う場面にもう少しの盛り上がりの演出が欲しかったが全体的によく纏まっていたと感じる。白石監督に関しては大期待作品「十一人の賊軍」が俳優陣の素晴らしい演技にも関わらず作品の構成が今一つ芳しくないと個人的に感じていたが、本作に関しては観遅れてしまい初鑑賞が今となってしまったが鑑賞した後、評価を再び高く見直した。
脚本は素晴らしい出来であり、その時代の気風や武家、町人の心理や気質が大変良く表現されていて没入感が半端なく映像に引き込まれた。劇中に流れるストリングス、ピアノとのマリアージュも美しく印象的であった。
監督 白石和彌
脚本 加藤正人
脚本協力 三浦毎生
音楽 阿部海太郎
柳田格之進 草彅剛
お絹 清原果耶
弥吉 中川大志
梶木左門 奥野瑛太
柴田兵庫 斎藤工
お庚 小泉今日子
横網の長兵衛 市村正親
萬屋源兵衛 國村隼
⭐️4.5
草彅さんの妙な存在感
時代劇のこれからの可能性を感じさせる素晴らしい映画
映像 4.5
演出 4.0
ストーリー 3.5
演技 4
総合 4.0
見ながら「ファントム・スレッド」(映像の豊穣さと流麗さが。特に前半)と「人情紙風船」(長屋の雰囲気や建物や人物造形など)を思い出した。
映像的に、時代劇のこれからの可能性を感じさせる素晴らしい映画でした。
白石和彌監督を見直しました。けっこう映画を見ている人ですね。上に上げた以外にもいろんな映画を思い出す作品でした。以前の作品を(あまり見ていませんが)見直したいと思います。
2回目見てこようと思います。
<2回目>
やはりシナリオが良くない。
後半の話の付け方が無理がある。落語とそれを復讐劇を絡めたシナリオとやはり質が違うのだと思う。後半は、腑に落ちない。
キョンキョンは、助演女優賞ものだね。
話が転調するまでの前半までは、うっとりするぐらい素晴らしい。
後半は、そこそこ見せるが、話がチト乱暴。
草薙剛さんの魅力が堪能できる丁寧に作られた時代劇
落語の「柳田格之進」をベースに作られた時代劇だというので、落語のほうも見ましたが、よく話をふくらませてあって、映画を作るにあたってのストーリー作りをとても丁寧に時間をかけたんだろうなあと感心させられる作品でした。
陥れられて浪人になった柳田格之進の苦悩しながらも武士の誇りを捨てず懸命に生きる姿を、SMAPを辞めて仲間と独自の道を歩み続ける草薙剛さんが演じるとあって、いい作品になっているんだろうという期待しながら見たのですが、期待を裏切らないどころか、スクリーンに登場した草薙さんは、ガリガリに痩せて、食うや食わずの生活をしていることが一見してわかるような「清貧の武士」として登場して、「うわあ」と声を上げてしまうほどでした。草薙さんの全力投球がすばらしい!
ガリガリで心配になる柳田格之進でしたが、居住まいを正して品格ある生き方を貫いており、柳田格之進の喜怒哀楽のひとつひとつの演技に、草薙さんのこれまでの艱難辛苦が反映されているような気がして、「つよぽんも苦労したんだろうなあ」と共感して、格之進を応援しながらストーリーを見守りました。
『碁盤斬り』というタイトルからわかるとおり、囲碁と殺陣の両方が出てくる話で、浪人柳田格之進は囲碁の名手。何を斬るかは見てのお楽しみ! 囲碁のルールが分からない人は「さっぱり意味が分からない、面白くない」という感想も出てくるようですが、最初の方で囲碁のルールが分かるようにさりげなく、説明するシーンがあるので、ざくっとルールが分かってしまえば、最期まで楽しめると思います。
主役がとにもかくにも魅力的で、ストーリーもとてもよく吟味して作られているし、丁寧に作られた時代劇で、これ現場の雰囲気最高だっただろうなというのが伝わってくる良作でした。
日本の時代劇はこうやって志高い人たちによって継承され、今も発展しているんだなあということが感じられて、胸アツな作品でした。
当時の人の考え方?価値観?が釈然としない
疑い
正直過ぎると苦労するということかな。
草薙の演技が冴えた作品。演技派がそろっていて見応えはありました。何を考えているのかよく分からない役が草薙にピッタリだとも思いました。しかし、50両取ったと疑いをかけられて、50両借りて返してまで、娘を女郎屋に出してまでして、敵討ちに旅立ってしまう。昔の武家の人は真っすぐな考えでそうしたかもしれないが、現代人はそうは考えないと思うし、ストーリーになんか矛盾があるような感じでモヤモヤが残りました。斎藤工も腕を切り取られて、叫びもせず、静かに「介錯を願いたい」と申し出るのがまた違和感が残っています。
