パスト ライブス 再会のレビュー・感想・評価
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会いたかった…僕らはまた映画に恋をする"映画の魔法"賞
ずっと探していたものがここにあった in アメリカ人が撮るよりも魅力的なNYという街で。自分の追い求めてきた夢や理想と、それらが手に入らない現実が、見事にハート(コア・核心)と言い換えられるエッセンスを最高密度に抽出しながら素敵な形で表現されていた。本作と恋に落ちるのにそう時間はかからない、あらゆる点で3層になっているドラマ、いや、8000層にも。そのあまりの愛しさに、スクリーンに釘付けになってしまった。最高にロマンチックで、途方もなく胸を締め付けられる切なさと静かな余韻がどこまでも私達を包み込むように残る。
『ビフォア・トリロジー』で『ロスト・イン・トランスレーション』で『エターナル・サンシャイン』のように普遍的なまでに力強く響く作家性、その語り口の言語化しきれない魅力・魔法が僕らを捉えて離さない。予告の締めやポスタービジュアルにも使われている観覧車の前に座る2人のショットが、やはり作品全体の象徴ショットだと思う。見つめ合う2人の間には明確に距離があって、3つの時代を彷彿とさせる3段の階段に、輪廻転生のように回る観覧車。主演2人の力も間違いなくある対照的なキャラクター。
オープニングシーンから引き込まれる。2つ(あるいは中国含む3つ)の街を対比的に捉えるエスタブリッシュ・ショットの美しさ。ヘサンがNYに上陸してから、入ってくるホテル内のショットの美しさには悶絶した。誰があのアングル見つけられるのか、という角度だけど、完璧に三分割法になっているし奥行きもしっかり感じる。豪雨の中、ホテルのロビーに座って過ごしているショットも、ドア枠の映り(影)で丁度見えるようになっている。…といった具合に、彼がノラと会うまでのモンタージュがあまりに魅力的かつ素晴らしい。
多くのアメリカ人監督が撮るよりも魅力的にこのニューヨークという街をレンズに収め、その世界中の人々を虜にする魅力をカメラを通してしっかりと捉えている。どのショットも素晴らしく、切実なまでにヒシヒシと意味・意図が伝わるようでいて、けど同時に永遠になぜそこまで魅力的(に見える)なのか解けない謎のように魅了され続ける。詳細な分析など要らないほどにどこまで魅力的に美しく撮るのか、どこまでも僕らの心に、瞼の裏に残り続ける素晴らしい画の数々。
NYの街を自由の女神とノラたちが見る構図も、移民にとってこの街や国が持つ意味を表しているようだった。自己実現のための存在証明。ユダヤ人(という点にも意味がある)の夫アーサーも"赤い糸で結ばれた運命の2人を邪魔するアメリカ白人"という感じでは決してなく、彼もまた本作にとって欠かすことのできない必然のキャラクターだ。演じるジョン・マガロの名演によって忘れられない人物となっている。
君は君だから僕は好きで、君は去っていく人…。"イニョン" 前世からの輪廻転生で運命のイタズラか摂理。例えば、実際に会って間もなく超ロングショットで歩く2人を構図の中で変わらぬ位置に据えたまま移動するパンなんかも、象徴的だった。こんなに近くにいるのに手の届かないもの。映画など見ていると結構よく出てくる台詞"See you in the next life."とはよく言ったもので、前前前世なんかより本作のほうがよっぽど前前前世だった。
