怪物のレビュー・感想・評価
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今までとは毛色の違う是枝作品。
今までの是枝監作品と言えば、脚本から編集まで全て自己完結。何気ない日常を切りとったような静かな画がスクリーンに映し出されていた。が、今回の脚本は坂元裕二さん。一つの事柄を立場の違う人たちが多方向から見ることで、感じ方や受け取り方が全く違ってくることの怖さ。そして、誰もが怪物(モンスター)になりうるし、善と悪を単純に線引きも出来ないことが上手く描かれていた。田中裕子演じる小学校校長の能面のよう表情の不気味さに気持ちがザワザワした。無表情の中にも喜怒哀楽を表現しているところが流石と思った。子どもたちには子供たちの、親には親の、そして学校には学校の立場から見えるものや感じることが有って、何が正解で間違いなのか?これって普段の生活の中でも有ることで、一方的な見方考え方に警告を出していてくれているのか?と思ったりもした。
ホルンの音色が悲しく聞こえる
物語をそれぞれの視点から作り上げていくと、本当はこうだった。と、見方がどんどん自分の中で変わっていく。
これは、本当にいじめなのか?暴力なのか?
親の視点から見ると、怪物は教師。
教師の視点から見ると、子供も親も怪物。
子供の視点から見ると………
私の視点から見ると、嘘が怪物を作り出す? 言葉にまとめられない…が、本当の感想。
「お父さんみたいになれなくてごめんね」の本当の意味が分かった時の衝撃が、涙になる。
2人がクリーンな緑の中で走り回る姿を見て、じわじわと涙になる。
2人には2人にしか分からないことがあり、2人のこの時間を壊さないで…と願い、観終わった。
やはり、この映画はスゴい。
そして、スゴい演技力です。
田中裕子さんが、ホルン片手に語った言葉とシーンがとても心に残りました。
噂や憶測の醜さ
極上のサスペンス
是枝裕和が坂元裕二の脚本で映画を撮る…と、聞いただけで期待感が上がった本作。
やはり、坂元裕二の作劇は見事で、教師による行き過ぎた指導、学校内のいじめ、組織的隠蔽という社会問題を材料にすることで観客を巧みに惑わせる。だがしかし、これは歴としたサスペンスだ。
是枝監督の子供への演出は相変わらず上手い。
それに応えた黒川想矢くん、柊木陽太くんの二人が素晴らしい。
そして、本作もまた安藤サクラである。一人息子を全身で愛し全力で守ろうとする、夫と死別したシングルマザーを自然体で演じてリアルだ。どんな監督の下でも説得力のあるパフォーマンスを見せる安藤サクラではあるが、是枝監督こそ最も相性が良いのではなかろうか。
そこに永山瑛太、田中裕子という坂元裕二馴染みの役者が加わって実力を発揮している。
坂元裕二という脚本家に初めて衝撃を受けたのは、テレビドラマ「わたしたちの教科書」だった。学校を守ること(=学校という制度を守ること)が最大の正義だと考える女性校長の存在が、このドラマと本作で共通している。
同じ事象でも視点によって見えない事実があることを描いている点においても、「わたしたち…」に共通するように思う。
対立側の視点で再現することで種明かしする構成はサスペンスでは珍しくないが、本作はそれを“羅生門効果”で見せていく。
また、種を明かした後の解釈を観る側に背負わせるところも「わたしたち…」に通じ、これは是枝作品全般にも通じるものだろう。
少年はなぜ、教師を貶めるような言動をしたのか。
少女はなぜ、少年のことで教師に嘘をついたのか。
子供たちはなぜ、目の前で起きた事実をそのまま教師に伝えることができなかったのか。
校長はなぜ、一人の教師に全てを背負わせることができたのか。
同僚教師たちはなぜ、追いつめられた教師を助けられなかったのか。
虐待親父はなぜ、息子のことを恐ろしいと言ったのか。
教師はなぜ、たったひとつの作文で二人の少年の関係に気づけたのか。
疑問は謎のまま、このテクニカルなサスペンス映画の仕掛けを純粋に楽しみたい。
実にお見事な映画だ。
永山瑛太の二面性の描きかた、少年たちの同性愛を匂わせたところにやり過ぎ感があり、☆0.5減点。
エンディングの後、母安藤サクラはどこまで真実を理解するに至るのだろうか…。
学校の管理職が怪物
あの火事からそれぞれの登場人物の視点で語られる物語の真実。どんどん謎が解明されていく展開が良かった。しかも、その謎もなんとも切ない。
先生の人間性や自殺の描写などがうまいミスリードを誘っている。
学校の校長教頭など管理職の対応がとても良くない。
あと、担任もあれだけ派手ないじめがおきていたらさすがに気付きそうだが。もしかしたら見て見ぬふりをしていたところもあったのかもしれない。
いずれにせよ、学校の保身に走った管理職たちが1番の怪物と言っていいのではないか。
クラスの子供たちや、学校の先生たちなど、個人だけでなく、複数人になればなるほど怪物になっていくのかも。
子どもには子どもだけの世界がある。2人の関係性は恋愛とも言い難い何か特別な関係性だったと思う。
答え合わせがしたい。
いい作品
日本語字幕つきで鑑賞。 全く予備知識なしにまっさらな頭で見ると先ず...
