TAR ターのレビュー・感想・評価
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性別関係ない世界
ターの圧倒的な実力と魅力は本人の努力の賜物だけど、圧倒的な権力を持つと人はその力を行使したくなるんだろうな。
若者をフックアップしてるつもりでも、体裁を保つ為にあっさり切り捨てる。
ターはレズビアンだから、とかではなく、人間にはジェンダーの境目なんてなくてコミュニティ内のパワーバランスで成り立っている、んだな。
もちろん、個体差があるけど女性=協調型ってわけじゃないよ、と。
てか、そもそもジェンダー論を唱えてる時点でアレだな。
映画館が暑くて大学で教えてるシーン、ちょっと眠くなっちゃった。最後あのシーンが効いてくるから必要だったんだけど、淡々とターの日常を描いているから最初はちと退屈。
でも、退屈で安定した頂点の生活が愛欲によって少しずつ崩壊していき、フックアップしてるつもりで踏み台にされちゃってるラストとか、もう老害ってこういうことなんだな…と美しいケイトブランシェットを見て思う矛盾よ。
これは傑作だった、そして好きだった、
ケイト・ブランシェットがベルリンのオーケストラで女性初の首席指揮者となったリディア・ターを演じた。
『ブラック・スワン』のようなエキセントリックな内容を想像してたが違っていた。静かに積もっていく何か。その噴出はむしろ『ジャンヌ・ディエルマン』の感触に近いか。
オーケストラのリハーサルも、私生活のエピソードも、すべてを失った後のささやかな再生も、そのすべてが好きだった。
出ずっぱりのケイトと過ごす時間が愛おしかった。
彼女のベストと言いきれる作品だがオスカーを逃したのは不運だったなぁ。エブエブの勢いに負けた。
「幅を広げる哲学」
今年69本目。
規格外の指揮者であるケイト・ブランシェットに奇妙な事が起こって行くお話し。昨年3月の「ナイトメア・アリー」が突出して良かったケイト・ブランシェット、冒頭の男性との対談が内容は難しいが映画に引き込まれる仕掛け。若い学生さんとの会話が自分は受け入れがたくても、とりあえず一回触れてみる、自分の幅を広げる哲学が凄い好き。
権力の魔性
週刊文春の映画欄で辛口評者5人中4人が5つ星を付けていたので、気になって観に行ったが、まさかここまで難解な映画だとは思わなかった。ネットのネタバレサイトなどを読み込みようやく理解ができるようになるまで多くの時間を要した。なにしろ不親切な映画なのである。送り付けられてきた本の表紙をターはなぜ破いて捨ててしまったか、ターは足を踏み外して転んだだけで顔にあんな大ケガをするのか、ラストシーンの観客はなぜみんなコスプレをしていたのか、なんの説明もない。また、自殺したクリスタという物語のキーとなる人物はどこに出演していたのか、わからない。観賞後は疑問点ばかりだったが、それを1つ1つ解釈できてくると、実に多層的で奥深い映画ということがわかり、もう一度観てみたいという気持ちになった。
ターはクラシック界では数少ない女性指揮者であり、レズビアンを公表していてパートナーとともに養子縁組の子供を育てている。いわばマイノリティの側に位置している人間であるが、ベルリンフィルの首席指揮者という世界的な権威としてマジョリティの側で権力を行使する立場になっている。結局、マイノリティだろうと、権力の側に立ってしまえば権力に支配されるということがわかる。権力者というのは自分では高尚で倫理的な振る舞いができている人格者だと思い込んでいるが、罪に意識がなく相手を傷つけていることがある。権力の存在に気付かないのは権力者本人なのだ。
こういう権力者の横暴の物語を観ると、同じエンタメの世界で同じ同性愛者ということもあって、日本のジャニーズ事務所性加害問題が想起せずにはいられない。権力の絶頂期にはなにをやっても許されてしまっても、満つれば欠けるのが世の習いであるならば、必ずどこかで(死後であっても)しっぺ返しをくらい、人々に与えた不利益の重い代償を払わなければいけない。しかし、一度でも成功を収めた者は転んでもただでは起きず、後で再生してくることがあるのも世の習いである。
どう観たら良かったのだろう?
完全に観かたを間違えました。
予告編を未見のまま、ポスターに書いてある「狂気」というワードを見て観賞したのですが、言うほど「狂気」さを感じられなくて面白くなかったです。
オーケストラ界の優秀な女性指揮者の転落を描いた話で、最初は「オーケストラの指揮者」はどういう存在か、どのように考えながら指揮を取るか等が興味深いし、その説明を講演会という形で説明していく自然さが良かったと思います。
演じたケイト・ブランシェットも素晴らしかったです。ほぼ一人劇場で長回しで演技していきながらも自然に表現されてました。特に終盤の場面は圧巻です!