P.S. スクリーンを出てすぐにサントラを聴き始めた。大人俳優に変わってからの2つ目の時代"12年前"のヘサン役ユ・テオが、イケメンにしたフルポン村上感少しあった。本作と『アイアン・クロー』どちらもずっと見たかった作品のため、日本公開の遅さにはヤキモキさせられたが、今週末公開A24ヤバすぎるだろという最強ラインナップ!! 日本の配給会社違うけど、これは勝ちに来たな。
勝手に関連作品『ビフォア』トリロジー、『ロスト・イン・トランスレーション』『エターナル・サンシャイン』『カモン・カモン』
主演女優に惹かれて鑑賞しました。
「A24いい」
ビォアサンセット
人生の片隅に置いておきたい秀作
映画チラシの色使いがあまりにも美しく、かつ韓国人(韓国が絡む)映画ということで数ヶ月前から見ることを決めていた映画。
客層は中年以上、やや女性多めな感じ。
ストーリーは宣伝通りのため、特に見所らしい箇所は無く。序盤の印象的なシーンは、12歳の2人の別れ際(坂道)。分かりやすく、ノラが上り坂、ヘソンは平坦な道に進むのですがここが今後の2人の人生の「格の違い」を表現していました。
この映画の秀逸なのは、合間シーンの音楽、風景描写の美しさです。中盤まではドラマチックな展開は薄く、ここちよい音楽風景シーンが淡々と流れます。
それが、後半の3人シーン以降で効いてきます。
疲れた時に、この映画の世界観に浸りたい、とっておきの一作となりました。
クールな女、未練の男のイニョンの物語
誰にもあるような過去の恋、そして再会。よくあるこのストーリーが魅力的に仕上がるのは逆説的だけどジョン・マガロの佇まいに依る所が大きい気がする。あんな美しい語学を学ぶ動機は聞いたことなかった。
2人とも今の自分が嫌いなわけじゃなくて、でも過去の自分達は愛おしい。過去の自分と今の自分が繋がってる感覚はどこか不思議で、それでいて心地いい。一種の非日常。曖昧なままの関係は尾を引いてしまいがちだけど、グレタ・リーは毅然としてて振る舞いがクール。ヘソンの潤む瞳とは少し対照的で、そこが凄くよくて、そして。
ラストシーンは音楽もよくて、たまらなかったな。
監督の実体験を投影しているのかなと思った。女性視点の昔の恋と今。これが男性目線だと違う物語になるかもしれない。アジア的な前世、縁の感覚は馴染み深くて、少し身近でシンパシーを感じてしまう素敵な映画だった。
好きです、この映画。
良い意味で抑揚のないストーリーのため、アカデミー賞作品賞受賞とまでは
いかないタイプの映画だと思いますが、私にとってはすごく好きな映画です。
8000層の人縁の中でのめぐり逢い。
どんな形で出会うのか別れるのかは都度違う。
来世で・・・。
死ぬ間際に思うならまだしも、
人生前半の30代男女がそれを望みながら現世を生き続けるのはつらい。
でも、成就しなかったからこその美しい記憶が、死ぬまでの50年を
輝かせてくれるのだと思います。
主役の二人はとびぬけて秀でているわけではないけれど、
どこにでもある人生を演じる上でとても現実的でラフな演技、すごく
よかったです。
普通の会社に普通の仕事、普通の給料、しかも一人っ子の長男。
条件先行の韓国社会での生きづらさをヘソンが体現してくれました。
思わず涙が込み上げましたが、しかし?
映画の初々しさ、みずみずしさに、思いがけず涙する。
鬼の目にも涙・・・でしょうか?