人間の行動の奥には何が潜んでいるのか。カンヌ映画祭脚本賞受賞が頷ける。
カンヌ凱旋記者会見全文から一部引用
坂元裕二脚本の言葉「常に言葉というものに疑いを持ちながら物語を紡いでいます。常に人と人は対話をしながら、そこに誤解が生まれ、争いが生まれ、分断が生まれています。しかし、同時に言葉には、愛情を伝える力がある。その矛盾した存在である言葉と、私たちはどのように付き合っていけばいいのか。」
3部構成で一つのストーリーが別の角度から描かれ、何が本当なのか考えさせられる。自分たちが理解していることは単に見聞きしたことが全てではなく、他人の見方や現に目の前の人の発言や態度もそれが真実なのかは分からない。本人の発言も感情で変わっていく。
それを紡ぎ合わせ、是枝裕和監督と坂元裕二脚本家が傑作を生み出した。カンヌ映画祭での脚本賞受賞も頷ける。
安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子らの一見不自然な演技も戸惑うが、中でも二人の同級生の少年の黒川想矢と柊木陽太が素晴らしい。特に女の子かと思わせる柊木陽太の可愛らしさの反面、たくましくもあり知的で行動的な男の子はちょっと現実離れした印象を受けたが、とても良かった。
お勧めの映画である。
<参考>
オフィシャルサイトにある
2023.06.21 カンヌ凱旋記者会見全文を見てほしい。
観た人の数だけ「怪物」がいる⁉︎
教育現場の闇
人はみんな嘘をつく
一枚一枚取り除かれた時、何を思うか。
立場の異なる人間がある同じ出来事を見た時、それぞれが見えるものには限界がある。
母親、先生、子供たち。本作は、ある一つの出来事をこの三者の視点で描いていく。
片方の行方がわからなくなった我が子の靴、水筒の中から吐き出される泥水。母親は、息子の身に何かよからぬことが起きたと感知し、その予感は彼の口から発せられたある大人の仕打ちによって明確に彼女の中で、悲しみと不信感と怒りに変わっていく。そして、彼女は「モンスターペアレント」と称される。
彼女の息子へある仕打ちをしたと思しき人物も、日々何気なく口にしている言葉が、誰かを深く傷つけてることを知らずに生きている。そして、周囲の人間のことなかれ主義や、常識や固定概念の壁に囲まれてしまい、身動きをとれなくなった彼の善性はわかりやすい「悪」に強制的に塗り変えられていく。
この、二重にも三重にも彼らの本当の姿を覆い隠してしまってる大人たちの固定化された価値観や思惑や事情が、物語が進むにつれ露わになり、一枚一枚取り除かれ、時に「怪物」扱いされてた彼らの本当の姿を映しだしていく。
そしてその過程、大人たちが、これまで見逃してきたことの重大さに気付かされ、激しい悲しみに襲われる。
非力で、柔らかな彼らの心は、大人たちの無理解な言葉や振る舞いに戸惑い、理解できず、それでも大人たちに縋り、頼りにしてくれてたのだ。しかし私たちは、彼らをただしく見つめることはできず、彼らはうち捨てられた乗り物の中にユートピアを作り、そこに束の間の安住の地を見つけた。その姿は、ただただ切なく愛おしい。
ラスト、全てが崩壊するかに見えたその時、彼らは自らの意志と力で飛び立つ、新しい世界へ。
それは、きっと優しく美しい世界だと、私は信じたい。
是枝映画として見れば…いかにもの作品
大きな賞を取っている、国内マスコミ、批評家らの評判も高い。
映画ファンなら、チェックしておきたい、チェックすべき作品だろう。
東京・下町の映画館は7割くらいの入りだったが、公開3週目に入った平日昼という条件でいえばかなり盛況という印象だ。
学校(小学校)が舞台で、子、教師、親…の関係性から「怪物」とは何か――それをうまく考えさせる内容になっている。脚本も確かに秀逸。
映画的表現としても、見る側がいつの時点に立ち戻って登場人物の心象とそれを取り巻く状況がどうなっているのか――考えながら見ないといけない編集は、スクリーンへの集中を切らさせないようにする意味では成功している、と思う。
ただ、これまで是枝が描いていた世界とは大きな違いはない。
子供がどういう考えで、息苦しさのある「世界」で行動するのか…それを是枝の視点で解き明かしていくという点に新しさはない。
それなりに面白く、ややサスペンス的な味もあり、地味な題材ながら成功した作品だ。
しかし、これを敢えて他の人にも、いい映画だ、感動できる――とおススメしたいとは思わない。
従って、敢えて辛口で★2つとした。
映画館で映画を見る回数が年に片手に足りない人が、「話題作、世界も評価した映画を見た」――と言いたいのなら、そういう人は今見ておいたほうがいい。
しかし、10年、20年のスパンで考えれば映画史に残るようなものではない。僕にとってはそこまで見てもらいたいとは思わない。
藪の中
認知バイアス
水中の怪物達
例えば、怪物は台風、ライフル。誰だは欠片、アゲハ。火事は愛。母はバカ…のように、水の中では母音が同じなら同じように聴こえる。でも全然違う。
そんな映画だった。
世の中の何かの事象は、誰か一人だけでは成立しないので、ワタシがいてアナタ1がいて、アナタ2がいて、アナタ3がいてと波紋は延々と拡がる。それぞれの視点でみるとそれぞれの波があり、全く同じ波はない。
怪物誰だをするように自分にはみえない答えを相手のヒントで解き明かしてゆく、ヒントをどう読みとるか、そんな映画でした。
観てから少し経つけれどふとした時にあのときの画が思い出され、あのシーンはもしかしたらこういうことだったのかな?と思うときがあります。
そんな映画です。凄いよね。
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