The Son 息子のレビュー・感想・評価
全61件中、21~40件目を表示
感情を揺さぶられる映画
愛だけでは…
前妻との息子ニコラスの様子がおかしいとの連絡があり、彼の希望通り一緒に暮らし始めた父ピーターだったが、ニコラスの状態は安定せずに…といった物語。
子供をもつということ、良き親であることの難しさを訴えかけてくるドラマ作品。
とにかく不安定なニコラス。学校で何かあったのか??やはり家を出ていった父親が原因なのか…??でも、ピーターを完全に憎み切っているという訳ではなさそうだが…
そんな彼を取り巻く皆も大変。
不倫はダメだが、仕事にニコラスや前妻ケイト、ベスのケアも出来ることは全部全力のピーター。
また、そんなニコラスと暮らすことを了承するベス。普通こんなことできませんよね。懐の深さに脱帽。
そしてお母さんケイト。急に一人にされて…。
そもそも最初はお母さんが嫌!的なことを言っていた気がするが、結局なんだったの?
まぁ当の家族ですら分からないのだから、不安定になったニコラスの気持ちは誰にもわかりませんよね、本人にさえ。
とにかく状況が複雑ですね。
不倫して再婚してそこには新しい息子もいて、でも助けを必要とする前妻やニコラスがいて…
もとはピーターに悪い部分があったのは確からしいが…かといって出口はもうどこにも無いものなのか?それはキツすぎる。
愛だけでは乗り切れない…まさにその通りだが、答えのない家族の物語をまざまざの見せつけられたような、そんな作品だった。
何が問題なのか、それも大事ですが、どう解決するか、これが大切ですよね!
…って書いた所で、これではピーターやホプキンスおじいさんと同じことを言ってしまっているような気がしたワタクシだ。
繰り返しになるが、家族の問題って本当に正解がないですね。
自分の家族を持ったことのない私が100%理解できることではないかもしれませんが。。
く〜るー、きっとくる〜
父と息子の呪縛
ヒュー・ジャックマンがスーツを着てNYのオフィスで働く役は珍しい。エリート弁護士、そして若い女性と再婚して赤ちゃんもいる。現代のアメリカなら珍しくない設定かもしれないが…でもヒュー・ジャックマンだ。個人的には結構思い切った役に挑戦したのでは、と感じた。
脚本が良かったと思う。努力して仕事で成功をつかみ、家庭も円満で全て文句なし、なんてことはなかなかないのだ。何かを優先すると、必ず何かご犠牲になる。そのバランスをどう取るのかそこが人生重要で、完璧そうに見える主人公に、その迷いや苦悩が見えてくる。息子は親を映す鏡のようにも思える、温かくも辛い作品だった。
好みではなかった・・・。救いがない。。。
監督が作品に込めたものはなんだったのか。。。
説明や内面描写を表出させる演出は多いが要所要所の確信については
意図的に語らない作品。
精神障害(特性)、アディクション。
自傷行為や他害行為について監督自身、見識がある事は作品を観ていて
感じる事ができます。
※周りの対応が最悪な対応のオンパレードでわざと演出している気がしましたし。
※本人の現在ある状態も凄く分かりやすい形で演出されています。
※あくまで個人の感想です。
故に愛情から出ると思われる対応が実は本人を苦しめる事につながる。
その理解があれば、この様な悲劇はなくなるのでは?