最後まで観たら後半はじわじわと感動の涙が込み上げてきました。
正直、世界中が絶賛とか、大げさだな・・・と思ってました。
(今も、そこまでの評価はありません)
成り行きで涙しましたが、よく考えると一筋縄では行かない映画。
(表と裏では見え方が真逆)
有名スターのいない良さ・・・とか。
長編映画初監督作で、それも自分の経験から生まれたという
セリーヌ・ソングさん。
大袈裟な表現もない、
泣かせの演出もない、
そんな清々しさ。
やはりヘソンを演じたユ・テオ。
一途で素朴に初恋の女性を思い続けた24年間、
とても共感出来る人だったんです。
ヘソンは韓国社会や自分の両親(家)そして仕事に
がんじがらめに縛られた生活を今も送っています。
憧れて大好きなナヨン(今はノラ)は、韓国から飛び立って移民した
勇敢な女性。
(親が新天地を求めたのですが、韓国人はかなり勇敢に世界に
進出しているようです)
ナヨンは12歳の時には成績をヘソンにたった一度抜かれただけで、
悔し泣きするほど強い性格。
そういう所もヘソンは好きだった。
その彼女が突然、視界から消えた、
移民して行ってしまった。
「突然・・・過ぎた・・・」と、つぶやく。
「韓国にいたらノーベル賞が取れない」
「だから外国に行く」
12年後(24歳)にオンラインで再会して、トロントと韓国で
オンライン・チャット。
懐かしさや思い出話で切なさも気持ちも盛り上がるものの、
お互いのキャリアを優先して会わずに、自然解消してしまう。
ここでもヘソンはナヨンにまた尋ねる。
「ナヨン、今の夢はなに?」
「ノーベル賞より、ビューリツァー賞かな?」
そして24年後にもヘソンはまた聞く。
「今の夢はなに?」
「トニー賞かな?」
(この野心こそがノラの本質なのだと思います)
この映画は韓国から実際に12歳でカナダを経てニューヨークに移民した
セリーヌ監督の実話に基づくから、なんと夫のアーサーと3人で食事したのも
事実とか。
そして今の夫で作家のアーサー(ジョン・マガロ)は、心の隅に、ある不安を
抱えているのです。
ノラ(ナヨン)はもしかしたら結婚はグリーンカード(永住権)を得るため?
それをちょっとだけ心配しています。
本当に彼女は愛してくれて結婚したのだろうか?
ノラが夫アーサーにヘソンを紹介する所はとでも良かった。
アーサーと自分の初恋の人との再会をオープンにすることにより、
再会はとても清潔なものになったから。
(でも自分の気持ちにブレーキをかける、そしてヘソンにも、
やんわりと牽制する効果も計算してます)
そしてアーサーが本当に優しい妻思いのいい人なので・・・
さすがに作家です(こんな経験は作品の素材になるもの)
この映画はサラリと淡く描いてるのが魅力なのだと思いますが、
よおく考えるとなかなかどうして、したたかな作品です。
ヘソンには捨てられない祖国、
捨てられない親や、しがらみ、
それを捨ててニューヨークという世界一の都市で劇作家として
多分戦場にいる初恋の人ナヨンが余計に輝いて見える・・
そんな気がして仕方ないのです。
初恋と24年後の再会を描いて、
「自由を求める」
「夢に向かって努力する」
そんなテーマを感じてしまうのでした。
たしかに韓国は日本と同じかそれ以上に女性の地位が低い。
ナヨン(ノラ)を演じたグレタ・リーさん。
勝ち気のかたまりに見えるお顔立ちです。
最後の別れで心残りのノラは、玄関階段で待ってる優しいアーサーに
泣きじゃくって慰めてもらう。
ヘソンはちょっとおひとよしでで都合良く描かれ過ぎかも。
ヘソンの言い分や本音も聞いてみたいです。
女目線の映画だと、公平に考えると私には思えてしまうんです。
もしも
忘れられない恋
わかるけど・・・
ソウルに住む12歳の少女ノラと少年ヘソンは、互いに好き同士だったが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまった。12年後、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいた2人は、オンラインで再会を果たしたが再び音信不通となってしまった。そしてまた12年後、36歳の時にはノラはアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっとめぐり合った。さてどうなる、という話。
うーん、わからないこともないけど、特に刺さるものも無かった。
クラスで1番と2番というほど頭の良かった2人だったんだけど、移住して行ったノラはそれなりに成長してたように思ったが、韓国に残ったヘソンは子供のまま歳だけ取ったように感じた。
ノラの夫に向けて話したヘソン役のユ・テオの英語は下手くそすぎた。韓国語かと思ったほど酷かった。
欧米では、「縁」とか「前世」とかいった考え方が新鮮だったのだろうか?
