サントメール ある被告

劇場公開日:

サントメール ある被告

解説

我が子を殺した罪に問われた女性の裁判の行方を実話を基に描き、2022年・第79回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)と新人監督賞を受賞した法廷劇。

フランス北部の町サントメール。女性作家ラマは、生後15カ月の娘を海辺に置き去りにして死亡させた容疑で逮捕された若い女性ロランスの裁判を傍聴する。セネガルからフランスに留学し、完璧なフランス語を話すロランス。被告本人や娘の父親である男性が証言台に立つが、真実は一体どこにあるのかわからない。やがてラマは、偶然にも被告ロランスの母親と知り合う。

「私たち」などのドキュメンタリー作品で国際的に高く評価されてきたセネガル系フランス人監督アリス・ディオップがメガホンをとり、作家マリー・ンディアイが脚本に参加。「燃ゆる女の肖像」のクレール・マトンが撮影を手がけた。

2022年製作/123分/G/フランス
原題または英題:Saint Omer
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2023年7月14日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第79回 ベネチア国際映画祭(2022年)

受賞

銀獅子賞(審査員グランプリ) アリス・ディオップ

出品

コンペティション部門 アリス・ディオップ
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(C)SRAB FILMS - ARTE FRANCE CINEMA - 2022

映画レビュー

4.0移民として、母として、娘として。複層的な視点によって見えてくるもの

2023年7月20日
PCから投稿

とても複層的な視点と構造を持つ作品だ。ギリシア悲劇「メディア」を思わせる一つの衝撃的な事件についての「法廷劇」でありながら、そこにナイフを深く入れるやミルフィーユのように、社会や文化や被告の女性が歩んできた人生の断面が剥き出しとなっていく。これを具体的な供述の回想シーンなどを用いながら紡ぐという方法もあっただろう。しかし作り手のアリス・ディオップ監督はそういった安易さに陥ることなく、まずは裁判での長いやりとりや言葉を我々に突きつけ、主人公で作家のラマと同じ視点でじっくり追体験させる。やがて浮かび上がってくる被告の半生、フランスでの生活、追い詰められていく精神状態・・・。それと似た人物をラマはよく知っている。それは移民としてこの国にやってきた女性たちであり、母たちであり、なおかつ娘たちだ。これまでスポットの当たることのなかった人々の慟哭と、母娘の理解と寄り添いの物語が、静かに胸を締め付ける。

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牛津厚信

3.5実話をもとにしているらしいのだが

2024年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

最後のセリフは創作なんだろうか、実際の答弁だったんだろうか。

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mikyo

4.0聖なるフェミニズム映画

2024年2月26日
Androidアプリから投稿

この映画のタイトルはなぜ“サントメール”というフランス北部カレーにある地方都市の名前がつけられているのだろう。子殺しで起訴されたセネガル人女性を裁く裁判所がある場所だから、というのはいくらなんでも短絡的すぎるだろう。カレーには確かアフリカ各国からフランスに逃れてきた難民のキャンプがあったはずで、ここサントメールにも移民たちのコミュニティが多数存在しているらしいのだ。勿論“聖なる母親”という意味も踏まえた上でのタイトルだろう。

同じく“子殺し”を題材にしたギリシャ神話映画パゾリーニの『王女メディア』を、傍聴人の黒人女性ラマが鑑賞するシーンがあったのを覚えていらっしゃるだろうか。夫への復讐を遂げた後自らの息子たちをメディア(マリア・カラス)がその手にかけるクライマックスで、なぜか日本の伝統音楽(能?)が使われている。“子殺し”というテーマ性よりも、その異質感に着目すべき演出といえるのかもしれない。『24時間の情事』のエマニュエル・リヴァも異質なもの(ナチスドイツ兵士)を受け入れたせいで剃髪されたのだ。

ドキュメンタリー界ではそれなりに名前が通っているアリス・ディォップもまたセネガル系フランス人女性であり、海に赤ちゃんを置き去りにしたロランスや、小説のネタにするためにその裁判を傍聴する作家ラマと同じような立場にいるインテリ女性。実際に起きた事件の裁判記録を元に映画化しているそうで、西洋人の特に男性検察官には到底理解しえない、アフリカ特有の呪術的世界観を浮き彫りにしていくのである。

なぜ置き去りにしたのかという尋問に対し、「叔母に呪いをかけられた」と答えるロランス。そんなロランスを西洋科学の物差しで分析しようとしても土台無理な話なのである。ロランスと同じくフランス男の子供を身籠っていたラマはその様子を傍聴しながら、セネガルからフランスに夢を持って渡ってきたものの、西洋文化になじめず孤立し精神を病んでいった母親とロランスを重ねていくのだ。「お母さんのようにはなりたくない」裁判所でラマと目があったロランスは意味深な微笑みを一瞬浮かべるのである。

そして人権派白人女性弁護士の最終弁論は、本作の全てを物語っているといえよう。「女性はすべて子供の細胞を体内に宿すキメラなのだ」と、カメラ目線でとうとうと語る女流弁護士さんの演説は迫力満点。こんな詩的な弁論が許されるのもフランスというお国柄なのだろうか。つまり、国内に移民を受け入れたフランスを異質同体のキメラに例えているのである。移民を差別することは母親や娘の存在を否定すること、すなわちフランスという国自体の否定に他ならない、とディオップは言いたかったのではないだろうか。

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かなり悪いオヤジ

3.0斬新な演出で重みのある法廷劇

2023年9月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

幼い娘を殺害した罪に問われた女性の裁判の行方を実話に基づき描いた法廷劇。実際の記録をセリフにしている斬新な演出とキャスト陣の重みのある演技が素晴らしい。
弁護士の最終弁論でキメラ(細胞の無限連鎖)について語っている点も非常に興味深かった。

2023-146

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隣組

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