ただ、前述した通り「狂気」さを求め過ぎたためかその要素をあまり感じられずに淡々と物語が進んでいくにつれて、次第に退屈に感じていきました。
あと考察が必要な場面も多いですが、いかんせん退屈に感じたためにそこまで引き込まれませんでした。
さすがのケイト・ブランシェット
正直長く感じた。前半部分なにが起きてるのか、もしくはこれから起きるのか全然分からなくて退屈に思えた。
が、後半部分は何とも不気味なある種ホラーのような気味の悪さと追い詰められて狂っていく主人公ターを演じるケイト・ブランシェットの素晴らしさ。
後半は良かったけどちょっと自分には難しかった。
ケイト・ブランシェットは凄まじい存在感があって流石でした。
心が震えた
自宅でのピアノからの…
オーケストラのマラ5!!
心がいろんな感情を持った。
次観たらまた違う感情なのだろう。
もっともっと、もっと
音楽も聴きたくなった。
舞台袖のラッパも気持ちいい。
アコーディオンはもう狂気。
創作活動の苦しみと哀しみ
指揮者というのは音楽の感動を身振り手振りで大げさに表現するだけの人達で、別に指揮者がいなくとも演奏は成り立つのではないか・・・・等の不埒な誤解を中学生のころは思っていましたが、後で大きな誤りであることがわかり、深く頭を垂れた記憶があります。
自分の持つ音のイメージとの小さな違いを見過ごさず、それを自分のイメージに近づけるために取るコミュニケーション手段は、デジタルでシュミレーションされた合成音などではなく、指揮者の口から発せられる音のイメージを表す形容詞と発声の緩急、そして全身の動き。作曲者のイメージから惹起された指揮者のイメージ。そしてそれがが楽団員のイメージと一致した瞬間に、一つの音が創造され、それが全体の大河となって響きだす。その創作の過程はまさに神がかり的で、その神がかり的な創作の瞬間を、同時に神がかり的なケイトブランシェットが演じきっていて、鳥肌が立ちました。
妥協は許されない世界。でも、それ故にその人格には不可避的に、不要なものは切って棄てる、暴君的な攻撃性を帯びることとなります。そしてその攻撃性はやがて、自分の生きる支えとなっているものとの矛盾を抱えるようになり、そしてそれが・・・・という物語。その矛盾が彼女の人格を徐々にむしばんでゆく光景は、一部タスコフスキーやヒッチコックの作品を連想させる演出で息をのみました。
カラヤンにインスパイヤされた脚本のようですが、カラヤンにはこの映画のような結末はなかったようなので、創作でしょう。でもプライベートジェットを利用するところとか愛車(多分ポルシェ)を乗り回すところなど共通点は多いようで、創作活動のもつ一種破壊的な側面の真実と哀しみがよく抽出されているように思いました。
マーラー、エルガーなどの作品の練習風景、バッハを題材とした講義風景は圧巻で、音も素晴らしく、その音楽と物語が渾然一体となって、身体の芯を射貫かれたような印象で、いくつかのシーンでは涙が出てきました。クラシック音楽好きでなくとも楽しめると思いますが、クラシック音楽好きは多分外せない作品と思いました。そしてできることなら是非劇場で。
エンターテイメントとしてブラッシュアップの余地あり
内容やストーリーがダメかというと、そんなことはないのだけれど、2時間40分の長尺にした挙げ句、明快なエンターテイメントにしなかったのは頂けない。かといって、心の深部に入り込んだ芸術作品でもない。アカデミー賞の脚本賞と編集賞の候補になったにしては、構成がお粗末すぎて、「面白くなりそうなんだけど、この部分はカットして、この内容を足して」と演出家などに沢山直されそうな脚本がそのまま映画になってしまっている。
ターと誰か(評論家、仲間の指揮者、師である先輩指揮者)とのツーショットの会話が長すぎ、あの部分をもっと簡潔にして、ターによる過去のパワハラ兼セクハラをもう少し分かりやすくし、転落後の彼女の話を厚くした方が、エンターテイメントとしてもっと楽しめた。
主人公が男性で、権力で女性音楽家を食い物にしてたというありがちな話を、時代に合わせて、主人公が女性で同性愛者に変えただけのストーリーになってしまった。
頂点って、恐ろしい。
頂点に登り詰めたあとの転落をまるでホラーのように恐ろしく描いた映画でした。そしてまるでフルオーケストラのように、様々なエッセンスが重なり合いひとつになったとても見応えのある映画でした。