2024 100本目
正々堂々と
私ゃオセロは分かるが、チェスや将棋は全くと言っていいほどルールすら知らない。ましてや囲碁など。
さらに本作は落語の演目がベース。落語もほとんど縁が無い。
そんなんで本作を見れるのか躊躇したが、作品的には正統派のヒューマン時代劇であった。
一応原作ナシのオリジナル脚本時代劇となっているが、話はベースの落語『柳田格之進』にかなり沿っている。
妻と死に別れ、娘のお絹と共に長屋で貧乏暮らしの柳田格之進。落ちぶれたものの、誇り高い武士の精神は失っていない。
囲碁打ちが好きで、囲碁を通じて商人の萬屋源兵衛と知り合い、囲碁を打つのが何よりの楽しみ。
ある月見の宴の席で、途中厠に立った源兵衛の五十両が紛失。その場に唯一居た格之進が疑われるが、身の潔白を訴える。
源兵衛は格之進を信じるが、手代の弥吉は疑う。
辱しめを受けた格之進は自害しようとするが、お絹が思い留め、吉原でお金を工面。
五十両は用意立てが、もし消えた五十両が見つかった場合、首を差し出せと格之進は約束させる。
格之進が長屋を立ち去った後、源兵衛が厠の最中に無意識の内に隠し置いた五十両が見つかり…。
ここに、本作のオリジナル要素を追加。
格之進父娘が長屋貧乏暮らしなのは格之進の真面目過ぎる性格が災いして…が元の落語演目の設定だが、本作では、
元彦根藩士であった格之進だが、囲碁でもライバルであった柴田兵庫によって身に覚えない罪を着せられ、藩を追われる。浪人になったのも妻の死(柴田に関係を無理強いされ)もこれが原因で…。
ある時旧知の藩士と再会し、濡れ衣が証明され、格之進は柴田に復讐する為旅立つ。
それが五十両事件とほぼ時同じく。
格之進はかつての冤罪事件と五十両紛失嫌疑、武士の誇りを懸けて毅然と立ち向かう。
これによりドラマチックな物語に深みが増した。
訳あり浪人は時代劇の王道。
主人公像もそれに相応しくあってこそ。
実直。穏やか。
その性格は囲碁にも表れ、嘘偽りの無い正々堂々とした対局を心掛けている。
格之進の囲碁はケチ商人だった源兵衛を真っ当な商人に変えたほど。
人情味もあり。度が過ぎるほどの囲碁馬鹿っぷりはよくよく考えたらユーモラスでもある。その一方…
不名誉や納得いかない事に見舞われたら非情にもなる。
真っ直ぐで正々堂々だからこそ、曲がった事は許せない。
嫌疑を掛けた弥吉への憤り。自分をハメた柴田への憎しみと執念。恐ろしさと凄みすら感じた。
世の中にはいるではないか。絶対に怒らせてはいけない人って。
穏やか物静かな雰囲気から、目付きも口調も佇まいも変わる。草彅剛は映画で『ミッドナイトスワン』に続き新たな代表作と名演を魅せた。
囲碁馬鹿の父に呆れながらも責めはしない。不器用な父をしっかり支え、金の工面の為に吉原へ行く意志。善き娘は復讐しようとする父を止めるものだが、私の仇でもある。凛とした美しさと強さ。清原果耶はますます魅力的な女優になっていく。
囲碁を通じて親交を深める國村隼、図らずも嫌疑を描けてしまう中川大志も好助演。
斎藤工が仇で憎々しさを放つ中、ある的を射た一言に唸らされもした。それは嘘ではあったが、格之進の最後のある行動を押す事となり…。
見る順番が逆になってしまったが、白石和彌監督の時代劇としては『十一人の賊軍』よりずっと好み。
撮影・美術・音楽も一級。
確かに話の盛り上がりや見せ場に欠け、少々退屈に思える作風でもあるかもしれないが、本作はチャンバラ時代劇ではない。ヒューマンドラマ時代劇なのである。
しかししっかりと、仇討ちや武士の本懐も貫き、囲碁や落語に通じていなくとも見れる、ツボを抑えた時代劇となっている。
仇を討ち、嫌疑も晴れた。
落語の演目では庇い合う源兵衛と弥吉に打たれ、碁盤を斬って罪を憎んで人を憎まず。高らかに笑うとあるが、映画では晴れ晴れしさを感じ得なかった。
碁盤を斬ったのは、格之進の中で何かを絶ち切ったかのよう。
その後お絹と弥吉の結納の席には出るが、それはあくまで父として娘の幸せを見届ける為。源兵衛が持ち越しの対局をしようとするが、姿を消す。
築いた新たな人間関係も斬り捨て、自身の総てであった囲碁の碁盤を斬ったのがその証し。
あらぬ疑いを掛けられ、自身に罪なくとも失ったものはもう取り戻せない。
自分自身へのけじめ。嘘偽りなく、正々堂々と。
全455件中、21~40件目を表示