病気の症状としての専門的な内容と愛情は分けて考えましょう。
というメッセージなのかとは思いますが・・・。
ただ、個人的に少し演出方法があまりにも直接的で・・・。
無粋に感じて好みではなかった。。。
※特に銃の示唆と最後の小道具としての銃の役割とか・・・。
愛ではどうにもならないというのに。
悲劇で終わらせてほしくない
別れた元妻のもとにいた息子が思春期を迎え、精神的に不安定になったことから、父親として向き合う姿をヒュー・ジャックマンが熱演。
若い奥さん・可愛いベイビー・仕事もキャリアアップのチャンス到来と、絶好調の生活に突如訪れた息子という存在に、徐々にペースを乱され、なかなか上手くいかない苛立ちと葛藤が伝わり苦しかった。
「愛では治せない、これは病気であり治療は医者の仕事です」
そう精神科医が断言したシーンが印象的。親だからという愛情は勿論、責任感からも家族で解決しようとするケースも多いと思いますが、こういったお医者様と出会えたことは彼らにとって幸せだったはずなのに。
ラストは予想通りの展開になってしまったことが、物語としても作品としても残念。悲劇を回避できる道筋と希望をみせてほしかったなぁ…。
エンドロールまでがひとつの映画
「ファーザー」でとても感動したので期待が大きかったのですが、今回は当事者を疑似体験というものではありませんでした。ぐるぐるまわる洗濯機が暗喩的。
鬱がなんたるかではなく、それに寄り添うことの難しさや、(医師たちはnot enoughと言っていたものの)愛情深く支えようとしてくれる数々の手があること、彼らも同じように悩みながら生きていることを示しているのかな、と解釈しています。(それから、医療的措置の重要性も。でもこの脚本に関しては、医療従事者から当人へ同意を得る方法は、もっと別の持って行き方もあったのではと思ってしまう)
悲しい終わり方ではありますが、エンドロールの一番最後のメッセージを読むまで席を立ってはなりません!
あれも日本語訳して出すべきだと思いました(そして記憶しておくには長すぎて、共有できず残念です。。)
子育てって、ほんとうに難しい。
23-049
愛は万能か?
A.ホプキンスの存在感がヤバすぎる。
登場人物とともに迷い、惑った後で、やりきれなさをかみ締めました。
前作「ファーザー」に続き、フロリアン・ゼレール監督が、ふたたび「家族」に向き合いました。「家族3部作」の2作目で、前作と同様、自身の戯曲を映像化したものです。前作となる『ファーザー』(2020年)は初長編監督作でアカデミー賞2部門に輝きました。
タイトルはズバリ「息子」です。作品同様に思春期のお子さんをお持ちで、どう接していいのやらお悩みの方なら、どうしても父親の視点で見てしまうことでしょう。
特に世代間の確執がいや応なく示されるあの一言を巡る応酬。それは困難を前にした息子に対し、その手を取り、「乗り越えろ」と期待する言葉でした。親として息子を鼓舞し期待することは罪なのでしょうか。ついつい当然のことと思って、「励ましてきた」のだったら、本作の驚愕すべき結末に触れて、それが本当に親だから当然なのか?と答えのない質問を出された気がしました。
舞台はニューヨーク。優秀な弁護士のピーター(ヒュー・ジャックマン)は、再婚した妻ベス(バネッサ・カービー)と生まれたばかりの子供と忙しいながらも幸せな毎日を過ごしていました。ある日、離婚した元妻ケイト(ローラ・ダーン)が来訪。ケイトと暮らす17歳の息子、ニコラス(ゼン・マクグラス)が学校に通っていないと知り、息子と久々にと面談することになります。そして、ニコラスからいきなり父親の家に引っ越したいと懇願されます。かつて妻と息子を捨てた負い目もあったのか、ニコラスを引き取り同居生活が始まります。実はニコラスは心に病を抱え、絶望の淵にいたのでした。そのため望み通り自宅へ引き取っても、ニコラスは学校に通わず、おまけに自傷行為をやめられなかったのです。そんな息子のことを理解できないピーターは、例の「乗り越えろ」という言葉を連発し、それに反発したニコラスと激しくぶつかりあうのでした。
ここで傑作なのは、ピーター自身、子どもの頃、家庭を顧みない横柄な父親(アンソニー・ホプキンス)から、「乗り越えろ」と打ちかつことを強要されていたことが、父親とのやり取りで明かにされることです。
わだかまりを抱え、自分はそうならないと思っていたのに、同様のことを息子に求める自分がいることを思い知らされます。父と息子、互いに愛しているのに気持ちがどうにも伝わりません。そんな八方塞がりの状況を、端正な映像で示されました。