ケイト・ブランシェットの演技が素晴らしい!カメラワークも音の演出も素晴らしい!傑作です。
ヒリヒリした焦燥感
ただ純粋に音楽に向き合った彼女が、常に追いたてられてる感は、痛々しい。
狂気なんて、1ミリも感じなかった。
天賦の才能は、周りの者がサポートすれば良いだけの事。
たった1人、純粋に彼女を愛してくれた娘とも引き離されて、たどり着いた場所で、彼女の音楽人生はリスタートした。
それはとても輝いて見えたな。
ただひとつ、アコーディオンのシーンは、コントかと思った😅
ノエミ・メルラン不発でした
ケイト・ブランシェトとノエミ・メルランのカラミに期待して観ました。
ノエミ・メルランの映画は「不実な女と官能詩人」から続けて七作目です。
ベルリン交響楽団の主席指揮者になったリディア・ター(ケイト・ブランシェット)。なんだかんだ言っても、女王様。第一バイオリン奏者のシャロン(ニーナ・ホス)とは婚姻関係をもち、養女と3人で暮らしていました。フランチェスカ(ノエミ・メルラン)はリディアの弟子で、マネージャーでしたが、副指揮者候補でもあり、師匠を熱愛(プラトニック?)していたような。突然、新人のチェロ奏者にぞっこんになりるリディア。以前にちょっとつまみ食いしたクラリスという女性奏者の処遇を巡って、フランチェスカと齟齬が生じ、男子学生へのパワハラ動画がSNSに流されるという今時のストーリー。そこへクラリスが自殺したと報道され、両親から訴えられる。クラリスの自殺への関与をマスコミに嗅ぎ付けられる一方、フランチェスカが突然失踪してしまいます。ノエミ・メルランは蛇がうようよ泳ぐ汚い沼の筏の上で横たわっていました。蛇に噛まれて死んだのでしょうか?自殺?よくわかりませんでした。
ニューヨークで出版した自叙伝はスキャンダルのせいでかえって売れたかも。
ケイト・ブランシェットは英語もドイツ語もスラスラですが、ドイツ語と時の字幕が出ない。これは片手落ちじゃないの?
メジャーな交響楽団から干されたリディアはタイだがラオスだかの楽団の指揮者に招かれますが、お客さんたちが、みんなへんなコスチューム。モンスターハンター?
わけがわかりませでした。
うーん😔
もしかしたら、ターっていう題名は
モンスターとハンターのターにかけたのか???
かなりのモンスターペアレントだったし、あっちのほうではかなりのハンターだったようですしね。
とにかくケイト・ブランシェット
結論から先に言うとケイト・ブランシェットの演技につきる作品だと思います。
とても丁寧に作り込まれている作品だとは思いますが、説明が少ないのである程度クラッシックに関する知識がないと、作品の良さが分かり難いものになっています。また、各エピソードが映像ではなく会話の中で語られることが多いため、かなり集中して観ていないと、ストーリーに付いていけなくなるかもしれません。もう少し万人受けするように分かりやすくして欲しかったです。特にラストシーンについては、私はTVゲームの類いを全くやらないので、正直なところどういう意味なのかよく分からなかったです。観賞後に調べてみてようやく分かったのですが、事前に分かっていれば、また違った感想を持てたのではと思うと少し残念です。
ただ、先にも述べましたがケイト・ブランシェットの演技には凄まじいものがあり、それだけでも一見の価値はあると思います。とても演技をしているとは思えないくらいターになりきっていました。何故この演技でアカデミー賞の主演女優賞を取れなかったのか不思議でなりません。
作品の評価としては、分かりにくい点を考慮すると星4つなのですが、ケイト・ブランシェットの演技に敬意を表して星5つとしました。
ケイト・ブランシェットすごい
最初のインタビューシーンからして、長回しと思うが、よくこんなに台本記憶して切れよく語れるなと驚く。魅力的な主人公。途中から怒涛の展開、最後びっくりの終わり方。割と長時間だったと思うがあっという間に終わった。
張りつめた糸
いやぁ~、見応えあったなぁ。ひじょうに完成度の高い作品だと思いました。
内容的に言って、あまり好きなタイプの映画ではないけれど、これは秀作です。文句をつけようにも、そういうところがほとんど見あたらない。
極限まで引っ張られた、硬く冷たい糸。その、いまにも切れそうな透明の糸をたどって我々鑑賞者は物語の中を進んでいく。