ある程度の歳を重ねてくると、「あの時、もし、あの人と別れていなかったら、今の自分はどうなっていただろう」と夢想するようなことは、少なからずあるだろう。
今でも好意を抱いている初恋の相手と、同窓会か何かで、何十年かぶりに再会することもあるかもしれない。
その点、この映画が描いているのは、誰もが体験し得るような普遍的なシチュエーションであると言えるのだが、逆に、それ以上でも、それ以下でもないのは物足りない。
2人が独身だったり、結婚していても夫婦関係が冷え切っていたなら、再会によって、新たな恋が生まれたのかもしれないが、この映画のように、夫婦仲が円満で、しかも結婚相手が「良い人」であるのなら、例え、初恋の人と相思相愛だったとしても、「ご縁がなかった」と、その気持ちに折り合いをつけるしかないだろう。
だから、この映画の結末は、当然と言えは当然すぎて、「こんな当たり前のことを描くのに、何を勿体ぶっているのか?」とも思ってしまう。
それよりも、自分の妻が、初恋の人と、自分の理解できない言葉で話し込んでいるのを隣で聞いている夫のことが、何だか妙に気の毒に思えてしまった。
男女の「縁」とか「前世」での関係とかといった東洋的な思想が、欧米の人々には新鮮だったのかもしれないが、残念ながら、自分には、心に響いてくるものが何も感じられなかった。
タイトルの意味に気付いてたら見てなかったかも…
英語苦手系中年なので、「PAST LIVES」の意味が、「前世」だって全然気づかず観た。
前世ものって、陳腐やんかぁ…
映画始まって早々に、“イニョン”という言葉が出てきて、縁、前世、輪廻転生という、わたくし的には避けたい系のワード満載で、ちょっと逃げたくなった。
袖ふれあうも多少の縁ってことわざ、ジャパンにもございましてね、仏教文化つーか、儒教文化っつーか、コリアもジャパンも文化のルーツが近いなぁって、改めて思った。
最初にズッコケはしたけど、楽しくは観られました。
ノラの韓国名なんだったかな、忘れたな。
韓国系の移民は英語名つける人が多いのかな?と思いました。そうやって馴染もうとしてるんだね。
小学生ヘソンの声が、声変わり済みでびっくりした。成長はやいね!
ヘソンの分厚い上半身に、韓国的な男らしい容姿の美を感じました。すみません。
ヘソンの友人4人組がずっと一緒でなんか嬉しかったです。
ノラの夫役の人は、ファーストカウの主人公・クッキーの中の人みたいです。切ないユダヤ人男性役、良かったです。
初恋の相手に会いたいなんて思ったことないわー。
字幕翻訳は松浦美奈さま。英語、フランス語、スペイン語の字幕翻訳もしてはって、すごいなぁと思っているけど、韓国語まで?
韓国語を英語にした脚本?字幕?から日本語に訳してるんかなぁ。すごいなぁ。
それぞれの人生
時間を重ねていくからこそ見えてくる関係性が、暖かくも痛切な一作
セリーヌ・ソン監督は本作が劇場公開長編作品の初監督作品であるにもかかわらず、いきなりアカデミー賞作品賞をはじめとした主要部門のノミネートを獲得するという快挙を達成しました。
時間軸をジャンプしつつ男女の関係性を描くという作劇自体はそれほど珍しいものではないし、登場人物も故郷ソウルからニューヨークに移住したノラ(グレタ・リー)とソウルに残ってノラを想い続けるヘソン(ユ・テオ)、彼らの再会を見守るアーサー(ジョン・マガロ)というほぼ3人のみという簡潔さ。彼らの姿をやや引いた視点でとらえ、このような関係に収れんするまでになにがあったのか、期待を高める導入部は非常に魅力的です。
どちらかというと抑制的な演技、演出に終始しているため、ドラマチックな大恋愛ドラマを期待すると少し意外な展開かもしれませんが、ある程度年齢を重ねた男女が、過去の自分と現在背負っているものを見つめつつ対話を重ねていく、という成熟した物語への期待には確実に応えてくれる作品です。
なんとなく(現世では)再会以上の関係に発展しそうにないことを自覚しているノラとヘソンなのに、もしかして二人には”縁(イニョン)”があるんじゃないか、そうであれば自分は身を引こう…、というアーサーのちょっと寂し気な佇まいがなんとも言えない味わいがあります。
