波紋

劇場公開日:

波紋

解説

「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、震災、老々介護、新興宗教、障害者差別といった現代社会が抱える問題に次々と翻弄される家族の姿を描いた人間ドラマ。

須藤依子は「緑命会」という新興宗教を信仰し、祈りと勉強会に励みながら心穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、十数年前に失踪した夫・修が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたままいなくなった修は、がんになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子・拓哉は障害のある恋人を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが……。

主人公・依子を筒井真理子、夫・修を光石研、息子・拓哉を磯村勇斗が演じた。

2023年製作/120分/G/日本
配給:ショウゲート
劇場公開日:2023年5月26日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11
  • 画像12
  • 画像13
  • 画像14
  • 画像15

(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

映画レビュー

4.0もう二度とあの頃には戻れない家族の肖像

2023年5月30日
PCから投稿

荻上直子は作品ごとに進化している。特に本作では日本人として忘れることはないであろう震災や原発事故に端を発する、心の中で何かがねじ切れてしまったかのような歳月を、奇妙に、緩やかに、しかし人間の内面を抉るような鋭さで綴っていく。皮肉な運命を辿る須藤家は、さながらこの5〜10年間の世の中の縮図というべきか。とはいえ、そこは荻上監督、夫の失踪直後の家族がバラバラになっていく崩壊図ではなく、期せずしてもう一度食卓を囲むことになる再会図に焦点を当てたズラシが効いている。それは涙や怒号が飛び交ういちばん悲惨な時期を過ぎて、もはや各々があの頃の家族のかたちには二度と戻れないのだと身をもって理解に達するための儀式。あるいは達観のダンスか。物語のそこかしこを「水」の要素が貫く構成が興味深く、家族という名の水上で波紋を起こしあう筒井と光石の妙演には、夫婦が互いの存在意義を根底から否定するような静かな凄みが漂う。

コメントする (0件)
共感した! 15件)
牛津厚信

5.0面白い!

2024年4月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

色んなマイナス凹凸ありましたが、弱そうで強い女性で中々すごいなぁと。
表情での表現や視線での感情表現にとても引き込まれ魔した!

コメントする (0件)
共感した! 1件)
もひょもひょ

3.5一番強いのは

2024年4月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 2件)
共感した! 2件)
りか

3.5筒井真理子劇場(ホラー風味を添えて)

2024年4月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

笑える

怖い

筒井真理子が演じる須藤依子は、新興宗教「緑命教」の信者だ。スーパーのレジ係をして慎ましく暮らしているが、
ある日、蒸発していた夫(光石研)が突然帰ってくる。
がんを患い高額な医療負担に対して、蒸発中に亡くなった父の遺産をあてにして戻ったことが分かる。

筒井真理子の演技が実に見事だ。

◆職場の仲間(木野花)とおしゃべりを楽しむ顔
◆宗教団体の集会で真顔で歌い踊る顔
◆夫に向ける憎悪と殺意と憐れみの混じった顔
◆一人息子(磯村勇斗)の彼女(津田絵理奈)に向ける差別の顔

まさに百面相だが、決してエキセントリックな存在ではない。普遍的な女性像を表している(と思う)。。。

夫が蒸発した後の労苦が、彼女を新興宗教に走らせ、性格を歪めたのか?

いや、
どうやら、違うかもしれない。

一人息子が、母に叫ぶ。
「父さんは放射能から逃げたんじゃない。母さんから逃げたんだ」

映像の至るところに「水」が象徴的に使われる。

宗教団体が信者に売る水(緑命水)、庭の枯山水、プール、演者が対峙する場面のCG、ラストシーンの雨…

波紋は「水」がないと生じない。
「水」に何かモノが落ちると波紋が生じる。
しかし、水がなくても生じる波紋もある。

枯山水は、水を使わず波紋を表現する。

彼女にとって、大小の違いはあるが、
家族も、
カスハラおやじ(柄本明)も、
隣の主婦も、
その飼い猫も、
宗教団体のメンバーも、
すべて波紋(実態のない不安をかき立てる事象)にすぎないのかもしれない。

筒井真理子、光石研、津田絵理奈が素晴らしい演技を見せている。
最後の最後まで見る側を引っ張りきる脚本に敬意を表したい。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
Haihai
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る