劇場公開日 2024年3月2日

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「抜群の映画センス、ひよわな脚本」すべての夜を思いだす comeyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0抜群の映画センス、ひよわな脚本

2023年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

いまの日本映画の作り手の中では群を抜く映画的センス。すぐれたショットはたくさんあって、団地での夜の花火、暗がりから歩いてきてふっとベンチに腰かける女、暗い作業室でモニターを眺めている男女の背中…と、数え上げるときりがない。ここはしっかり評価すべき。

だけどさ、いまの日本映画の通弊からも逃れられていない。何かを言おうとするとためらう・口ごもる・後ずさる。すべてがふわわん・ぽよんと軽くて淡くて、強く主張する・言い切ることに怯えている。すべてが意味ありげなんだけど、それが実は何を意味するかを精密につきつめて考える困難から逃げている。これを制作側は「余韻が深い」と自画自賛するんだけど、国外に出したら「脚本が甘い・弱い」としか見られないのでは。

これはたぶん、プロデューサーがしかるべき責任を果たしていないのだろうなと。同じ監督の前作『わたしたちの家』には確かな強さがあったし、間違いなく濱口竜介『PASSION』につづく清新なデビュー作だった。次回作はもっと優れたプロデューサーを得て、もっと力強い語りを獲得してほしいところですね。

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milou