劇場公開日 2024年3月2日

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「団地内の彷徨いを通じて浮かび上がってくるもの」すべての夜を思いだす 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5団地内の彷徨いを通じて浮かび上がってくるもの

2024年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作にとってニュータウンは一つの題材であると共に主人公ですらあるのかもしれない。昭和の高度成長期を経て、一体どれほどの人々がここで歳月を刻み、生活を重ねてきたのだろう。群像劇スタイルで3人の女性たちが各々の理由を持って広大な団地を彷徨うこの映画は、彼女たちの存在感、個性、歩き方、視点、表情を柔らかく響かせつつ、透明感に満ちたニュータウンの景色を浮かび上がらせていく。それは確たる意味や定義をつかまえるのとはまるで違い、さながら冒頭の気心しれたミュージシャンたちによる緩やかなセッションのように、とても有機的な生のハーモニーを感じさせてくれるもの。本作を享受しながら、ストーリーやプロット云々を超え、薄れかけていた自身の生家の記憶が俄かに蘇ってくるのを感じた。ニュータウン。外見は物言わぬ住居の連なりであっても、そこは無数の人々の暮らしが、笑顔が、その思い出が、今なお時間を超えて響き合う場所なのだ。

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牛津厚信