劇場公開日 2024年3月2日

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すべての夜を思いだすのレビュー・感想・評価

全17件を表示

4.5「すべての夜を思いだす」をめぐる記憶の記録

2024年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

楽しい

知的

本作については当サイトの新作評論の枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書いてみる。また評論では触れなかったが、私は多摩ニュータウン在住であり、縁あってこの映画のロケ撮影に何度か立ち会わせてもらった。その際の裏話的な情報も書き残しておきたい。

【コロナ禍の影】
撮影の大部分は2022年5月に行われた。知珠(兵藤公美)が諏訪商店街の和菓子店で元同僚と偶然会い店の前でしばし歓談するシークエンスなどでは、通行止めをせずに撮影したため、背景で行き交う歩行者や自転車に乗った人たちの多くがマスクを着用しているのが確認できる。作中ではコロナへの言及はなく、登場人物らもマスクをしていないが、接客業(着物の着付)だった知珠が雇い止めされたことや、夏(見上愛)の「ほぼ大学行ってない」という台詞などは“コロナの時代”を思い出させる。

【知珠と案内人たち】
旧友から届いた転居通知の葉書を頼りに、多摩ニュータウンを訪れた知珠。路線バスの運転手への問いかけから、聖ヶ丘を目指しているのだとわかる。それから先述の元同僚(能島瑞穂)と、信号のあるT字路で歩いていた人(小説家の滝口悠生)に、2回道を教えてもらうのだが、実は2人とも聖ヶ丘とは真逆の方向を案内している。もちろん劇映画なので現実の地理の位置関係と正確に対応している必要はないものの、評論で言及した平行世界のことも考え合わせると、町の配置が微妙に異なる別世界に知珠もまた迷い込んでしまったと考えることもできそうだ。

【脚本へのこだわりと柔軟な演出】
清原惟監督自身のオリジナル脚本であり、撮影時に台詞の一語一句にまでこだわりを感じさせる場面も目にした。たとえば夏と文(内田紅甘)がカフェスペース(ロケ地は多摩市立グリーンライブセンター)で会話するシーンでは、リハーサル中に台詞中の単語一つの言い違い(意味は大きく変わらない類義語)を、監督が指摘してリハーサルをやり直す場面が見られた。言葉一つの違いで微妙に変わるニュアンスにこだわったのだろう。

反対に、演者と現場の状況から即興的に作られたシーンもある。夏と文が東京都埋蔵文化財センター内で過ごすシークエンスのうち、土器の破片をくっつけてパズルを完成させるシーンや、土鈴の音が再生される装置の前で音に合わせて両手と体側でパタパタ鳴らすシーンなどは、元々脚本にはなかった。現場での待ち時間で見上と内田がパズルや装置で遊んでいるのを監督が面白がり、追加シーンとしててきぱきと演出したのち本番を撮影したのだった。

【杉田協士監督作「彼方のうた」との共通項】
清原監督と同様杉田協士監督も多摩市出身であり、今年1月に公開された杉田監督の最新作「彼方のうた」も本編の一部が多摩市でロケ撮影されている。「彼方のうた」が聖蹟桜ヶ丘駅南側の既存地区、「すべての夜を思いだす」がニュータウンとして造成された新住地区を舞台にしているので、地元住民にはどちらも見慣れた風景だが、土地勘のない観客が2作を見比べたらずいぶん違う印象を受けるのではないか。

2作ともに映画のルックと空気感に大いに関わる主要スタッフである撮影の飯岡幸子、照明の秋山恵二郎、音響の黄永昌らが共通しているのも興味深い。どちらの映画も明解な起承転結があるストーリーというより、主要人物らの移動、他者との関わりあい、内面の変化などに観客が寄り添うような心持ちで想像したり共感したりするタイプの作品なので、なおさら映像と音が醸し出す雰囲気は重要であり、彼らスタッフの貢献も大きい。

2月17日には地元多摩市でTAMA映画フォーラム主催の「すべての夜を思いだす」の先行上映会があったが、今秋の映画祭TAMA CINEMA FORUMではぜひ、「彼方のうた」と「すべての夜を思いだす」の2本立て上映を企画して、アフタートークで杉田監督・清原監督の対談も実現させてもらいたい。

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高森 郁哉

3.5団地内の彷徨いを通じて浮かび上がってくるもの

2024年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作にとってニュータウンは一つの題材であると共に主人公ですらあるのかもしれない。昭和の高度成長期を経て、一体どれほどの人々がここで歳月を刻み、生活を重ねてきたのだろう。群像劇スタイルで3人の女性たちが各々の理由を持って広大な団地を彷徨うこの映画は、彼女たちの存在感、個性、歩き方、視点、表情を柔らかく響かせつつ、透明感に満ちたニュータウンの景色を浮かび上がらせていく。それは確たる意味や定義をつかまえるのとはまるで違い、さながら冒頭の気心しれたミュージシャンたちによる緩やかなセッションのように、とても有機的な生のハーモニーを感じさせてくれるもの。本作を享受しながら、ストーリーやプロット云々を超え、薄れかけていた自身の生家の記憶が俄かに蘇ってくるのを感じた。ニュータウン。外見は物言わぬ住居の連なりであっても、そこは無数の人々の暮らしが、笑顔が、その思い出が、今なお時間を超えて響き合う場所なのだ。