ままならないのが人生ですが、「子育て」はその最たるものでしょうか。ピーターのように大統領選挙の選挙参謀に抜擢されるほどの立派な社会的地位も、その困難さを前に人は無力であることが痛烈に描かれます。「家族映画」は数あれど、子育てに対する敗北感は、あまり語られぬ負の感情。そこに果敢に切り込んだ異色作です。
「ファーザー」ではアンソニー・ホプキンス演じる認知症の父親は、迷宮にいるかのように、自らの思考の中をさまよいました。出口が見えないということでは、本作も同じく迷宮の中にあります。
本作はタブー視されがちなメンタルヘルス不調の問題も堂々提議。コロナ禍で若者の心の健康が危機的状態の今こそ、積極的に光を当てるべきテーマでしょう。
登場人物とともに迷い、惑った後で、やりきれなさをかみ締めました。爽快さとはほど遠い、衝撃的な苦い結末。これも映画の醍醐味なのでしょうか。この結末には、無性に誰かにネタバレして、話しかけたくなりました。
きつかった
自傷・自殺衝動のある鬱病になってしまった息子と、親はどう向き合えばいいのか?というテーマゆえ、けっこうきつい。
ニコラス役のゼン・マクグラスの不安定な少年の演技はよかったものの、鬱の描写が少し昔のイメージで、医学監修が入っているか疑問を抱きました。
精神疾患にも様々な種類があるので、鬱とひとくくりにしてはだめだし、対処法が多岐にわたるんですよね。
離婚して母子家庭ゆえに母親は働きづめで家にいない。
代わりにと預かった男親は、仕事人間でほとんど家にいない。
真面目で優しい人間ほど、自分が悪いんじゃないかと自らを追いつめ、孤独感に苛(さいな)められる。
「生きている状態がすでに最大限頑張っている」という状態だと理解し、寄り添い、そばにいることが重要で、一瞬でも目を離してはいけないし、それが無理なら医師に全面的に任せるしかない。
なのに、これだけは「やっちゃダメ」「言っちゃダメ」ってことがあるんですけど、これをヒュー・ジャックマンが演じる父親が繰り返す。
「できて当たり前」「学校に行っていい人生を歩め」「なぜできない?」「頑張れ」
など追い詰めていく。
父親のきつい言葉は愛情の裏返しではあるのだが、それによってどんどん症状が悪化していく。
それを観客として、なにもできず見てるだけという体験を味わう羽目になるという。
うわーーーって叫んで席を立ちたい衝動を、このクソ親をウルヴァリンが切り裂いてくれるに違いないという妄想で乗り切りましたが、気持ちのいい内容ではなかったな。
家父長制的男性性の悲劇
テーマは明確で、「男らしさ」の世代を超えた呪縛のもたらす悲劇です。
それをジェンダー論的な言葉をまったく出さずに描き切っていました。
主人公とその父、おそらくさらにその父、その父、その父……から続いている「男ならばこうあれ」という男性性の皺寄せが若い息子にのしかかっていくという物語です。
ですから、息子の苦悩を息子自身はどうすることもできませんし、明確に言葉で表現することもできません。それはそうです。彼の内部にあるように見える問題は、実は社会が抱えている問題ですから。
父親も自分がそれに囚われていることに真の意味では気づいていないので(たぶん最後まで)、息子への対応をほとんど全部間違えています。もう、ことごとく、「それやっちゃダメ」ということばかり息子にしています。
それはこの父子関係だけの話ではなく、今でも多くの国の社会が囚われているものです。
結末からすると、監督はそれが変化していくような希望を今は見出せていないのでしょうね。
「愛では救えない」
この場合はまったくその通りでしょう。男性が「男らしさ」から解放されることしかありません。しかし、アンソニー・ホプキンスの演じる主人公の父親のような人がそこに思い至れるか?
これはかなり絶望的でしょう。
長い時間がかかりますが、世代が変わることで改善に向かうことを祈るばかりです。
もう一人の息子が成長する時に間に合うどうか?そうしたことも考えたせる巧みなドラマ作りです。
役者さんがみんな素晴らしい。
なお、ヒュー・ジャックマンの演じる主人公の二人目の妻や子育てへの関わり方の細部をよくみてほしいですね。実はすごく古臭い、つまりヤバい相当に人なのでは……というのがわかると思います。
たとえば「小児科」という語が出ているのにスルーするシーンで私はゾッとしました。
全61件中、21~40件目を表示