その糸は、細かく震え、ときに大きく、激しく振動し、狂気の音色を奏でる(大むかしに観た、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』を想起しました)。
凝ったシナリオ、端正な映像、練りに練られたカメラワーク。そして美しく迫力に満ちた音楽……。
ケイト・ブランシェットの演技については、まさに「圧巻」の一言。
「鑑賞する」というよりは、「体験する」と言ったほうがいいような、濃密な2時間半でした。
今もマーラーの5番の冒頭が頭の中で繰りかえし鳴っています。
追記
僕はクラシック音楽もいちおう聴くけれど、「『リディア・ター』という指揮者は記憶にないなぁ。コロナ禍の説明があるから、つい最近まで生きていた人なのかなぁ」、なんて思っていたら、架空の人物だったんですね。まんまとやられました。
知らぬ間に毒が体を廻っている映画
毒素の強い映画はこの世に沢山あるけど
この「TAR ター」は知らぬ間に
観ている私達に毒が廻る作品。
カリスマ女性指揮者ターの天才的能力を
堪能する物語と思っているといつの間にか体は痺れ
危険を感じる。
しかし!フラグだらけでちゃんと伝えない演出なので
ハマらない人には邪悪で地獄。
ハマる人は毒と共に快楽天昇。
これ、もっとサスペンススリラーが上手い監督が
撮ったらもっと怖いし
ハートフルに撮れなくもないし
トッド・フィールドという
ニュアンスを楽しむ監督の作品なんだなーっていう
楽しみ方をしました。
教えてあげよう族が湧いてるかと思ったらそうでもなかった/字幕が女言葉で?
なるべく事前情報を避けたいのでここも全く見ずに映画館へ。
終了後、皆さんの豊富な知識応酬合戦になってる映画.comを想像しながらるんるんレビューを開いて肩透かし。
「実際のところバッハは……」「フリーボウイングとは……」「このレストランは実在するんだけど……」「なんでアダジェットがヴィスコンティだと笑いが起きるかというと……」「てゆーかマラ5の最初のファンファーレをこうするところがアイディアで……」「ジャクリーヌ・デュ・プレ、出たーーー!」「このプライベートジェットの型式は……」「コッポラが撮ったのはもちろんベトナムなわきゃなくて……」「てか、ここでワーグナーに繋がる、基本メインの登場作曲家が皆ドイツなわけで……」「佐渡裕も英語とドイツ語ちゃんぽんだったかも……」「これはバーンスタインですね」「これはモンハンのコスプレ上映会でなんでヘッドホンかというと……」。
パンフには上記などなどが全部解説されてるんでしょうか。
あと、とりあえずベルリンフィル・コンマスの樫本大進の感想を聞きいてみたい。
音のいい映画館を選ぶほどオケシーンが多いわけではない。いきなり爆音になるシーンも演出的コケ威で指揮台に立っていてもあんな音量ではないでしょう(多分ボリバルを除く)。
ターの話し言葉の字幕がいわゆる女言葉なのは映画会社や翻訳者で葛藤はなかったんだろうか。
ペトラのパパですよ〜とまで言ってるんだが。もし日本特有の女言葉に訳されてると製作陣が知ったらどんな反応になるんだろう、と思った次第。トランスジェンダーじゃないにしても、せっかくあんな大熱演してるんだからそういうところはもう少し原語への歩み寄りがあってもいいかな。
苦しくなる
裁判、恋人との関係、アシスタントの不在、副指揮者との断絶、スキャンダルなどいろいろな負を背負ったまま最後の演奏に挑むと思ったら転んでメンバーを殴って終わる。あれだけ練習したのにそれだけか。鬼気迫る、それこそ火が出るようなとんでもない演奏が見れると思ってわくわくしていたら肩透かしだ。そんなつらい目にあっても人生は続くし、しかし身から出た錆でもある。
ターが実家に戻ってVHSで見た指揮者の言葉が心にしみる。
テーマ性や表現はすごいのだけど、全体的にお高い感じは全く好みではない。しかし、お高い世界だからこその高みが存在する。
現実世界でも過去の女性に対する行為でピカソの絵が値下がりしているという。創作や芸術や表現が、決して民主主義でも正義でもないことは当然なのだけど、それを是としない人々がいる。SNSのロボットと言われた人々が是とする、コンプライアンスでOKな表現や作品と、魂の自由を信じる人々が求める創作に、この世界はぱっくり別れるのではないだろうか。もうそうした動きは始まっているようだ。
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