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牛津厚信

3.0ほとんど忘れ去られる

2024年11月17日
Androidアプリから投稿

Asian film joint 2024にて
短編のこれが星の歩き方(作品ページが無い💦)と同時上映
核家族化、高齢化で高度経済成長期から様変わりの多摩ニュータウン
土器は時代を経ても残る、写真もある程度残るけど花火はパッと終わるものの象徴 3人が微妙に交差するけれど結局三者三様で晴れた☀空とは裏腹に儚げなスッキリしないお話しだった
しかし演じる女優さん達暑苦しくないし、映像やカメラワークなんかも好きな人には刺さるのかも

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ゆう

3.0息づく街、つながる記憶

2024年9月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

かつてのにぎわいは去りつつも、静かに息づき続ける多摩ニュータウンを舞台に3人の女性のある日を描く群像劇。なんて事ない日常がマジカルで、懐かしさと親近感と。自分の中にあるあの頃が呼び覚まされるような、日常の延長にある心地よさ。描き過ぎない余白も良い。

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A子

2.0スカラシップを取って

2024年7月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

こういう作品を作った目的は、おそらく画作りとムード作りだったんだと思う。画作りはまぁ良い、団地の規則的な所、人工的な緑、だだっ広い感じの郊外。「HERE」という作品を観た感覚に似ていた。ムードは・・最初の女性がちょっと合わない、切羽詰まった感じがしない、人任せ? イライラした。居心地悪さ、噛み合わなさを表現したかったんでしょうが、所々で流れるジャンクぽい音楽も耳障りだった。
きちんとしたストーリーを形成する必要はまだないのかもしれない、取りあえずうとうとせず観終えた。

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トミー

2.5白のクロスバイクかっこいい

2024年5月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

見終わって、何か重要なシーンを見落としていたのではないかと不安になってしまう。
人間関係が、雑草の生い茂るところは古くてウェット、手入れが行き届いている所は新しくてドライなゾーン、という事なのだろうが…
ところどころに魅力的なカットがあるのだが、未調理の食材だけ並べられたら美味しさを想像するしかない。

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ひろちゃんのカレシ

2.5悪くはなかった

2024年4月28日
iPhoneアプリから投稿

鑑賞後、街を歩くのが新鮮に感じた
自分の人生もフィクションであるかのように。

また、地元の事を思い出したりしていた。
隣に素敵なおじさんが住んでいた。
井上陽水に似たその人はポメラニアンを飼っていた。
今はもうその家は焼かれてしまったりしている。
そんなことを思い出して、少し悲しくなったりした、
そんな不思議な映画だった。

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JYARI

2.0直ぐに褒めたがる…

2024年3月11日
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ビビ

0.5ダブルスタンダードって言葉の意味をご存知ですか?

2024年3月11日
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二重規範(にじゅうきはん)またはダブルスタンダード(英語: double standard)とは、同じ人物・集団において、類似した状況に対してそれぞれ異なる対応が不公平に適用していることへの皮肉の言葉だそうです。

