ザリガニの鳴くところのレビュー・感想・評価
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カイアという人物
見て良かったと思える作品。
一人の人間の強さと美しさと健気さ、その他たくさんの要素が交錯しているようにいろんなものが感じられる。
この作品のプロットは秀逸で、冒頭のチェイスの死体発見という事件そのものが、この作品のすべての要素とつながっている。
この事件があった所為で、主人公カイアが殺人容疑で逮捕され、弁護士の質問によって彼女の半生が語られる。
彼女の置かれた環境と生き方
否応なしではあるが、自然と共に生きる生き方を探すこともできるかもしれないと思った。
その反面、暴力と支配というものがどんなものなのかを父親によって知ることができる。
最初に家を出たのが母だったことは、幼いカイアにとっても人生最大の辛い出来事だったように思う。
その母の代わりになったのがこの湿地帯という自然だったのかもしれない。
時折届いた母からの手紙は、カイアの心のよりどころとなっていた。
カイアは母の家出を父の所為だとわかっており、巣立ちの逆のようなものと捉えていたのかもしれない。
幼いカイアの心の傷は間違いなくあっただろう。
しかし生き抜いていくにつれ、その感情に変化が現れていったのも事実だろう。
カイアは家出した母を通して人の心と変化いうものを感じていたように思う。
そしてたった一人になったとしても、やはり出会いというものはある。
テイト
彼との出会いはカイアにとっての喜びであり、生きる力でもあった。
彼からプロポーズされた時「もうしている。私たちはガンのつがいと同じ」と答えているが、その例えの真意は一般的な人間とはやはり少し違っているように思った。
二人は最後まで一緒だった。
にもかかわらず、自身の寿命を感じたカイアは最後にボートに乗って湿地帯を進む。
そこに感じたのはやはり母だった。
このシーンは感動的でありつつ多彩な思いが溢れてくる。
カイアはこの湿地帯で生まれ、様々な出来事があったにもかからわず最後までこの場所を出ることはなかった。
母に対する想いは複雑だったが、カイアは母の想いと家出を受け入れたはずだ。
カイアは自分自身の人生を生き抜くことを誓っていたように思う。
それが湿地帯を離れない理由でもあるが、同時に暴力と支配という彼女にとって決して許すことのできないものがこの人間社会に存在していることで、湿地帯から出たくない理由にもなっていたのだろう。
カイアが妊娠しなかった理由は、この狭間に生きる厳しさを自分自身で終了させたかったからだったと思った。
白人世界にあるカースト制
その最下層にいるホワイトトレッシュ カイア
ムール貝を卸していた雑貨屋の優しい人たちがいる一方、その外は差別社会の塊だった。
すぐに学校に行かなくなっても、カイアには湿地帯という母なる大地があった。
外から見ればカイアは隠れるように生きている。
しかし、実際彼女は自然から様々なことを学びながら生きていた。
それそのものはカイアにとっての最善でしかなく、選択の余地などない。
カイアにとって自分の子供を外の世界で生活させるビジョンなどなく、逆に湿地帯での生活が子供にとっての豊かさであるとは言い切れなかったのだろう。
カイアにとって、湿地帯と一体となって母を感じることが生きる精一杯だったのだろう。
そこに寄り添ってくれた夫のテイトがいれば、カイアにとって何一つ足りないものなどない。
子どもがいると、心配にしかならない。返って自分の罪深さになるのだえろう。
さて、
この物語を見ている誰もがカイアの幸せを願うだろう。
ボートの上で彼女が息を引き取るシーンに涙が隠せなくなる。
私たちはカイアの外の人間だ。
彼女の過去や生き方を見て、そこに共感する。
しかし作家は、「あなた方は物事の表面しか見ていない」と宣言したのだろう。
カイアという人物
彼女の想いの強さ
そこに隠されたこの社会への反感
チェイスに対して言った言葉「父のような男たち」
嘘 裏切り 暴力と支配 お金
カイアにとってこの自然こそが法則であって、法律やこの社会の善悪など一切合切意に介さないのだろう。
「そんなこと」よりもっと大きいことが、彼女自身の「想い」
お金で買ったペンダントではなく、心を動かされた貝殻で作ったペンダント
そこにあった「想い」
その想いが踏みつぶされたことこそ、カイアにとって重要なことだった。
このペンダントはチェイスへのプレゼントだったが、今はもうそのペンダントをチェイスが持っていてはならない。
テイトにさえ言わなかったこと。
おそらくいう必要もなかったこと。
それは過去であり今ではないし、カイアにとってすでに解決したこと。
テイトは、カイアのその核心に寄り添いながらも最後まで理解できなかったことでもある。
おそらくそれをカイアはずっと前から知っていた。
このことは、子供が生まれれば確実に考え方の違いとなって表れる。
生き方というのは、死に方でもあるのだろうか?
