「倉敷・岡山の魅力を県外へ、世界へ」倉敷物語はちまん まろさんの映画レビュー(感想・評価)
倉敷・岡山の魅力を県外へ、世界へ
先日鑑賞の機会があり、久しぶりに筆を取ろうという気持ちが起きたので備忘録として。
技術的に拙い点があることは否めないが、それ故に低評価をつけるのはこの手の自主制作映画作品に於いてはナンセンスだと思う。
そもそも企画の発端が「コロナ禍で疲弊しきった倉敷の観光業界を元気づけたい」というもの。映画で一発当てて私腹を肥やしてやろう等という気持ちは毛頭ないのだ。尤も、自主制作映画を撮るという時点で慈善事業に近い。
演者においては演技経験のない地元の子どもたちを敢えて起用しており、尚且つこの作品は三城誠子氏の初監督作品である。
商業映画のように作り手のギラギラした野望が透けて見えて興醒めするようなことがなく、地域貢献・町おこしに一役買いたいという純粋さ、少女たちのひたむきな努力を感じ取ることができる。
身分格差のある中での友情、戦時下の過酷な運命といったストーリーはもとより、私はひとりの子をもつ親として、この作品の制作過程を想像するだけで涙が止まらなかった。
たった1シーン撮るだけでもどんなに苦労しただろうか。子供たちもきっと何度も悔しい思いをし、それぞれ思い悩むこともあっただろう。本編ダイジェストとなる走馬灯のようなラストシーン、そしてキャスト総出でのエンドロールのダンスは圧巻だ。
観光PRを目的としていることもあり、全世代が楽しめる工夫も随所に施されている。
個人的には明治と令和の融合(明治時代の映像のBGMに、令和のガールズポップをあてている)が斬新で面白いと思った。
今は無き倉敷東映劇場に掲げられていたような、昭和レトロな雰囲気のポスターデザインが刺さる世代も多いだろう。
岡山の美しい風景を、絶妙な画角で切り取るセンスは流石だ。(のちに監督の本職がデザイン会社だとわかり、納得)
着物の着付けも美しく、小道具も細部まで作り込まれている。
本作での経験をもとに、きっとさらにパワーアップするであろう続編にも期待したい。