『ファースト・カウ』(2020)でもそうだったけど、ジョン・マガロは物静かで、達観しているというよりも何かをあきらめたかのような人物を生き生きと(って表現はちょっとおかしいけど)演じることに長けていることが改めてよく分かります。一方ヘソンは、全編通じて過去を振り切って、未来志向で生きる人としてふるまっていた…だけに、彼女が結末に見せる表情には意外性がありました。その前後にヘソンに対して語りかけた言葉は前向きだけど痛切でもあり、その後の彼女の表情と相まって忘れがたい印象を残します。
ソン監督の絵作りは、ソウルやニューヨークの、何気ない街角から素晴らしい構図を切り出すという点で、それこそ前述の『ファースト・カウ』の監督である、ケリー・ライカートの映像を連想させます。ソン監督とライカート監督のつながりを示すような解説とか読んだことないんだけど、ジョン・マガロつながりもあるし、絶対何かの縁(まさにイニョン)があると思うんだけどなぁ…。
大人の恋愛「についての」映画
24年にわたる恋愛を淡く切なく描き切った大人の恋愛映画。恋愛映画っていうか、「恋愛についての」映画かも。なんか「恋愛」そのものでもない気がするんだよね、だって二人はほぼ会ってないんだから…
韓国に残った彼が持つトラディショナルな恋愛・結婚観と、カナダ→アメリカに移民した彼女の現代的な恋愛観の比較も良かった。
しかし白眉はラストのシークエンス。表面上はなんでもない会話の、立ち位置やちょっとした仕草、視線の動きが素晴らしいし、動いていっての(たしか)ワンカットでのラストの演出と演技が最高だった…
ああじゃないラストの可能性もあったと思うけど、そのどちらをも含んで、リアルな傑作なんだと思う。
アカデミー作品賞候補も納得。
袖振り合うも多少の縁
「他生」だと気づいたのはいつだったか。韓国にも同じことわざがあると知り驚きました。同じ文化圏なんだと改めて認識。
24年前の少女を求めてニューヨークまで行く男も男だけど、それを受け入れる女性も女性だなあ、と。さらにその二人の二日間のデートを許し、そのうえ3人で食事する旦那さんも・・・。
なのに、結局、3人ともよい人で、それがかえって、見ていてつらい気持ちになりました。
でも、人生って、そんな感じですよね。
なるほど賞賛されるだけはあるかなあ、と。
クールでかつ美しい。今、観るべきラブストーリーの筆頭です。
さすがA24。脚本、演出、総指揮のセリーヌ・ソンという素晴らしい才能を発掘した。ちょっとソフィア・コッポラを思わせるナイーブな作風。
ナヨンとヘソンは12歳の時に離れ離れになり、12年後には一旦連絡を取り合うようになるがニューヨークとソウルでそれぞれ暮らしているため恋愛関係までには至らなかった。更に12年後、ニューヨークで二人は再会することになる。この12年ごとという時系列と、繰り返されるイニョンという概念から、よくある因果応報というか「生まれ変わったら一緒になりましょう」のような話かと思っていたが、これは変化球でした。
ナヨン=ノラもヘソンもそしてノラの夫アーサー(ジョン・マガロ。「ファーストカウ」に続き繊細な素晴らしい演技です)も不可知論的に運命に左右されることがイニョンだとは思っていない。人生には選択を迫られる岐路が時としてあるものの、その時々の自分の判断や行動もイニョンであってそして不可逆的に昔に戻ることはできない。たとえノラのニューヨークでの成功がささやかなものであり、ヘソンは韓国で平凡でかつストレスフルな会社員生活を続けるのだとしても。
その諦観、でもそれぞれの人生をそのまま生きていくことの決意、希望をこのラブストーリーはクールに映し出し、だから美しい。
カメラワークが素晴らしい作品です。ブルックリン側のブリッジパークで撮影されたシーン群も美しいけど、特に最後のシーン、ヘソンと別れたノラがゆっくり歩きアーサーに迎えられアパートの階段を二人で登っていく、そしてドアが閉まるところまでをワンカットで捉えているところ。余韻というのはこういうことなのだなと感じました。
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