彼女の死に方は、すべてを包括していながらも、自分自身の枠を超えないようにしていたようでもある。
折り合いをつける。
これこそカイアが自然体でいられた秘訣だったのかもしれない。
「ザリガニが鳴くところ」
このタイトル
テイトがカイアに言った言葉
彼女の住むべき場所
それは、彼女にしか聞こえない言葉や自然現象だろうか?
彼女にしかわからないことがあることを、テイトが理解していたとも取れる。
そしてそれをカイアが感じ取ったことで、つがいになることを予感したのだろうか?
その後いったん別れが訪れるが、カイアには彼のその言葉がずっと頭の隅にあったのだろう。
紆余曲折してその言葉がカイアにとって真実だったことを感じた。
彼女にしかわからないこと
それこそ、チェイスの死体の謎で、カイアの心の核心の謎だったのかもしれない。
個人的には近年最高。
久々にいい感じ
生存本能
タイトルの「鳴く」は「sing」なんだ。普通「ザリガニ」は「crawfish」だが、この作品では「crawdad」、「父親」の「dad」と掛けているのだろうか。ちなみにエビカニの「爪」は「claw」、てっきり爪があるから「クローフィッシュ」なのかと思ってた。「crawl」(水泳の「クロール」)には「這う」という意味もあるので、そっちか。
何の予備知識も無く見始めた。タイトルも地味で劇場上映されていたのも知らなかった。オープニングからハリウッド映画っぽさがなく、「赤毛のアン」のような映像で文芸的な香りを感じた。差別と偏見、家庭内暴力に曝される主人公、アメリカ版「破戒」か。
結末は予想通り、ただ、事件の詳細な状況説明がされないのでモヤモヤが残ったまま。ここで他の人の感想を読んで、「あ、父親」と理解した時のカタルシス。
一見、差別や偏見に批判的な描き方に見える、普通の観客はそのように善意の視点で観がちだが、実のところ町の人々の「湿地の娘」に対するスタンスは正しかったということになる。湿地の娘が暴力から身を守るためにそうしたように、町の人々も自らを守るために忌避していたのだ。
湿地で孤独に生きた女性の生涯
暴力に耐えきれず出て行った母親、徐々に家を出る兄弟たち。残ったカイアを父親まで置いて出て行ってしまう。もうこれだけで酷すぎて、一つ物語が出来そうだが、カイアの物語はまだ始まりにすぎない。
たった6歳で1人になった少女。普通ならここで行政の手が差し伸べられそうだが、そうならない。時代的なものか、カイア自身も拒んだのだろうが、1人で生きると決めたカイア、貝を摂り、売ってお金を得る。小売店の老夫婦が手助けをしてくれたのが微かな救い。
それにしても、よく1人で生きていけたな。物語とはいえ、胸が苦しくなる。年頃になって出会ったテイト、恋に落ち、別れが来てもいつかまた帰ってくると信じて待つ。でも約束した時にケイトは帰ってこなかった。ケイトに罪はない、そりゃあ悩むよね。でもケイトのおかげで読み書きもできるようになって、本を出す手助けもしてくれて、よかったとは思う。
次に出会ったチェイスが、結局死んで殺人の容疑がかけられるが、チェイスは暴力的だし、カイアのことはただの浮気相手としか見ていない、腹立たしい奴。
裁判が始まり、無罪になったが、では死の真相は?はっきりしないまま、一気に物語は進んで、カイアとテイトが共に暮らし、年老いてカイアが死んで、、、、この流れが早すぎて、もう少し時間をかけて語られてもいいのに。
1人になったテイトが片付けていると、一冊の本の中から見つかるあるもの。本当に最後の最後で真実がわかるのが、驚愕、でもそこがとても良かった。
自然が自由にしてくれる
殺人容疑で捕まってしまった主人公の人生を追ってみると、父親のDVが引き金で湿地に一人きりでサバイバルしていた話。
法廷バトルなのかな?と思いきや、家庭内暴力の話で、かと思えば純愛ストーリーで、その背景には何にも変えがたい自然があり、でもやっぱり法廷に場面は移りーーと四本ぐらいの軸がある映画。
予告ではサスペンス要素を推されていたけど、そこ重視で観ない方がいいかも。
正直なところ、別にそんなにどんでん返しでもない。事件解決のカタルシスは感じられなかった。
そっちよりも圧倒的な自然に魅了された。白鳥(?)の大群と遭遇するシーンは絵本みたいだった。自分だけの海があるとか羨ましい。
めっちゃ一部男性クズやし、めっちゃエッチするし、めっちゃ雑貨屋の夫妻優しい。
湿地の景色とストーリーがとにかく美しい
サスペンスでもあり、ラブストーリーでもあるんですが、個人的には不幸であるが純粋で賢い女性が自分の未来を切り開くといった映画だと思いました。
父親のDVによって一家がバラバラになり、その中でもお母さんがいなくなった事が主人公の心に深いダメージを与える。
時が経ち、主人公にも恋人ができる、その相手は父親と同じように暴力的な男だった。
孤独に生きることと、恐怖に怯えて生きることは違う。
母は逃げるという選択しかできなかったが、強い女性である主人公はもう一つの選択肢をとった。
裁判中の回想シーンで、チェイスと殺したのはテイトだろうと思わせといて、最後の最後で「ああ、やっぱりそうだったのか。」と納得させてくれる。
後味が最高に良い映画。
魅惑の映画だが、完成度は高くなく
マイノリティを尊重することの大切さ
<映画のことば>
私じゃない、嫌ったのは彼らよ。
私を嘲笑い、仲間外れにし、悪意をもって蔑んだ。
そんな彼らに懇願しろと?