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東鳩

1.5ただ撮っただけに観える

2024年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

兵頭公美が主演だから観に行っちゃうよね。面白いと思うもん。
でも面白くないの。あらゆる意味で面白くないの。
スクリーンに映るものをただ観た二時間だったな。

ストーリーはないの。
それで登場人物の心情を淡々と描いているかというと、そんなこともないの。
登場人物は事情を抱えていそうだけど、それがどうしたとかないの。

映像がキレイということもないの。
音楽とダンスは凝っていると思う。ここはひょっとしたら面白いのかも知れない。でも僕にとっては面白くないの。

役者の良さを引き出しているということもないの。
見上愛の友達役の人は良かったな。

でも、こういう作品を観るために、映画館に通っているのかも知れない。そこは良かったよ。

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Scott

4.5たどり着かない移動。

2024年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年。清原惟監督。多摩ニュータウン内を動き回る3人の女性の1日。失業中の女性は整理したはがき類から見つけた転居届を頼りに友人宅を探し、住宅のガスの検診を仕事とする女性は住民と関わり、幼馴染の一周忌を迎えた大学生は自転車を走らせながらその死に思いをはせる。持て余す時間を埋めるように無理に設定した目標を目指して歩く「徒労の歩み」、仕事として巡回しながらその都度の出来事に誠実に対応して歩く「注意力の歩み」、喪失を埋められないまま焦燥感そのままに自転車で疾走する「喪の走り」。三者三様の移動の様相が、時に交錯しながら、団地、公園、道路で展開する。ただ移動しているだけなのだが、構図もテンポも音楽もすばらしいので、まさに団地、公園、道路であることから引き起こされる情動が生み出されている。
見る―見られる関係のうち、見られる方が強調されている。主観ショットではなく客観ショット(そんな言葉あるのか知らないけど)が多用されている。まあ、見られている姿が描かれるということだが。わかりやすいのは3人目のダンスをしている女性。ダンスを正面からとらえたショットはなく、後ろ姿か背後に焦点となる人がいる横顔のみ。「ダンスをしている」のではなく「ダンスが見られている」表象。他にも多数。
移動し続ける3人だが、いずれも正しい場所にはたどり着かない。しかし、同じエリアを複数の形で移動する、ということが強烈に刻印されている。

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文字読み

3.5多摩モエタウン。

2024年3月5日
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鑑賞方法:映画館
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ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。

5.0脚本、カメラ、音響すべてのレベルが高い、今年のベスト級

2024年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

舞台は、監督自身が子供の頃に住んでいたという多摩ニュータウン。そこに住む (あるいは働く) 三人の女性を中心にその一日を描く群像劇。ニュータウン内ロードムービーの風情もある。

小さなエピソードの積み重ねが愛おしく思えてくる類の作品。「団地映画」というジャンルがあることを他の方のレビューで知ったが、まさに本作は団地が主役でもある。自分自身、団地住まいをしたことは無いのだが、シーンの随所に懐かしさのようなものを感じるのは何故なのだろう。

冒頭の、望遠系レンズを使った長回しのカットからすでに傑作の予感。かと思うと、引きの絵の面白さも本作の特徴で、帰ってから調べたら、撮影はなんと 飯岡幸子。三人の女優のみならず出演者全員のセリフが極めて自然で、カメラワークと合いまってドキュメンタリーを見ているよう。
音響の 黄永昌 はやはり 杉田協士 や 草野なつか 組のスタッフ。冒頭のバンドの音、シーン転換に流れる音楽のカケラのようなもの、梢のざわめき、鳥のさえずり、防災無線の声、土鈴の音、花火の音 などなど。

納得の座組みで、とにかく脚本、カメラ、音響 すべてのレベルが高い。今年のベスト級。俄然 清原惟 監督の過去作を観たくなってきた。

パンフは ¥1800 と高額ながらは小冊子の建て付け。付録の「A Map of Remembering Every Night」は、多摩ニュータウンの地図にロケ地や監督の思い出の場所がコメントともにマッピングされていて実に楽しい。

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Jellyfish

0.5のペ〜

2024年3月2日
Androidアプリから投稿

寝られる

多摩ニュータウンで暮らす世代の異なる3人の女性のある日をみせる群像劇。

求職中の以前は着付けの仕事をしていた女性、ガスの検針の仕事をする女性、ほとんど学校に行っていない大学4年生という3人の様子を行ったり来たりしながらみせていくけれど、どの話しも起承転結の起すらも無い様な感じ。

確かに変わったことがあったといえばあったのかも知れないけれど、機微をみせたい様にも感じられず。

最近良く言われるみんな違ってみんな良い?成るように成る?まさか発達障害は個性の延長とか訴え掛ける程深い様にも感じないし…何が言いたいのか、何が見処なのかまるでわからなかった。

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Bacchus

1.0あれ?

2024年3月2日
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鑑賞方法:映画館

よくわからない作品でした。

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完

2.0トークショーを聞いて解釈を照らし合わせられたり工夫を知れたりしたけ...

2024年2月19日
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鑑賞方法:試写会

トークショーを聞いて解釈を照らし合わせられたり工夫を知れたりしたけど映画だけだと面白みを全く感じられなかった。

・多摩先行上映

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hannnamovie

3.0抜群の映画センス、ひよわな脚本

2023年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

いまの日本映画の作り手の中では群を抜く映画的センス。すぐれたショットはたくさんあって、団地での夜の花火、暗がりから歩いてきてふっとベンチに腰かける女、暗い作業室でモニターを眺めている男女の背中…と、数え上げるときりがない。ここはしっかり評価すべき。

だけどさ、いまの日本映画の通弊からも逃れられていない。何かを言おうとするとためらう・口ごもる・後ずさる。すべてがふわわん・ぽよんと軽くて淡くて、強く主張する・言い切ることに怯えている。すべてが意味ありげなんだけど、それが実は何を意味するかを精密につきつめて考える困難から逃げている。これを制作側は「余韻が深い」と自画自賛するんだけど、国外に出したら「脚本が甘い・弱い」としか見られないのでは。

これはたぶん、プロデューサーがしかるべき責任を果たしていないのだろうなと。同じ監督の前作『わたしたちの家』には確かな強さがあったし、間違いなく濱口竜介『PASSION』につづく清新なデビュー作だった。次回作はもっと優れたプロデューサーを得て、もっと力強い語りを獲得してほしいところですね。

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milou