私は何もしない。勝手に裁けばいい。
でも、彼らが裁くのは私じゃない。
彼ら自身よ。
☆ ☆ ☆
それが彼女にとっては至極当然のことであったとしても、人が多く住む市街を離れて、独り湿地で暮らしているということだけで、外の世界で生活している人からは好奇の目で見られ、「変わり者」と決めつけられ、時に軽蔑さえされるー。
地域社会(文明社会)からは距離を置いて静かに暮らしていた少女・カイアが、しかし、自分を包み込む湿地の自然をこよなく愛しながら、その中で生き抜く術と価値観とを身につけた、その生命力のたくましさーそれが本作のエッセンスであることは、疑いのないところだろうと思います。
食料としてのトウモロコシ粉は言うまでもなく、湿地であるが故に船を使わざるを得ない以上、ガソリンや点火プラグなどか必要となり、それ故に、貝を雑貨店に売ることで、現実の文明社会との関わりを否定はできないのですけれども。
そして、ある事件を契機として、彼女がマジョリテイの価値観で裁かれようとする事態に陥ってしまうー。
そういう不条理には、本当に心に痛い一本でした。評論子には。
佳作であったと思います。
(追記)
この町で生まれてから、片田舎のこの町でずっと暮らしてきたと言いますけれども。
しかし、この弁護士は、只者でない。
否、むしろこの町にずっと根づいて来たからこそ、この弁護ができたのか。
いわゆる「マチ弁」(企業の顧問を中心に経済事件などを専門に手がけるのではなく、地域に密着して、地元民の法律問題をひろく取り扱う弁護士)の強みというのは、こういうところにあるんだろうなぁ…とも思いました。
その点も、本作は、とてもとても興味深い一本になりました。評論子には。
<映画のことば>
自然に善悪はない。ただ、生きるための知恵があるだけ。
<映画のことば>
危ないときは、ザリガニの鳴くところまで逃げるんだ。
美しい景色、生き物としての客観性と人の知性、言葉はどこか詩的
美しすぎる自然の描写
🇺🇸の病巣。🦞が鳴く鳥になりたいと。。。
内容は、舞台はアメリカはカロライナ。1969年に起きたチェイス殺人事件の深層に迫る被疑者・主人公カイア(湿地の娘)の話。果たして彼女はチョイスを殺害したのか?殺害していないのか?!印象的な台詞は『自然に善悪はないのかも、生きる為の知恵よ』自分の絵画が認められる様になって会食での一言。食事を摂りながらの話はかなりキツくて笑いました。そして『彼等が裁くのは私ぢゃない。彼等自身よ!』との叫びは上手いミスリードだと感じました。この問題提起の内容のすり替えは、BLM等過去多数の例あるアメリカの民主正義のなせる技だと感じます。大多数の人が深く思いを寄せる所に切り込む問題提起は面白くも感じました。印象的な場面は『そして父も去った』簡単にサラッと流されましたが、あの土地に固執し続ける原因は父親も排除したのかも?!何て考えてしまう怖さがあります。戦争体験で性格も人格も変わってしまった父親の表現が伝わり戦争後遺症の悲惨さと戦争を逃れた内地に潜む人のバイアスも分かりやすく描かれていた所が面白かったですし、対照的にヤンキーチェイスの様なベトナム戦争時代に兵役拒否した若者の心模様が垣間見れて面白いのです。印象的な映像は、アバンタイトルのアオサギが湿地〜浜辺〜沼地まで全景を説明する様に見せてくれる自然の風景が美しく驚きました。最後まで見ると鳥になって自由になりたかった主人公・ザリガニの魂の泣き声が聞こえて来そうで文学的で感傷深い正にカタルシスの解放。『湿地の奥にあるのが本当の沼・ザリガニの棲家』サルオガセモドキの様な着生植物も朝夕の陽光も全てそれだけで素晴らしく、大自然それだけで楽しめました。何よりもザリガニ🦞は鳴かないのですが、硬い殻に覆われたザリガニが鳴く様に人造国家アメリカ🇺🇸の声なき声を代弁するような攻め具合が叙情的に表現されて良かったです。内容が内容だけに子供には見せづらいのが難点ですが非常に実験的で面白い作品だと思います。自分は4回程観ましたが何回見ても面白い作品だと感じます。また原作も読んだみたいと思わせる映画です。
ラストの描き方が残念
真実に驚きは無し
目に優しい映像は好きでした
殺人容疑者は湿地の女。裁判で明らかにされる彼女のすさまじい過去。 ...
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